ヤンマーテクニカルレビュー

ミニ耕うん機「YK-MR」シリーズの紹介 ~より簡単に、より手軽に~

Abstract

A mini tiller is the most popular machine which is used in a Japanese kitchen garden.
Recently, this machine that is simply and easily operated is used in a wide age bracket because of aging farming population and increasing of beginners who are interested in a kitchen garden.
We have developed a mini tiller with the stylish design which can be operated more easily and more simply.
This article describes the technologies of “YK-MR” series released last year.

1.はじめに

当社でミニ耕うん機を商品化して26年目を迎えた。この間に、耕うん時の飛び出しが少ない「一軸正逆耕うん」シリーズ、うね盛り作業ができる「ロータリーカバー開閉」シリーズ、レバーを回すだけうね立てができ、移動時には尾輪がでる機構を標準装備と簡単で手軽に使える様進化してきた。この背景には、農家の高齢化や食の安全・安心への関心が高まり、農へ興味を持って携わる一般の方が増えてきていることがある。

各地の市場調査でお客様の声をしっかりと聴き、より簡単に、より手軽にそして安心感をもって使える機械を開発することとした。

2.商品概要

2.1.外観

外観写真
図1 外観写真

2.2.シリーズ構成

初心者、熟練者、幅広い年齢層のお客様に対し、きめ細やかな対応ができる仕様が必要であったため、モジュール設計を行った。

エンジン、トランスミッション、ロータリーカバー、耕うん爪、の組み合わせで多彩な仕様を実現した。(表1)

表1 仕様一覧

仕様一覧

3.操作性・快適性

3.1.重量バランス

快適な作業をするためには、耕うん時の安定性と旋回時の操作性を確保しなければならず、重量バランスが重要な要素となる。ロータリー側の荷重が大きくなれば、耕うん時の安定性が向上する。一方、旋回する時にはハンドルを持ち上げるため、ハンドルの持ち上げ荷重を低減することで操作性が向上する。前者は後方バランス、後者は前方バランスの為、両方を成り立たせる最適化を行った。また、前段で述べたように、モジュール設計で多彩な仕様においても、すべて成り立たせる必要があった。

タイヤより後方に部品構成が多い構造上、通常は後方バランスになってしまう。 そこでハンドルとロータリー回りの徹底的な重量軽減と、デザインウェイトでの調整を行うこととした。結果ハンドルの持ち上げ荷重を15%軽減しながら耕うんの安定性を確保した。

重量バランス最適化主要箇所
図2 重量バランス最適化主要箇所

3.2.ハイブリッド爪

耕うんする時と土を横に飛ばしてうねを作る時には、お客様が爪軸を外して入れ替える作業をしなければならず、付け間違いや組み方がわからない状況が発生していた。この課題を解決するために、「爪を付け替えないで作業を変える」ことを目標にして開発をスタートさせた。当初、全く違う方法でうねを作ることができないかを検討したが、要望のうねを作るためには、土を横に飛ばさなければならなかった。爪の回転方向は変えることができる為、回転方向で作業が変わる爪の新規開発することとした。一つの爪に正転時に必要な性能と逆転時に必要な性能を同時に成立させるため、爪にひねり形状を加えた。これにより、正転で土を内側に、逆転で土を外側に移動させることができるハイブリット爪が完成した。

爪回転方向と土の流れ
図3 爪回転方向と土の流れ

3.3.ALL-IN-ONE

「すべてを一台に、すべてを簡単に」。畑の作業をするために、どのような場面があるか検証した。最も労力を要する作業は、「耕うん作業」と「うね立て作業」である。また、毎回機械を納屋から出して畑まで移動する。今までは、別のアタッチメントを付け替えてこれらを補っていた。これらを標準装備した機能を紹介する。

(1)うね立て機能

耕うん時は整地に使用しているゴムマットをレバー一本でうね立て用に使用することを可能にした。(図4、図5)

耕うん作業
図4 耕うん作業
うね立て作業
図5 うね立て作業
(2)溝幅調節機能

畑の大きさや溝の用途に応じて、溝上幅、溝底幅を各2種類選択できる様にした。通常のうね、幅の狭いうね、管理作業を行う通路用の溝がつくることができる。(図6)

4種類の溝幅
図6 4種類の溝幅
(3)移動用補助車輪

移動時は、ロータリーを浮かせる為にハンドルを持ち上げたり、別の移動車輪アタッチメントを装備したりする必要があった。使う頻度の多い移動に、ワンタッチで操作できる補助車輪を標準装備した。

ワンタッチ移動用補助車輪
図7 ワンタッチ移動用補助車輪

4.耕うん深さ

耕うん性能の中でも、耕うん深さ、砕土性、反転性は作物の成長を左右する。これらは主に爪とロータリーカバー形状とで性能が決まる。ロータリーカバー内で土を持ち回りながら砕土性と反転性を確保し、適切な土の量をロータリー後方より排出することで目標としていた耕うん深さ17cmを実現させた。(図8)

ロータリーカバー形状の最適化
図8 ロータリーカバー形状の最適化

5.セルフケアサポート

機械のライフサイクルを最大限にするために、一つは初心者でも間違わず使える様にわかり易く伝えること。もう一つは、手入れして長く使ってもらえること。これを解決するには、使い方や手入れの仕方が動画でいつでも見られるようにすることが有効である。そのため、動画サイトを立ち上げQRコードを本機、カタログ、取扱説明書にも載せた。(図9)

本機にQRコード貼付
図9 本機にQRコード貼付

6.フルカバーデザイン

機械的な部分をできるだけ見えないようすることで、親しみやすく初心者でも安心感をもって操作してもらえるようなスタイリッシュなフルカバーデザインを採用した。お客様が迷わず操作や日常点検ができる様に、必要な箇所だけを見えるようにしたこともフルカバーデザインの長所である。(図10)

操作及びメンテナンス部分
図10 操作及びメンテナンス部分

7.おわりに

開発当初から生産、販売、サービス、開発が一丸となって関わってきたことが、お客様の課題を一つ一つクリアできたと考えている。かなり困難な課題もあったが、楽しそうに畑で使われているお客さまの姿を見ると、そんな困難も吹き飛ぶ思いである。

今後も「農」に興味を持ってもらえるような機械を提供できるように、新たなアイデアで更なる進化を継続させていきたい。

著者

アグリ事業本部 開発統括部

中野 将憲