お客様事例紹介

個人専業農家 渡辺 勇進様〈密苗〉

個人専業農家

渡辺 勇進様

  • 地域 : 秋田県南秋田郡
  • 作物・作業 : 水稲(7.5ha)
  • 密苗実証面積 : 65a
  • その他 : 慣行栽培、直播栽培

今回は移植後の水管理で苦戦するも 密苗で、苗箱数が慣行の1/3以下に!

ハウス面積の問題から苗箱数削減に挑戦。細くても苗を植える密苗は、直播より安心

密苗の挑戦者の中には、今回たまたま上手く行かなかったが、次回も取り組みたいと考える人が多い。渡辺さんもその1人だ。秋田県南秋田郡で、米7.5ha(あきたこまち・めんこいな)のほか大豆を、ほとんどお1人でつくっておられる。そんな渡辺さんの悩みが育苗ハウスの面積だ。ハウスは手狭になったからといって、簡単に増やせない。そのため、以前から省力化には前向きだ。今年は直播を1.32ha(うち鉄は1ha、残りはべんもり)。そして、今年はじめて密苗を65a栽培された。

まずは直播の感想をうかがうと「良くなかった。出芽が遅かったもん。倒伏はなかったけど草が多かった。密苗の方が良かった。いくら苗が細くても、やっぱり苗で植えたほうが安心だな。直播は来年やるかどうか…」。と、直播に対しては懐疑的な渡辺さんだが、密苗には、好感触だ。と言うのも渡辺さんは、以前から試験的な取り組みをしておられたからだ。そんな経験があったからこそ、今回の密苗にも抵抗なく入られたのではないだろうか。「200g/1箱にしたり、逆に1箱100gぐらいで10a当たり21箱播いたりして、いろいろやってみました。でもやっぱり増やすっていうのは抵抗がある。しかも一気に300g/1箱だからね」。渡辺さんは、300g/1箱の厚播きに抵抗感を持っておられる。「籾が重なってるでしょう?ウチは260g/1箱にしたけど、300g/1箱なら2重3重になる。だから上手く芽が出るか心配だったけど、大丈夫でした」。渡辺さんの心配をよそに、苗は問題なく育ったようだ。

いますぐの導入は難しくとも、新型田植機の魅力は十分に理解

そんな密苗に好意的な渡辺さんが、ひとつ気になっていることがある。「直播に比べて密苗は良かったけど、植えた後が寂しいなぁ。苗が細いから何処へ植えたか、見えないもん(笑)。通常の機械の苗送りで植えた方が、良いんじゃないか?」と、逆に我々に対して、思いもしなかった質問を投げてこられた。

「実は、それをやった人がいるんです」。取材に同行したヤンマーアグリジャパン(株)八郎潟支店の杉沢担当が話してくれた。情報によると、管内において新型田植機を使って密苗をするつもりで260g/1箱の苗をつくっていた人が、生育の都合で機械の到着を待てず、密苗用の苗を従来の田植機で植えたという。「さすがに密苗と違って7~8本/1株と多かったんで、植えたときは凄かったですよ、緑がキレイで(笑)」。と、話すと「実はウチも、来年はそうやって計算して、今の田植機でやろうと思ってるんだけど…」と、本音を打ち明けてくれた渡辺さん。ただ、従来の田植機を使う場合、横送りを最大に設定し、爪を手動でグッと下げてかき取り量を最少にして植えたが、結局16枚/10a使ったとのこと。すると「10a当たり16枚は多いよね。10枚ぐらいでやらないとシンドイな…」と、腕を組む。それもそのはず、今回、渡辺さんの密苗の取り組みでは、従来の慣行栽培では20~21枚/10aのところ、なんと1/3以下の6枚/10aで済んだからだ。

すかさず「新型の田植機なら、最初から密苗仕様になっているから安心ですよ」と、杉沢担当がアピール。さらに「8条植えなら、密苗の箱を後ろに予備苗含めて24枚。10aに5枚使ったと考えると、頑張れば50aぐらいはいけるかも」と、続けるも「確かに今回は65aを6枚/10aで植えたから(6.5×6=)39枚。これで済んだのは魅力的だけど、コンバイン買ったとこだからなぁ(笑)」。今すぐの導入は難しくとも、新型田植機の魅力については、十分ご理解いただいているようだ。

今回苦戦した水管理さえ上手くやれば、収量的には今年より間違いなく上がるはず

密苗の全体的な感想をうかがうと「苗づくりは上手くいったんじゃないかな。ただ、今回は管理が難しかった。苗がダメになると困るんで、水を張ったり抜いたりしたんですが、水管理が課題だなぁ…」と、反省しきり。残念ながら、収量も6袋/10aと少なかった。それでも密苗に対する信頼は厚く、収穫を終えてみて良かった点は「やっぱり苗箱が減らせるというのがいちばん良いんじゃないかな」と、笑う。お知り合いの方の反応も良く「『10aが6箱や7箱で済むなら、こっちの方が良いなぁ…』って言ってたな。皆だんだん密苗の方に移行するんじゃないかな」。実は正式には、250g以上(催芽籾で300g)を密苗と呼んでいるため、渡辺さんがやられた催芽籾で260gだと若干少ない。しかし今回の取り組みでは6枚/10aと、苗箱を大幅に減らせたので、省力化としては十分だ。「そりゃ、十分メリットがあったよ!」と、声を大にして言っていただけた。

実は渡辺さんは昨年、奥様を亡くされた。そしてお1人で作業をしはじめた頃にまわりから委託の依頼があって、心優しい渡辺さんは、断りきれずに面積を増やしてこられた経緯があり「これ以上面積を増やすなら、人を雇うしかないなぁ…」と、思案しておられたのだ。しかし密苗の面積は拡大されますか?の質問に「今年は初挑戦だし、管理が難しかったけど、それさえ上手くいけば収量的には間違いなく、今年より上がるはず」と、力強く答えてくれた。密苗が、これからの渡辺さんの営農の支えになっていただけるよう、ヤンマーもずっと支援していきたい。

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密苗

栽培のポイントやよくあるご質問など、初めて導入する方にもこれまで経験のある方にも役立つ情報をご紹介