SOLUTION 03 / Cultivation Technology 育てる技術

持続可能な産業をサポートすると
ともに安全性を高め、
食を自由に楽しむ未来へ

バイオイノベーションセンターマリンファーム
漁獲量・漁業就業人口の減少に直面した大分県国東市にて、牡蠣の養殖事業を始動。地域に馴染む養殖方法を実現し、未来に向けて持続していける育てる漁業へとシフト。地域に貢献できる産業に発展しています。

ISSUE

ヤンマーの技術力と民間の活力で
日本の水産業を元気に

大分県・国東半島に位置する国東(くにさき)市。瀬戸内海に面し、太刀魚をメインとする漁業が大きな産業の柱となっていましたが、近年漁獲量が減少。漁業就業人口の減少にもつながり、次世代に漁業を引き継いでいくには対策が必要でした。そんな課題を抱える地元の漁業者の皆様から、ヤンマーに相談が届いたのは2012年の秋。空いた養殖場の活用法に関する構想をきっかけに、行政・漁協・ヤンマーが手を取り合い、牡蠣の養殖事業「くにさきOYSTER」プロジェクトが始動したのです。シャキっとした食感とフレッシュな味わいを、安全に楽しんでいただける養殖・管理方法の開発を通じて、日本の水産業を元気にすることを目標にしています。

SOLUTION

国東ならではの養殖方法で美味しく安全な牡蠣を育む

国東に適した養殖方法を採用した「くにさきOYSTER」。持続可能な生育環境を追求し、より品質の高い牡蠣の生産を目指して、種苗の陸上飼育段階から出荷まで徹底的な管理を行っています。通常、牡蠣の養殖がさかんな宮城や広島などでは、ホタテの貝殻を数珠状につなぎ合わせた原盤を海に沈めて牡蠣の幼生(赤ちゃん)を付着させ、プランクトンの多い海へ移動させ育てる「カルチ式」の養殖方法が採用されています。しかし国東のバイオイノベーションセンターマリンファームでは、稚苗・稚貝の段階から収穫まで一粒ずつバラバラの状態で育てる「シングルシード式」を採用。試行錯誤する中で採用された養殖方法には、次のような3つのメリットがあります。1つ目は、かごの中で牡蠣が動くため、香り・雑味・磯臭さの原因になる付着物が付きにくく、上質な甘い味わいの牡蠣が育つこと。養殖期間を通してカゴで養殖するので、養殖海域底質の汚れの原因となる落ち牡蠣の減少にもつながります。

2つ目は、自社で生産した“血統書付き”の種苗を使うことで、しっかり履歴を管理できること。履歴の明確なウイルスフリーの種苗から育成するので、生態系に悪影響を及ぼす事がありません。3つ目は、養殖過程のほとんどをコントロールできるため、身の大きさや殻の形を思い通りに作りこめることです。殻の成長を抑えて養殖するので、身の重量の割合が高く、ゴミとなる牡蠣殻の量が少なくなります。また、潮の満ち引きの影響をうける国東の干潟を生かした「タイド&ディープ方式」も採用。時期によって生育場所を変えることで、殻の整った身入りのよい牡蠣に育ちます。こうして国東の自然を活かした持続可能な方法で、高品質な生産を叶えたのです。

RESULT

獲る漁業から育てる漁業へ

こうして養殖方法を確立した「くにさきOYSTER」は、2015年に地域特産ブランドとして出荷を開始。2017年度は10万個を販売し、高級レストラン・百貨店を中心に販路を拡大しています。丁寧に育てられた美しい殻から“黒い宝石”とも称され、ミシュランの星を持つレストランや人気オイスターバーなどでの取扱いも増加。今では国東市の「ふるさと納税返礼品」として選ばれるなど、地域にも貢献できるまでへと成長しました。海で囲まれた日本にとって、水産業は重要な産業のひとつ。「ヤンマーの技術と民間の活力を用いて、日本の水産業を発展させていくことに使命感があります。水産業が衰退、持続できない事態はあってはならないこと。国東のようなモデルを、これからもどんどん広げたいと考えています。」と、「くにさきOYSTER」の養殖に取り組むヤンマー社員たちは語ります。ヤンマーはこれからも「獲る漁業から育てる漁業へ」シフトするお手伝いを通じて、“持続可能な産業”や“人々が食べることへの歓びを感じられる未来”を実現していきます。

INTERVIEW一貫した生産体制で安全性を追求し、
人々に食の恵みを存分に届ける

安全性を高めることが、人々が食の恵みを存分に享受することにつながり、食の自由度を高めます。ヤンマーの厳しい品質管理技術について、品質管理担当の寺井に話を聞きました。

日本において牡蠣は加熱食材といった認識が強く、生牡蠣を食べるのを躊躇される方もいらっしゃいます。しかし、「くにさきOYSTER」は出荷を開始して以降3年間、牡蠣を起因とする食品事故は起こしておらず、お取引をいただいているレストランにも「くにさきOYSTER」なら安心だとのお声をいただいております。そのわけは、ヤンマーの徹底した品質管理技術にあります。

食品安全衛生の観点でいうと、現時点でノロウイルスを浄化する技術はありません。そのような中で、安全性をどう高めていくかが重要です。そこで、大分県と国東市の協力のもと、養殖海域に存在するノロウイルスを含めた食中毒原因菌が基準値を下回っているかどうかを、定期的に調査しています。仮に基準値を超えた場合、その海域からは牡蠣の収穫を禁止します。収穫禁止海域は、その後養殖牡蠣が十分にきれいになり安全性が確認できてはじめて収穫が可能となります。また、今まで蓄積したデータを元に『冬にはこの菌はいない』などの傾向が把握できているので、予め汚染が予測される海域を避けることが可能となり、より安全性を高めることができるのです。

収穫後は陸上の水槽で、海の環境から切り離した状態で牡蠣を保持し、検査結果で合格がでれば出荷対象としています。最終的に、出荷前にはウイルスより目の細かいフィルターで濾過した海水で浄化することで、さらに安全性を高めています。陰性結果がでると、翌日出荷する牡蠣を浄化システムで20時間程度浄化。1つの牡蠣が1時間で数十リットルもの海水を出し入れする性質を活かし、体内の細菌類をきれいに洗い流します。浄化した後は、ロットごとに一般細菌・大腸菌・腸炎ビブリオ・ノロウイルス・O157などのベロ毒素産生菌を検査します。また、出荷作業を担当する本人はもちろん家族が体調を崩していたら出荷業務に携わらないなど、最終段階でのヒトからの汚染にも細心の注意を払っています。

このような厳しい検査、浄化工程を経て安全性を確認した牡蠣のみを出荷します。手間はかかりますが、お客様に安全に食していただくため、こだわりを持って取り組んでいます。