ヤンマーテクニカルレビュー

電装品の事前評価による商品の品質向上~品質解析センターの取り組みについて~

2016年7月27日

Abstract

In recent years, Yanmar’s products are equipped with many electrical components. Securing electrical component quality has become more important to have customers use our products safely and comfortably. To prevent the occurrence of product quality problems in a market, electrical components are tested during product development stage.

This article describes our prior-evaluation methods and internal system with actual examples.

1.はじめに

ヤンマーが生産・販売しているトラクタや建機、発電機などの最終商品は、数千点の部品で構成されています。これらの商品に使われる部品はヤンマー専用に新規開発することもあれば、既成品を使用することもあります。どちらの場合でも等しく部品の品質が確保されている必要があります。

当社では、部品の品質は、JISなどの標準規格と共に、ヤンマーの社内規格であるYIS(Yanmar Industrial Standards)に従って評価します。ここでは、電装品の事前評価の取り組みについて紹介します。

2.電装品の事前評価

2.1.電装品評価の特徴

最終商品は数千点の部品で構成されていると説明しましたが、部品が電装品の場合はその部品はさらに数十~数百点の部品で構成されています。マイコンが搭載されている部品については、数万行のソフトウェアも部品の一部です。部品の数が多いということはそれだけ故障箇所が多く、多様な壊れ方をするということを示します。それ故に電装品の試験評価項目は膨大になります。

2.2.電装品の搭載環境

電装品の商品への搭載場所は出来るだけ環境の良い所を探しますが、それでも家電製品に比べると非常に厳しい環境です。温度・振動・雨水などに加え、静電気などの電気ノイズも電装品の大敵です。それらの環境下で10年以上故障なく動作することが求められます。

2.3.電装品評価の実施例

評価の実施例として、電子基板を内蔵した電装品の例を紹介します。試験評価項目は数十項目になります。また、各試験項目には複数の判定基準があります。

この中から熱衝撃試験の例を紹介します。

屋外で使用する機械に搭載される部品の周囲温度は、冬の朝には-40℃になることもあれば、真夏の負荷運転時には100℃を超えることも想定されます。熱衝撃試験は電子部品が周囲温度の変化にどれくらいの耐性があるかを確認する環境試験のひとつです。

試験には熱衝撃試験機を用います。この装置は温度を急速に変化させることが出来る装置で、部品には膨張←→収縮によるストレスが加わります。高温と低温の繰り返しが決められた回数になるまで部品を装置内に放置した後、部品を取り出し動作確認や劣化の度合いを確認します。

劣化度合いの評価では部品の電流-電圧特性の測定や、X線や電子顕微鏡による観察などを行います。以下はその実施例です。

カーブトレーサによる実装部品の電流-電圧特性評価

機能チェックでは電装部品が完全に壊れていないとわかりませんが、実装されている部品のI-V特性を測定することで劣化しているかどうかがわかります。

X線撮影例

X線装置を用いることで、供試品の内部構造を非破壊で観察することが可能です。※細部を観察したい場合は切断が必要

顕微鏡撮影例

X線撮影が困難な箇所(厚い金属で覆われた箇所、数ミクロンの亀裂など)は、切断して顕微鏡で観察します。下の画像は、基板上の部品と基板のはんだ接合部を切断して観察したものです。

3.評価体制

電装品の評価は各事業部の開発部で実施しますが、事業部からの依頼を受けて部品の評価を行う品質解析センターを設立し、より詳細に開発段階での試験評価や評価基準作りを行っています。また、市場不具合品の原因調査・解析業務も実施しています。

4.おわりに

商品における電子制御の重要性が増し、電装品の品質確保が大きな課題となっています。マシンダウンによるお客様の機会損失を最小化するために、品質解析センターでは装置の新規導入や新しい評価方法へのトライを継続的に実施し、ヤンマー製品のさらなる品質の向上に貢献したいと考えています。

著者

研究開発ユニット 中央研究所

武山 隆一

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