お客様事例紹介

地球開拓事業団株式会社の代表取締役である浅野真英さんは、大規模農家のモデル地域と言える秋田県大潟村で営農。現在も、農地中間管理機構を利用して、意欲的に規模拡大を推進している。まずは、密苗と浅野さんの出会いをうかがった。
「密苗は、ヤンマーのお店で知りました。苗箱も(たくさん)使わないし、育苗期間も短いって聞いたんで『それじゃぁ、やってみようか』ということで、試験的にはじめました」。淡々と語る浅野さんだが、省力化に対する意欲は非常に高く、直播にも前向きに取り組んでおられる。「直播は、カルパー・鉄・モリブデンコーティングなど全てやっています。まぁ、試験ですから1haぐらいですけど」。試験といえども、これほど多種の直播をやっている人も珍しい。それだけ意識が高いからこそ、密苗に対しても、臆したり迷ったりすることなく、まず試してみるところが、さすが大潟村の農業経営者だ。

まずは、実際の播種・育苗はについてうかがってみた。
「ゴールデンウィーク明けに乾籾で280g/箱を播種(育苗期間は播種から18日間)しました」。実際に厚播きをしてみた感想は「床土が見えませんでしたねぇ(笑)。あと、普通の播種機では播ききれなかったんですが、たまたま持っていた飼料米用の播種機を使いました。それだと300gまで播けるんですよ」。不測の事態にも、臨機応変に対応できることころもプロならでは。移植は5月24日。その苗箱数を聞いて驚いた。「慣行では、10a当たりの苗箱数を27枚ほど植えていましたけど、密苗では9枚/10aぐらいでした」。これなら密苗のメリットは、十分に感じていただいているはずだ。

移植後の生育については「慣行苗と比べてあまりにも小さいんで、移植直後に、ほ場面が青くならなくて『なんかあるな…』みたいな感じだったので不安になりましたけど、日に日に良く育ったので、胸をなで下ろしました」。その後は、今年は天候が良かったせいもあり、若干、分けつは遅れたそうだが、夏、暑かったため「盆前～7月後半には、慣行栽培の稲に追いつきました」。最終的にはまったく問題はなかったようだ。

「まぁ、多少の欠株はあったでしょうけど、ウチは(効率重視なので)欠株を気にしないし補植もしません。まぁ、密苗は小さくてどこが欠株かもわからない状態ですけどね(笑)」。大規模ほ場では、多少の欠株に目をつぶらないと、手間だけかかってスケールメリットが出ないからだ。「結局は単位面積当たりでどれだけ穫れるかなんです。だから、そういう意味では、今年の密苗は合格点ですね」。先進のプロ農家から、賞賛の言葉をいただいた。

密苗は苗箱数が少ない。ということは、苗つぎも少ないということだ。そのメリットを感じていただけたのだろうか?
「ウチは長辺が120mのほ場なんですけど、慣行苗では、1往復の間に必ず1回は苗つぎをするんです。それが密苗の場合、1枚で2往復半ぐらいできましたから、さすがに早く終わった!これは大きなメリットですね。あと、ヤンマーさんの新しい田植機の動きも早かったですよ」。効率アップには確実に貢献しているようだ。

全国で、稲作農家の後継者がなかなか見つからないなか、唯一、20代の若者がどんどん就農する大潟村。同社の従業員も若手社員が多い。そんな彼らの、密苗に対する感想をうかがった。「ウチは農業1年目の従業員がほとんどですけど、新人の女性なんかは、密苗を基準として見てしまっているから、慣行苗の田植え後を見て『こんなにたくさん苗箱が必要なの?!』って驚いていました」。何年か後には、密苗が慣行だと思う新世代の農業人が生まれるのかもしれない。

また、苗箱が少ないということは、運搬も楽になるはずだ。「苗箱を12,000箱ぐらいつくるんで、作業の中では苗運びが一番大変なんです。ましてやプール育苗なんかやったら、苗箱が重くなる。でも密苗なら、軽トラ1台の苗で、結構な面積が植えられますから。女性でもぜんぜん大丈夫だと思いますよ」。さらにメリットは、意外なところに現れる。「慣行だと苗箱の数が多いので2t車で運びますが、人によっては運転手がいります。でも密苗だと軽トラ1台でいけますから。田植えに関わる人員を減らすことができますね」。これも経営者としては、想定外のメリットだ。