2020.03.30

エンジンの高い技術力を養うヤンマーテクニカルトレーニングスクールとは?

ヤンマーが生産する大型舶用エンジンは、コンテナ船、バルクキャリア、タンカーの推進エンジンおよび補機エンジンとして使用され海上輸送において重要な役割を果たしています。エンジンのライフサイクルは長く、適切なメンテナンスを行えば数十年間稼働することができます。

大型舶用エンジンの生産拠点であるヤンマー尼崎工場(兵庫県)では、エンジンメンテナンスを行うエンジニアを育成するテクニカルトレーニングスクール(TTスクール)を運営し、海上輸送における船の安全性や効率性の確保をサポートしています。今回は、TTスクールの研修風景と海外からの研修参加者の声を紹介します。

ヤンマーテクニカルトレーニングスクール

TTスクールでは、お客様がヤンマーの製品を安全かつ効率的に稼働できるよう初心者から経験豊富なエンジニアまで世界中の国々から研修参加者を受け入れ、ヤンマーエンジンを継続して稼動できるよう支援しています。

TTスクールは約40年前に社内のエンジニアを育成するために設立され、20年ほど前から技術トレーニングを希望する、海運会社やヤンマー製品ユーザーの方に向けた研修も開始しました。現在、世界5つの拠点に広がっており、尼崎校、塚口校、フィリピン クラーク校、中国 大連校、インド ムンバイ校があり、研修生は年間約800名に上ります。その中のTTスクール尼崎校では、研修生の3割は北米・南米・ヨーロッパなどの海外からの参加者です。

(左)大型舶用エンジンの生産拠点であり、テクニカルトレーニングスクールの本拠地でもある、ヤンマー尼崎工場
(右)TTスクール座学の様子

TTスクールの主な目的はお客様がヤンマーエンジンを維持し、稼働し続けるのをサポートすることです。その目的達成ためにはアフターサービスが不可欠であると考え、エンジンの販売に役立てるだけでなくエンジンライフサイクル全体の価値を高めています。

テクニカルトレーニングセンター センター長 原子司さん

原子氏:「最近では、エンジンのライフサイクルは燃料の質も大きく影響すると考えられています。よい燃料を使っているディーゼルエンジンにはめったに問題が起こりません。低品質油が使われていると、整備メンテナンス間隔が短く、またエンジンの寿命も短くなります。海外から50年以上前のエンジンの部品の注文がいまだに入りますが、稼動状態や使用している燃料によってエンジンの状態は大きく変わります。」

修理よりも予防的なメンテナンス

船の故障は所有者の損失に繋がるため、早急に修理することで収益のロスを減らすことができます。適切に整備し、故障を最小限に抑えることが研修の焦点です。5日間に渡る研修授業と重要な実地体験で、研修生は工場見学やヤンマーエンジンの説明を受け、エンジン本体と取付機器の分解と組み立てに取り組みます。迅速な整備に必要なすべての技術知識を得ることにより、ダウンタイムを最小限に抑え、エンジンを24時間年中無休で稼働させることを可能にします。

研修生の1人であるオーディン・ジャール・ソルハイムさんは、オスロの北西476キロに位置するノルウェーのフロロという小さな町で育ちました。かつて盛んだったニシン漁業から現在は石油産業と造船業がフロロにとって重要な収入源です。

ソルハイムさん:「私がヤンマーエンジンを知ったのは、子供のころでした。フロロの漁師がノルウェーの海岸で小さなボートにヤンマーのエンジンを搭載していて、その性能にとても満足していました。非常に信頼性が高いと評判でした。」

ソルハイムさんは、ノルウェーの会社Anlegg og Marine Service ASでマリンエンジニアとして働き、世界中であらゆる種類のエンジン整備に取り組んでいます。

ソルハイムさん:「研修開始から20分後には、シリンダーを分解していました。作業に必要な物すべてが手の届くところにあり、とても簡単で信じられませんでした。」

(6EY18トレーニングエンジンを指しながら)「シリンダーヘッドはこのへんにあり開けやすいし、とてもわかりやすい。作業が非常に簡単です。ここではオイル交換、整備、検査、およびオーバーホールに関する工場の指示に従うことがいかに重要かを教えてくれます。これに倣えばエンジンを何年も使えることに間違いないです。」

取材時には、ロシア南部の企業であるRPA ONTECHCENTER Ltd.から2名、海洋サービス会社Ru Seaから1名、ソルハイムさんもあわせて4名で研修に参加していました。 授業は英語で行われ、大きな音が響く作業場では、講師は大きな声で指示をしながら拡大した車輪とホワイトボードを使い説明を行います。

ウラジミール・ドルジニンさんは技術部門のマネージャーで、クライアントと連携し、メカニックやその他のスタッフの調整業務をしています。

ドルジニンさん:「ヤンマーには黒海とトルコ向けのプログラムがあります。取引先のトルコの造船所がトルコ・ロシア間の黒海を挟んで隣接しているので、このトレーニングは地元で将来非常に役立ちます。市場にはヤンマーエンジンがますます増えているため、こちらに派遣されました。」

研修を修了した参加者はTTスクールの証明書を受け取ります。ドルジニンさんはこの証明書がロシアに戻って役立つと話します。

ドルジニンさん:「お客様は質の高さに加え、ロシアならではの低価格にも期待しています。船貨物業界のスピードは高品質な作業にかかっているため、まず品質が優先されます。その為、ここでのトレーニングはお客様の期待に応えるのに役立ちます。」

ドルジニンさん:「私はマネージャーのため自分で修理する経験はあまりないので、研修のすべてが興味深いものでした。帰国後、ヤンマー独自の技術を活かした仕事ができます。同僚や他の整備士にも教え、皆で共有しようと思います。今回はじめてヤンマーエンジンを整備しましたが、非常に高品質なエンジンであり素晴らしい会社であることが実際に見て理解できました。船は海に出てこそ収益を上げることができるため、エンジンは常に問題なく稼動する必要があり、それを可能にするのが私たちの仕事です。この研修は、エンジンを年中無休で稼働させ続けるのに役立つと思います。」

ソルハイムさん:「TTスクールはノルウェーでも高い評価を得ています。私の他にも会社から研修を受けに来ており、とても満足していました。ヤンマーのエンジンについてなにか質問がある場合はTTスクールに連絡したいと思います。将来新しいヤンマーエンジンが登場するでしょう。お互いにエンジンを稼働し続けられるよう連携したいと思います。」

 

関連情報

大形舶用エンジン

ヤンマーエンジニアリング株式会社 – T.T.SCHOOL

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。