ヤンマーテクニカルレビュー

ヤンマー新型ホイルローダー V3-7/V4-7/V5-7型の製品技術紹介

Abstract

The wheel loaders are machines for the excavation and loading with a large bucket, and are popular in the world. The body structure is articulated and steering is operated by the hydraulic cylinder. Under the Japanese regulation they are classified into vehicle-based construction machinery. Large ones are used in civil engineering and quarry of sand and crushed stone loading, and small ones are used in snow removal work and livestock market.

In 2015, Yanmar released New V3-7, V4-7, V5-7 with the same off-road durability, working capability as the previous model. In developing, we had received many requests including the improvement of machine noise from the market. Accordingly new V3-7, V4-7 and V5-7 had been developed with the design concept “ultra-low-noise” and better maintainability, visibility and environmental features.

In this article, the techniques used to achieve ultra-low noise along with new features and associated technology.

1.はじめに

アーティキュレートホイルローダー(articulated wheel loader)とは、大型のバケットで掘削と積込をするタイヤ式の機械であり、車体構造はアーティキュレート式(フレーム中折れ式)で、油圧シリンダの伸縮によって前後フレームを中折れさせることで操舵し、前輪と後輪の軌跡が同一である為、操舵時の内外輪差が発生しないという特徴を持つ。日本の法令では車両系建設機械に分類され、大型のものは土木工事や採石場などで土砂や砕石の積込に使用されるが、小型のものは主に降雪地域での除雪作業や畜産市場での堆肥搬出や給餌、資材運搬等に幅広く使用されている。

今回フルモデルチェンジを行ったヤンマーV3、V4、V5(図1)は、小型ホイルローダーとして1983年の初代発売開始以降、その走破性と耐久性、作業能力が評価されて販売数を増やしてきたが、国内外の排ガス規制のタイミングに合わせてフルモデルチェンジを行い、2015年にV3-7、V4-7、V5-7型として商品化を行った。

フルモデルチェンジでは、従来機で評価をいただいていた走破性と耐久性、作業能力は継承しつつ、従来機での改善要望を多数織込み、お客様目線での使いやすい機械とした。中でも特に改善要望の多かった超低騒音化については、開発コンセプトのひとつに掲げ、国土交通省から超低騒音型の指定を受けた。

本稿では、超低騒音化とする為の技術、および今回新規に織込んだ特長とその技術について紹介する。

新型ヤンマーホイルローダー
図1 新型ヤンマーホイルローダー

2.超低騒音化技術

国土交通省では、低騒音・低振動型建設機械の利用を促進し、建設工事の現場周辺の生活環境の保全と建設工事の円滑な施工を図ることを目的として定めた「低騒音・低振動型建設機械の指定に関する規程」に基づき、1997(平成9)年より低騒音型・低振動型建設機械の指定を行っている。このうち、同規程の騒音基準値(表1)から6デシベル(dB)減じた値の建設機械は、「超低騒音型建設機械」と指定され、超低騒音型ラベル(図2)を機械に表示することができる。

日本の法令では、ホイルローダーは表1のトラクタショベルに分類され、機関出力55kW未満での超低騒音指定条件は96dB未満となり、これをクリアできれば「超低騒音型」となり営業的にも有利となる。

表1 建設機械の騒音基準値(国土交通省HPより抜粋)

建設機械の騒音基準値(国土交通省HPより抜粋)
超低騒音ラベル
図2 超低騒音ラベル

これまでの従来機は、周囲騒音約99dBで「低騒音型」のラベルしか貼ることができていなかったが、近年においては、各自治体補助金制度の利用条件や、官公庁直轄工事の入札条件として「超低騒音型」が挙げられるケースが増えてきており、ホイルローダーの超低騒音化が急務となった。

このような背景の中、今回のモデルチェンジでは量産でのバラつきを考慮し、95dB(-4dB)という高い開発目標を設定し、いかに効率良くクリアさせるか、事前に検証とシミュレーションを実施した。まず先行試作機で音源分離を行い、寄与率の大きい吸気音および機関音を騒音低減のターゲットとした。 最も寄与率の大きい吸気音低減については、吸気負圧>-2.9kPaという制約に対し、流体解析にて管径・長さ・曲げ回数・拡管率を決定し試作を行った(図3)。

流体解析による吸気成形ホース形状シミュレーション
図3 流体解析による吸気成形ホース形状シミュレーション

2番目に寄与率の大きい機関音低減については、高周波領域(800~4000Hz)での影響が大きかったため、高周波領域で従来品に比べ吸音性能が約4割優れた吸音材を採用した(図4)。

吸音材の吸音性能
図4 吸音材の吸音性能

これにより、量産機では国土交通省の騒音基準値を無事クリアすることができた。併せて、騒音と相反するヒートバランスも弊社基準値をクリアすることができた

3.本機の特長と織込み技術

次にV3-7、V4-7、V5-7型に織込んだ新たな特長を、「環境性」「整備性」「安全性」「視界性」「乗降性」の5項目に分けて紹介する。

3.1.環境性

エンジンは、特定特殊自動車排ガス規制2014年基準をクリアした、ヤンマーDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)付き電子制御コモンレールエンジン(図5)を搭載している。今回の搭載エンジンは、ヤンマー建機として初めて排気スロットルを搭載した。アクセル固定で使用する油圧ショベルなどの土工機械に比べ、フートアクセルで走行速度や作業機速度を調整する小型ホイルローダーは、エンジン低負荷領域での作業頻度が多い場合があり、そうなると排気温度が低くDPF本来の再生能力を十分に発揮できなくなる。これを軽減するため、エンジン低負荷領域では排気スロットルで排気昇温させている。

搭載エンジン(3Dモデル)
図5 搭載エンジン(3Dモデル)

3.2.整備性

今回のモデルチェンジでは、ボンネット開口を大きくするとともに、フィルタ類やヒューズ・リレーなどの集中配置によって整備性を改善させた。特にLOフィルタは、油圧ホースを使ってボンネット開口部に配置することで、その脱着性を大きく改善することができた(図6)。また、長期保管時のバッテリー早期放電を抑制するため、バッテリーカットスイッチを標準装備し、ワンタッチでアース回路を切断できるようにした。

ボンネット内のフィルタ集中配置
図6 ボンネット内のフィルタ集中配置

さらに、GPSと通信端末を活用して本機の稼働状況やコンディション離れた場所からでも確認することができる、「スマートアシスト」をオプション装備として設定した。

3.3.安全性

キャビンは、本機が転倒した場合でも、シートベルトを着用したオペレータを保護するROPS規格と、落下物からオペレータを保護するFOPS規格に準拠した、国際規格を満足した安全性の高いキャビンを搭載した(図7)。

また、外部エンジン停止スイッチを新たに設置し、万一の時にも車外からワンタッチでエンジン停止できるようにした(図8)。

キャビンフレーム
図7 キャビンフレーム
外部エンジン停止スイッチ
図8 外部エンジン停止スイッチ

3.4.視界性

ヤンマー建機のホイルローダー年間生産台数のうち、約8割はキャビン仕様として主に東北・北海道の除雪市場に販売されている。除雪作業は、通常早朝と夕方の2回行われ、キャビン室内暖房性能とともに、オペレータの視界確保のため、フロントガラスのデフロスト性能(解氷率)が要求される。従来機では、ヒーターユニットをオペレータシート下に配置しており、フロントガラス吹出し口までホース配管でつないで温風を当てていたため、「風量をロスしてしまう」「温風の温度が低下してしまう」という問題があった。今回のモデルチェンジでは、キャビンフロントガラスとステアリングハンドルの間にヒーターユニットを配置し、ヒーターユニットの温風を直接フロントガラスに当てる構造とした(図9)。これにより、デフロスト性能は従来機と比べ約2割性能アップした(図10)。

ヒーターユニット配置略図
図9 ヒーターユニット配置略図
デフロスト性能比較
図10 デフロスト性能比較

しかしながら、このヒーターユニット配置によりオペレータ前方視界への影響が懸念された。オペレータが一番見たいポイントは、バケットがどの高さにあるか、周囲とどの程度隙間があるか、タイヤがどこにあるかという点であり、バケット上面・側面およびタイヤの視認性が重要視される。そこでオペレータのバケット視認性を確保しつつ、前述のデフロスト性能を十分発揮できるよう、ヒーターダクトの大きさ、形状、吹出し口を最適設計、配置した(図11)。

オペレータ前方視界
図11 オペレータ前方視界

3.5.乗降性

アーティキュレートホイルローダーは、その構造上、エンジンボンネットの上という高い位置にオペレータシートが配置されるため、乗り降りのしやすさは重要な要素である。今回のモデルチェンジでは、従来機から更に乗降性を向上させるため、乗降ステップを直線的に配置し、キャビンドア間口を45mm拡大した。また、フロア入口面積を70%拡大し、乗降時に体を反転しやすいようにした(図12)。

オペレータ前方視界
図12 キャビン乗降性の改善

4.おわりに

今回、モデルチェンジの課題のひとつであった超低騒音化は、従来機から-4dB低減させるという高いハードルと、騒音と相反するヒートバランスをクリアさせることなど技術課題も多かったが、先行試験や流体解析によるシミュレーションを行い、事前検証することで課題の解決を図るとともに、手戻り工数を大幅に削減し開発日程を遵守した。

また、DPF搭載によるエンジンルーム内の機器配置変更や、ヒーターユニットの配置変更などスペース上の制約も多く、併せて小型特殊自動車の保安基準適合というホイルローダー特有の条件を成立させることは困難を極めた。

超低騒音化をはじめとする今回の改善は、ヤンマーホイルローダーの主要販売先である除雪市場、畜産市場のご意見やご要望を可能な限り織込んだ内容であり、今後の拡販が期待される。

今後も引き続き市場の声を収集し、お客様目線の企画を行い、お客様に満足していただける商品開発を継続していきたい。

著者

ヤンマー建機株式会社 開発部

北原 訓