CSR報告書2020(ハイライト版)は、昨年度までと大きく趣を変え、ウェブサイトにおける情報開示と役割分担をしつつ、サステナブルな社会に向けた製品・サービスや事業活動事例を中心に、コンパクトに纏める構成となりました。
冒頭のトップメッセージでは、新型コロナウイルスやデジタル化の加速がもたらす事業環境の変化に言及したうえで、「CHANGE & CHALLENGE」のキーワードを掲げました。加えて、気候変動やSDGsなど、グローバルな社会課題認識のうえに立ち、人間の豊かさと自然の豊かさが両立したものを「新しい豊かさ」と位置付けて、その実現を目指す意思表明が改めてなされています。
ブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE」が掲げる4つの未来像、すなわち①省エネルギー、②安心な仕事・生活、③食の安全、④心豊かな社会、についての記載が、本報告書の中心的なコンテンツです。昨年度と比較すると、ビジョンごとに「目指す姿」、「製品・サービス」、「SDGs」、「社会課題」を簡潔に示したのち、「事業活動」および「CSR活動」の事例が紹介されるという統一された構成となっており、貴社が目指す未来像をストーリーの中心に据えた、分かり易いコミュニケーションがなされていると感じました。
具体事例としては、環境対応のディーゼルエンジンなど「ものづくり」を通じた貢献に加え、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、非常用発電機の遠隔監視システム(RESS)、農業機械のスマートアシストなど、今後鍵となるデジタル/データに着目した取り組みが目立ち、社長メッセージにもあるデジタル化に対応した新事業の進展がうかがえます。またCSR活動報告においては、4つの社会を実現する事業戦略との整合性がより意識されており、健康経営方針の制定など新たな動きも印象的です。
一方で、「ハイライト版」への変更に伴い、貴社の特色ある文化を伝える「開拓の精神」やミッションステートメントなど、企業理念体系の記載が省略された点はやや残念です。また、2050年といったグローバルな超長期課題と、足下の活動をつなぐ位置付けとなる、「環境ビジョン2030」および新たに策定した「第五次グループ環境中期計画」についても、紙幅の制約ある中ではありますが、記載を充実されるとより効果的かと考えます。
日本政府による2050年のカーボンニュートラル宣言をはじめとして、サステナブルな社会の構築に向けた国内外の動きが加速しています。長期の時間軸で事業に影響を及ぼすリスクと機会を認識し、4つの社会像の実現に向けた、貴社らしい独自の価値創造モデルやマイルストーンの提示など、引き続きステークホルダーコミュニケーションの一層の充実を期待したいと思います。