2018.12.06

名パティシエ・JAぎふ・ヤンマーがコラボ!ライスジュレ使用「お米でできたフィナンシェ」誕生秘話

お米と水だけが原料の無添加グルテンフリー新素材「ライスジュレ」。ヤンマーは、そのライスジュレと岐阜県産ハツシモ の米粉を使った、しっとり・もっちり食感の「お米でできたフィナンシェ」を、「なめらかプリン生みの親」として知られる名パティシエ所浩史氏と一緒に創りました。

今回Y MEDIA編集部は、フィナンシェの開発に携わったヤンマーアグリイノベーション株式会社の井口有紗さんと共に岐阜のスイーツ店「Plesic(プルシック)」へ向かい、オーナーシェフの所浩史氏へインタビュー。さらに、3社がコラボするきっかけとなった、JAぎふ改革推進室の春日井真司氏にもお話を伺いました。

※以下内容は取材当時のものであり、原材料やパッケージ、プロジェクト体制など一部変更しております。

株式会社 菓子道 代表取締役 クレーム カラメリエ
岐阜の小さなお菓子屋さん「プルシック」オーナーシェフ

所 浩史(ところ ひろし)さん

「パステルなめらかプリン」生みの親として知られ、各種メディアへの出演や企業のオリジナルスイーツ開発にも携わる中、2010年、念願であった自らがオーナーシェフを務める小さなお菓子屋さん「プルシック」を岐阜市琴塚にオープン。「お菓子づくりは、笑顔づくり!」をモットーに、今までにない新境地のお菓子屋さんに挑戦中。

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

素材にこだわり、シンプルでごまかしの効かない美味しさを提供する「所スイーツ」

JR岐阜駅から車で15分ほどの、閑静な住宅街の中にあるプルシック。「Simple&Basic」をお菓子づくりのテーマに掲げる所シェフは、いつまでもそのテーマを忘れないようにと、自らがオーナーシェフを務める一軒家のお店には、SimpleのpleとBasicのsicで作った造語「Plesic(プルシック)」と名付けます。デコレーションでごまかさないシンプルな美味しさを求め、取材の行われた平日午後にも、ひっきりなしにお客さまが訪ねて来られます。

(左)「なめらかプリン」生みの親である所シェフの代名詞でもあり、プルシックの一番人気「究極のなめらかプリン」。プリンでは珍しい完全無添加。
(右)店内には、所シェフが素材と製法にこだわり抜いたお菓子のみが並べられています。

誰もが味を知るフィナンシェでライスジュレの良さを伝え、新しい美味しさを創りたい!

農業を「食農産業」に発展させ、新しい農業の可能性を追求するヤンマーアグリイノベーション株式会社で、ライスジュレを使った今までにない商品の開発や販路拡大に取り組む井口さんたちメンバー。今までにない“グルテンフリーだからこそ美味しいスイーツ”を世に出したいという想いを胸に、オリジナルスイーツの開発で定評のある所シェフへ「一緒にグルテンフリーだからこそ美味しい焼き菓子を開発してほしい」と相談します。

所シェフ:製菓材料において固める素材はゼラチンや寒天など粉末が多く、ゲル状のものはあまりありません。よって、初めてライスジュレを見た時は正直、扱い方がわからず戸惑いました。ただ、色々試すうちに、ライスジュレに水分を抱え込む性質(保水性)や、油を加えると乳化剤のような働きをすることがわかったのです。

そこで、米粉スイーツの「時間が経つと硬くなる」課題をライスジュレで解決し、しっとり・もっちり状態が保てる焼き菓子にしようと決めました。また、誰もが食べたことのあるフィナンシェにすることで、口に入れた瞬間に「今まで自分が食べてきたフィナンシェや米粉スイーツと違う!」と気づいてもらえることを目指したのです。

所シェフの新たな自信作!「お米でできたフィナンシェ」の制作工程を一部見せていただきました

湯せんで柔らかくしたライスジュレに熱したバターを加えます。これは、油分を抱え込むライスジュレの性質を活かし、バターのコクと旨みをしっかり閉じ込めさせるため。口に入れた瞬間、上質なバターの風味が口の中いっぱいに広がります。

米粉やライスジュレのような米素材には、小麦粉のような風味がないため、グルテンフリーになると物足りなさを感じられる方もいらっしゃいます。しかし、今回のフィナンシェはそこを強みとしました。素材の風味を邪魔せず引き立てるライスジュレの特性を活かして、フィナンシェの中にバターやバニラなどの風味を閉じ込めて、濃厚な甘さとコクのある、満足感のある味にすることができました。

また、通常のフィナンシェよりあえて少し多めに生地を注ぐことで、中はしっとりもっちりしているのにフチはしっかりと焼きあがり、ライスジュレと米粉の美味しさを存分に楽しんでいただけます。

あらゆる素材を知り尽くした名パティシエが期待する“ライスジュレの可能性”

世界中を旅し、マダガスカルで見つけた極上のバニラビーンズをわざわざ仕入れるなど、素材への強いこだわりを持つ所シェフ。自分自身の五感で選び抜いたものだけを使い、美味しさと鮮度にとことんこだわったオリジナルスイーツを生み出し続けています。そんな、あらゆる食材を知り尽くした所シェフが、レシピ開発の中で気づいたライスジュレの可能性について尋ねました。

所シェフ:試作を繰り返すうち、ライスジュレの保水性には日持ち効果があることがわかりました※。 さらに、この保水性を活かせば、長年実現できずにいた夢の「冷凍保存できるプリン」が作れるのではと考えています。また、製菓材料には元々安定剤などが入ってしまっているので、完全無添加は難しいとされています。ですが、(ライスジュレの時間が経っても物性を保持できる特長を活かして)ベーキングパウダーを使わない完全無添加のロールケーキやシフォンケーキが作れるかもしれませんね。
※「お米でできたフィナンシェ」は、原材料添加物不使用でも常温で製造後100日間、美味しく召しあがっていただけます。

お米由来のライスジュレを使うことで、洋菓子でも日本を再認識できる

ライスジュレを世に広めたいと日々活動する、ヤンマーアグリイノベーションの井口さんたちメンバー。グルテンフリーやモチモチの食感、そして添加物を使わなくてもでも日持ちするなど、あれもこれもできてしまうライスジュレは「人へおすすめするときに要点がぼやけてしまう」という悩みがありました。そこで、所シェフの感じた「ライスジュレの強み」を教えて欲しいと相談します。

所シェフ:やはり、お米を使うことで「日本を再認識できる」ことではないでしょうか。日本はずっとお米を食べてきた国なので、私たちの身体にも米粉スイーツは合っているのかもしれません。ただ、米粉で作られた無添加パンやスイーツなどはどうしてもパサパサするなどの課題がありました。それが、ライスジュレを使えば美味しく作れるようになるのです。また、JAぎふ提供のハツシモの米粉を使うことで、初めて地元にまつわるスイーツ開発に携われました。今後は栗や柿などの地元食材も使って、もっと岐阜らしいスイーツを世に出せればいいですね。

ライスジュレは農業関係者・消費者・社会にとって「三方よし」の新食材

今回の「お米でできたフィナンシェ」には、JAぎふ提供となるハツシモの米粉を使用しています。所シェフ、JAぎふ、そしてヤンマーの3社がコラボすることになったきっかけについて、JAぎふ改革推進室の春日井真司さんにもお話を伺いました。

―どのような経緯でライスジュレを知ったのですか?

春日井さん:テレビ東京系「ガイアの夜明け(2018/6/19放送)」を見て、その存在を知りました。中でも、番組内でヤンマーアグリイノベーションの橋本代表が語る「日本人の米離れが深刻化し、農家も激減するなか、(米の需要拡大に貢献することで)農家のみなさまに儲けていただき、かつ、ヤンマーの本業である農業機械も売れる。さらにアレルギーにも対応した商品の開発という三方よし※の考えで、新しいことに取り組む」という姿勢や考えに感銘をうけ、すぐに問合せをしたのです。
※三方よし:ヤンマーグループ創業者・山岡孫吉翁の故郷、滋賀県の近江商人の経営哲学のひとつとして知られる「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の考え方。

―ライスジュレの存在を知り、様々な活用方法が思いついたそうですね。

春日井さん:米の需要量が年々減少する中、JAぎふでは10年ほど前から「端米の付加価値化」と「米の需要拡大」のため、米粉を使用したパンや麺を作ってきました。
パンについては、焼き立ては「もちもちで美味しい」と評判でしたが、時間が経つと硬くなってしまうという課題がありました。そのような中でライスジュレと出会い、職員(パン工房)に紹介し、現在米粉パンをリニューアルしているところです。今後は、アレルギーのある方にも安心して食べていただけるようなパンができるよう考えております。 さらに、ライスジュレを地域内の一般消費者やさまざまな飲食店に普及させることで、米の需要拡大へつなげることができないかとワクワクしました。

― ライスジュレに対して期待していることをお聞かせください。

春日井さん:「お米でできたフィナンシェ」は、今までに食べたことのないような食感。しっとりとして潤いがあり、とても美味しくいただきました。この商品をきっかけとして、米の普及とともに完全グルテンフリーの商品がどんどん広まり、アレルギーを持つ方にも食べていただけるようになる事を期待しています。また、ライスジュレのレシピにもさらなるレパートリーが増え、一般家庭にも普及すると嬉しいですね。

「お米でできたフィナンシェ」は、1箱9個入り3,240円(税込)。毎週土・日曜に一般開放されているヤンマー本社の社員食堂「プレミアムマルシェオーサカ」併設の「プレマルショップ」をはじめ、JAぎふの産直施設「おんさい広場」や岐阜県内のホテルで販売。東海エリアを中心に順次、全国へと拡大する予定 です。

ヤンマーでは、今後もライスジュレを活用したレシピを開発し、お客様に届けていくことで、ライスジュレの普及に伴う米の需要拡大、そして農業の活性化に繋げたいと考えています。これからもライスジュレの挑戦は続きますので、ぜひともみなさまご期待ください。