ヤンマーテクニカルレビュー

新型油圧ショベルViO80の製品技術紹介~新油圧システムViPPS2i採用による環境性能と作業性能の両立~

Abstract

The ViO80 described in this article has the heaviest machine mass of 8 tons in the series, and with characteristics that place it midway between a mini and small excavator. It is used in sites that range from the small to the comparatively large.

In releasing its new models, the product development has been implemented with aims to provide hydraulic excavators with low environmental impacts that contribute to a sustainable society by responding to rising public concerns about the environment in addition to the high level of operational performance of existing models. This includes achieving the highest ranking of the "regulation on certification of fuel efficiency standard achieved construction machinery" that are being introduced progressively starting with larger machinery and came into force for the 8-ton class (0.28m3 bucket capacity) on October 1, 2016.

This article describes the features of the ViO80 and the technologies used.

1.はじめに

ヤンマー建機の油圧ショベルラインナップの中でも多くの市場実績を持つViOは、周囲の安全性を飛躍的に高めた後方超小旋回機構を業界に先駆けて採用したシリーズである。旋回中も履帯幅から上部体の後端がはみ出さないため狭所でも周囲への接触の危険性が少なく、道路工事や配管作業など多くの現場で使用されている。本稿で紹介するViO80はViOシリーズの中で最大の機械質量8tonで、ミニショベルと小型ショベルの中間の車格を持ち、小規模現場から比較的大きな現場まで幅広く活躍している。

今回のモデルチェンジに当たっては従来機の高い作業性能に加え、世の中の環境への関心の高まりに対応するとともに、日本国内で大型建機から順次施行されており8tonクラス(バケット容量0.28m3)でも2016年10月1日から制度が始まっている燃費基準達成建設機械認定制度の最高評価基準を達成し、持続可能な社会に貢献できる低環境負荷型の油圧ショベルをご提供すべく商品化を進めてきた。

同認定制度はバケット容量レンジで定められた燃費基準(表1)に対する達成率に応じ星3段階でランク付けされ、施工時の環境負荷低減に厳格な大手ゼネコン等の現場では最高評価である3つ星を取得した機械での施工が必須となる可能性がある。 本稿では商品の特徴と適用技術について紹介する。

表1 燃費基準達成建設機械認定制度(2020年燃費基準値以下が3つ星取得レベル)

表1 燃費基準達成建設機械認定制度(2020年燃費基準値以下が3つ星取得レベル)

2.商品概要

図1に新型ViO80の外観を示す。新型ViO80はご好評いただいている従来機の特徴である高い操作性を踏襲するとともに、新規に開発した油圧システムViPPS2iを採用することで大幅な燃費低減と高い作業性能の両立を実現した。これにより排出ガス削減による高い環境性能と高い経済性を有し、かつスピーディーな作業を行える商品となっている。

図1 外観
図1 外観

3.適用技術と本機の特徴

3.1.適用技術

(1)ロードセンシングシステムの採用
新油圧システムViPPS2iは従来機から大幅にシステムを変更し、最適な流量、圧力制御が可能な構成とした。
まず最適流量での駆動を実現するためにロードセンシングシステムを採用した。
従来機では基本的にポンプは最大流量を吐出するため流量のロスが大きかったのに対し、ロードセンシングシステムはコントロールバルブに内蔵された各アクチュエータ用スプールの入口側絞り(各レバーの操作量で開口面積が一義的に決まる)の前後差圧が一定になるようにポンプに差圧をフィードバックし、ポンプの流量制御を行うシステムであり、オペレータのレバー操作量に応じた流量制御、即ち最適な流量での運転が可能となった。
また、ロードセンシングシステムはアクチュエータの負荷が変わった場合でも速度変化がないため安定した作業を行うことができ、作業効率の向上にも貢献している。

図2 ロードセンシングシステム概要
図2 ロードセンシングシステム概要

(2)独立2ポンプの採用
また、最適な圧力制御を行うために2つのポンプによる駆動方式を採用した。2ポンプ化により、複合動作時の各アクチュエータの負荷圧の違いによって発生する圧力干渉(同一ポンプで複数のアクチュエータを同時に動かす場合、負荷圧の低いアクチュエータも負荷圧の高い方の圧力を元圧に駆動される現象)が低減した。

図3 圧力干渉概要
図3 圧力干渉概要

更に2つのポンプを独立させたことで、同時操作頻度の高いアクチュエータを別々のポンプで駆動するコントロールバルブのセクション配列や、従来機で採用されていた複数ポンプの合流を最小限とした回路との組み合わせにより、圧力と流量の両方をきめ細やかに制御できるようになった。この結果大幅な油圧ロス低減を実現した。
新油圧システムViPPS2iの概要図を図4に示す。

図4 新油圧システムViPPS2i概要
図4 新油圧システムViPPS2i概要

3.2.本機の特徴

(1)低燃費
ViPPS2iの特徴である最適な吐出油量制御により、エンジンに無駄な負荷を与えることなく必要最小限のエネルギでの運転が可能となった。この結果、燃費基準達成建設機械認定制度で定められた測定方法(JCMAS試験)において当社従来機比約20%もの燃費低減を実現し、最高評価である3つ星レベルを達成した。

図5 従来機との燃費比較(自社計測値)
図5 従来機との燃費比較(自社計測値)

(2)作業効率
新油圧システムViPPS2iの採用で2つの独立したポンプを最適に圧力、流量制御できるようになり、エネルギロスが大幅に低減した。これによりエンジンの力を最大限に使え、高い作業効率つまりスピーディーな作業を実現した。
また、同量の燃料あたりの作業量でも自社評価モードで従来機を約20%上回り、省エネ、環境性能と高い作業効率を両立した機械となっている。

図6 従来機との同量の燃料あたりの仕事量比較(自社計測値)
図6 従来機との同量の燃料あたりの仕事量比較(自社計測値)

4.おわりに

新型ViO80は環境負荷低減による社会への貢献と作業効率向上によるお客様の負担軽減を実現するために、大幅な低燃費化と高い作業性能の両立を目標に商品化を進めてきた。この目標を達成するために新規油圧システムの開発を行ってきたが、従来機のユーザ様にも違和感なく使っていただけるような操作性能の確立や、エンジンとのマッチング制御には多くの困難があった。燃費性能と作業性能を高次元で両立した新型ViO80は社会のニーズにマッチした商品であり、多くの方々にご愛顧いただけるものと確信している。

今後もお客様や社会から望まれる商品をタイムリーに市場投入できるように、商品開発を進めていきたい。

著者

ヤンマー建機株式会社 開発部

松山 博志

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