営農情報

武田氏の取組みを日常的にサポートする、ヤンマーアグリジャパン株式会社 東日本カンパニー 猪苗代支店 課長 小林明久氏(画像左)と、技術や情報面で支援する同東日本カンパニー 南東北営業部(郡山事務所駐在)営農推進部長 江田和行氏(画像右)。背景は生育の揃った密苗のほ場と磐梯山。

今後の規模拡大に備えたい!リモートセンシング+無人ヘリによる可変追肥を導入

武田 哲也 様

福島県耶麻郡
有限会社武田農産 専務取締役

「リモートセンシング」+「無人ヘリによる可変追肥」導入のメリット

1.ほ場管理作業の大幅軽減!

SA-Rの導入で、約250筆のほ場管理、肥料管理、作業管理等が大幅軽減され、社員間での情報共有も可能に。管理作業の簡易化を実現。

2.コスト低減&生育の安定を実現!

リモートセンシング+無人ヘリによる可変追肥で、生育ムラの改善による収量の向上を実現。

3.次年度の土壌改善に活用!

リモートセンシングの分析情報を、次年度の土壌改善に活用できる。

磐梯山麓49haで水稲栽培、年間400tの米を直販

磐梯山の麓、その美しさ、また神々しさから天鏡といわれる猪苗代湖を臨む49haの大面積で、水稲を中心に作付けをされている武田哲也氏。ご結婚を機に就農され、現在は12年目。お父様から経営移譲を受けて3年目のベテランだ。
武田氏は、米などの販売会社である有限会社武田農産の専務取締役で、水稲は個人農家として経営。現在3名の従業員を含む4名で、食用米と備蓄米をほぼ半々の規模でつくっておられる。
収穫した作物を武田農産に全量販売し、同社はそれをほぼ全量直販(約400t/年)。お客様は主に、昔からのお客様からクチコミで広がった一般家庭が中心で、一部は近くのペンション等にも販売。最近は道の駅でも販売しており、リピーターの方からは直接連絡が入る。
道の駅をアンテナショップ的に使われる発想はまさに経営者だ。またご自宅に隣接する加工所では、奥様を中心におこわ・おにぎり・稲荷ずしをつくり、道の駅で販売する他、冠婚葬祭用〈白飯〉等も予約販売している。

道の駅〈猪苗代〉の店内で販売されている、武田農産の新米・五百川。

会津農家の心意気で県GAP、J-GAPにも挑戦

そんな武田氏がこだわるのは品質だ。「転作も今年で終わって今は転換期です。この後には東京オリンピックもあるので、やはり安心安全がより重視されます。なので、ウチもこれからはGAPの認証取得に取組むつもりです」。福島県でもGAP取得に力を入れる方向で、まずは県GAPの取得から取組み、その後J-GAPに挑戦すると意気込む。そこで必要になるのが栽培面でのこだわりだ。
「これまでも品質には重きを置いてきたんですが、今後規模拡大を進めるとなると、省力化せざるを得なくなる。それをどうすれば品質を落とさずに実現できるか、というのが今後の課題です」。そこで今回の取組みに挑戦したのだ。武田氏も、以前は特別栽培米をつくっていたが、震災後、放射能の問題でそれどころではなくなった。それでも表示こそしていないが、現在も特別栽培米とほぼ同じように、安全安心に配慮したつくり方を続けておられる。会津農家の誇りとこだわりは今も失っていない。

福島県主導の実証事業でスマート化に取組む

今回の取組みに至った目的は地域農業の継承に伴う規模拡大だ。「毎年離農者が増えますから、農業を続けるには、我々若い者が規模拡大を前提にしなくてはなりません。それにはICTをからめた省力化が必須です」。そう決意した武田氏は、福島県が主導する〈ふくしまアグリイノベーション実証事業〉の実証農家として、取組みをスタートさせた。
ヤンマーはこの取組みに、密苗、リモートセンシング+無人ヘリによる可変追肥、SA-R(スマートアシストリモート)等さまざまな省力化技術で支援している。

福島県の事業であるため、ほ場には取組みを詳しく説明する看板が立てられている。

約250筆のほ場管理にスマートアシストリモート(SA-R)はもはや不可欠

武田氏のほ場は約250筆。そこで活躍するのがSA-Rだ。「SA-Rは、主にほ場管理や日々の作業管理に使っています。ほ場情報のMAPでは、作物や品種がそれぞれ色分けされていて、非常に見やすい。MAPを使って社員に指示ができるのが良いですね。今年が初年度ですけど、これからは情報が溜まっていくので農薬や肥料の施用量管理もできます」。実際にパソコンを見ながら武田氏が語ってくれた。
「とにかくこれだけほ場があると、1人では管理できません。便利というより“ないと困る”ものですね。最近、若手従業員のスマートフォンに専用アプリを入れたんで、これからはもっと活用していけると思います」。今後、規模拡大が進むと、さらにその真価を発揮してくれるはずだ。

「ほ場が約250筆もあるので、管理には、もうSA-Rがないと成り立ちません」と、武田氏。

リモートセンシング+可変追肥で、適所適量施肥

次にリモートセンシングだが、今回は30haほどの面積で行った。「リモートセンシングは、ドローンでほ場を撮影してつくったマッピングデータを見るんですが、目視よりも色の濃淡でハッキリわかるので『ここは多めに施肥しよう』とか、『ここは施肥しなくてもいい』みたいな判断がしやすいですね」。またリモートセンシングの結果は、ほ場1筆ごとにプリントされたものが出てくるため、武田氏はこれを従業員に見せて、ほ場の説明にも活用している。
そして武田氏が感心しているのが、リモートセンシング+無人ヘリによる可変追肥の組み合わせだ。「可変追肥は良いですね。今回は約10haやりました。ここは水の問題等もあって、全体的に生育ムラが多いんですが、可変追肥をやると、ご覧の通り生育がきれいに揃ったんです。これはムダが少なく肥効が良い可変追肥の効果でしょうね」。
リモートセンシング+可変追肥の工程は、ドローンで撮影してつくったマッピングデータを、無人ヘリに読み込ませて、そのデータに基づいて設計された量を正確に散布する、という流れだ。つまりオペレータが介在しないから(人的ミスがないため)正確に散布できるのだ。
また可変追肥をしないほ場でも、マッピングデータが来年以降のほ場改善に役立つ。今回の取組みでも、収穫後には土壌診断が予定されている。生育ムラがなくなり収量改善が期待できる可変追肥は、今後、大規模経営の収益力を考える上で重要な要素になってくるはずだ。

リモートセンシングの結果をまとめた詳細MAP。青い部分は地力が弱く、赤くなるほど肥えているのが、直感的にわかる。
福島県立ち会いのもとで、ドローンによるほ場の撮影(撮影7月11日)。
ドローンで撮影したほ場データを使って行う無人ヘリでの可変追肥。福島県が現地検討会として実施(7月18日撮影)。

魅力も実感、課題も把握、親子で挑む高冷地の密苗

今回の武田氏の取組みで注目されるのは、2.8haで挑戦された密苗だ。「育苗箱数の比較では、慣行で23~24枚/10aだったのが、密苗だと8.7枚/10aと約1/3に減りました。播種量は慣行で催芽籾約150g/1枚が、密苗では同約310g/1枚。作業的には、苗を動かすのが最も大変な作業なんで、それが軽減できるのは大きな魅力ですね。慣行に比べて本当に楽でしたよ」。密苗のメリットをご実感いただけているようだ。
ところで密苗は初めての取組みということで、不安はなかったのだろうか。「苗が混んでいるので、ムレたり病原菌が発生したりしないか心配でしたけど、実際は問題なく育ちました」。ただその後の生育では課題も見つかった。「慣行だと中苗で植えるんですけど、密苗は稚苗ぐらいで植えるので、若干生育の遅れがありました。例年だと夏頃には追いつくんですけど、今年は天候不良でその遅れが戻っていません。それを解消するためには、もう少し草丈が欲しいですね」というのは、武田氏のほ場は少し標高が高いからだ。そのあたりを、お父様の利和氏に詳しくうかがった。
「ここは標高525mほどの高冷地で、平場の苗づくりと全然違うんです。今回初めて密苗をやりましたけど、ここでやるには播種が1週間ほど遅かった。その遅れをまだ取り戻せていない」。にこやかな表情ながら、なかなか手厳しい。しかしそれだけではなく「来年は、播種をもう少し早めて、少し大きめに育てます」。すでに次年度のプランが描かれている。さすが福島県稲作経営者会議の会長も務める、筋金入りのプロ農家だ。

「やっぱり苗づくりが基本ですね」と、お父様の武田利和氏。会津の米づくりを担ってきた篤農家の言葉はやさしく、厳しい。

最新技術の省力効果を実感。さらなるスマート化へ!!

取材時点ではまだ収量は出ていなかったが、この事業で取組んだ技術に対する感想をうかがった。「省力化という面では、かなり成果が出ていますね」。しっかりとした口調で答えてくれた。ヤンマーの技術にはご満足いただけているようだ。
さらに今、注目のGNSSガイダンス等についてうかがうと「精度が上がってきたら、利用価値は大いにあると思います。導入すると当然、省力化やコストダウンができるはずですし」と、まんざらでもないご様子。武田氏の頭の中には、すでに次のスマート化プランが描かれているのだろう。

YR8Dを使って密苗移植を行う武田氏(撮影5月20日)。

後日談: 天候不良のなか善戦! 次年度に再度挑戦!

取材後の密苗の状況が気になったので、追っかけ取材をお願いした。
「台風や長雨の影響で、状況はかなり悪かったです。収量は、当地の慣行の平均が前年より反収で約1俵落ち。ウチも悪かったけど、そこまではいきませんでした。密苗は、前年の慣行に比べて反収で約0.5俵落ち。品質は、周辺農家が2等米のところ、ウチはすべて1等米でした」。天候不順で全体的に良くなかったなか、武田氏のところは善戦したといえるのではないだろうか。密苗の収量減については「原因としては、慣行に比べて少し生育が遅れたのが収穫まで続き、品質は良かったのに収量に影響が出たんだと思います」。武田氏によると、今年初めて密苗をやってみたが、苗づくりの際、密苗用の苗と慣行用の苗を同じハウスで育苗したため、生育が少し遅れ、その遅れを取り戻せなかったからだという。「原因がわかっているので、来年は、稚苗より少し草丈を伸ばして、もう一度、密苗に取組みたい。品種もいろいろ試してみたい」と、元気に答えてくれた。
武田氏のほ場が高冷地にあるため、品種も今回の〈ひとめぼれ〉でなく、早生の〈まいひめ〉を試してみたいとのことだ。天候不良がなかったら、より良い結果が出たのではないだろうか。来年のチャレンジで、良い結果を出せるよう、頑張っていただきたい。

優れた栽培技術と高い省力化技術、期待しています!

武田 信敏 様

福島県農林水産部 農業振興課 課長

〈ふくしまアグリイノベーション実証事業〉は、最新の稲作省力化技術やICTを組合わせ、水稲の作付面積15ha以上の農家が東北一少ない福島県の現状を打開し、今後の経営環境に耐えうる大規模経営体(メガファーム)を育てるのが目的だ。
「武田さんの栽培技術が優れていることは間違いないんですが、省力化技術も良い。大規模化が進むと、ほ場管理が難しくなりますが、ほ場管理システム(SA-R)ならパソコンで一元管理でき、スマートフォンでも見られる。リモートセンシング+可変追肥も、均一生育や肥料代低減につながる。私も色々勉強させていただきました」と、語ってくれたのは、福島県農林水産部 農業振興課の武田信敏課長だ。武田課長は密苗に対する評価も高い。「武田農産さんが他と違うのは、密苗を組み合わせている点です。密苗は播種・育苗から田植えが省力できるので、非常に優れた技術だと思っています」。
ヤンマーの技術にも信頼をいただいている。「今回の成績が良ければ、協議会で検討したうえで、この技術の横展開を図っていきたい。非常に期待しています!」。武田課長は、力強く語ってくれた。

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