事故から身を守るための心得

カテゴリ:建機を安全に取り扱うために

感電の危険性を知ろう 100V、200Vの低圧でも油断は禁物です。ちょっとした手抜きや気の緩みが、ケガや死亡事故、ときには火災など、重大な事故につながります。電気の基礎知識を身につけて、正しく扱いましょう。

油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)で作業する時は、こんな時に要注意!

現場で事故が起きるのは、手抜きや気の緩みが最大の要因となります。以下のような時は十分に気をつけ、作業員同士でお互い声を掛け合い、注意し合うようにしましょう。

  • 工事用電気設備はどうせ仮設だ…と手を抜く
  • 工期が短く、電気器具の使用が過酷
  • 電気知識の少ない作業者が多い
  • 裸に近い姿で仕事する人が多い
  • 足元が水で濡れる現場が多い
  • 送電線近くの現場もある
  • 建設機械の大型化
  • 工事用電気の容量増大

●電気火傷の危険性

電気火傷には、2種類あります

  1. アーク(※1)やスパーク(※2)の高熱による皮膚の熱傷。金属が数千度になって溶けたり、ガス化して皮膚に付着し、中まで浸潤してしまいます。高温なので、熱湯より恐いといえます。
  2. 電流が人体を流れる時の内部組織の抵抗熱(ジュール熱)により蛋白質が凝固し皮膚、腱、骨関節などの組織壊死を起こします。
  • ※1アーク:気体放電の一種、両極間に弧状の火炎を生ずる
  • ※2スパーク:放電により生じる電気の火花のこと。光の電離作用によって生じるとされている。

●ショートの危険性

ショートとは、電位差のある2つ以上の点が非常に小さい抵抗値の導体で接続されることですが、ショートサーキット、短絡とも言います。 非常に大きな電流が流れ、電線は高熱で溶断し、絶縁被覆が燃え、発電機や変圧器の巻線が焼損し油入りのブレーカーが爆発したりして大事故となります。またショートと同時に激しいアークが発生し、それにより火傷や感電災害火災などを起こします。

●高圧線の電圧(V)と感電の距離の関係

高電圧の状態では、触れなくても放電(※3)によって感電する危険があり、電線の近くでクレーン等を使用するときは、安全のため送電線からある程度の距離をとらなければなりません。 この距離のことを離隔距離といい、下の表のように、電圧(ボルト)によって最低限必要な離隔距離が決められています。クレーン等の重機類に限らず、測量や足場組み等の長尺物を取り扱う作業においても、上記同様に離隔距離を確保しなければなりません。

  • ※3放電:強い電場のため、気体を通じ電流が流れること。
送電電圧(V) 最小隔離距離(m)
配電 100・200以下 2.0 以上
6600以下 2.0 以上
送電線 22000以下 3.0 以上
66000以下 4.0 以上
154000以下 5.0 以上
275000以下 7.0 以上

感電事故を防ぎましょう

●感電とその危険性

感電は、電撃とも言います。人体に電流が流れることで、その影響は感電した時の状況によって異なります。
チクチクっと感じる程度から、心臓マヒを起こすまでと症状は様々です。危険性を決める要因は、

  • 電流の大きさ
  • 通電経路(人体のどの部分を流れたか)
  • 通電時間
  • 電撃印加相(心臓脈動周期のどの位相で通電したか)

などです。
交流電気に感電すると、程度により下記のような症状を伴います。

1ミリアンペア… 少しチクチクする
5ミリアンペア… 相当に苦痛、ビリビリ
10~20ミリアンペア… 筋肉が硬直し支配力を失う
50ミリアンペア… 相当に危険、死ぬことがある

また、

  • 電圧には直接関係ありませんが、以上の条件が同じならば、高圧の方が危険です。
  • 低圧(といっても交流では600V以下)による感電は充電部分に直接触らなければ起きず、火傷もしません。
    高圧、特別高圧では、直接触れなくても、ある程度接近すると放電で感電し、アークによる火傷も伴います。
  • 感電で死亡するのは、電流が心臓を流れる場合が最も多いのです。電流が強くなると、心臓がケイレンして正しい脈を打てなくなるためです。

●電圧には下記の種類があります。

低圧 (直流)750V以下 (交流)600V以下
高圧 750~7000V 600~7000V
特別高圧 7000Vを超えるもの

電気の基礎知識

●電気の種類

建設機械には様々な電装品が装備されており、多くの電気が使われていますが電気の種類は大きく2種類に分けられます。乾電池やバッテリーは「直流(DC)」で、建設機械の動力になるものと、発電所から送られてくるコンセントの電気「交流(AC)」で、建設用の仮設電気設備も交流電流です。

DC(直流電流) AC(交流電流)
電流の流れる方向が変わらず
電流の大きさも一定。
電流の流れる方向や大きさが、一定の時間周期(サイクル)で変化する。
単相交流
(2相交流)
  • 一つの正弦波形で表せる交流。
  • 一般家庭に配電されているもの。
3相交流
  • 周波数(サイクル)が等しく位相が120°ずつずれた3種の起電力を同時に発生させたものです。
  • 日本では3本の電源を使う3相3線式
  • 単相交流より強力高性能の3相モーターを回せます。
    柱上変圧器まで3本線で配電されており、電力会社に依頼すれば、それから3相200Vが得られます。
  • 3相交流の配線から単相交流を得るには、3本の配線のうちどれでも2本を利用すればよい。

●周波数

静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりを境にして、東側は50Hz、西側は60Hzの電気が送られています。

交流の電気は、流れる方向が1秒間に何十回も変化しています。この流れの変わる回数を周波数(Hz:ヘルツ)といいます。日本国内には交流電源の周波数について、東日本の50Hzと西日本の60Hzの相違があります。
機械移動のときには注意が必要です。

電池とそのしくみ

電池は電解液という薬液の中に2種類の金属棒を入れると電気が起こり、化学反応により両方の金属棒の間に電位差が生じるために、棒の間を電線で結ぶと電流が流れます。この仕組みが電池の基本原理です。
乾電池、蓄電池、アルカリ電池など、電池には多くの種類がありますが、建設機械には「バッテリー」と呼ばれる鉛電池が使われています。

●バッテリーの基礎知識

1859年、フランスのガストン・ブランテの発明で、以来150年もの間使われている電池です。⊕⊖極共に鉛を使用しており、簡単な構造で瞬発力もあり、性能も安定しています。

●バッテリーの放電と充電

放電(電気を使う)のときも充電のときも、化学反応で発生し変化する物質は同じで、化学反応式の方向が逆になるだけです。そのため放電して、電気がなくなる毎に何回も充電して使うことができます。
放電すると水が発生するため希硫酸の濃度が淡くなり比重が下がる(充電すると上がる)ので電解液の比重を測れば、どれくらい充電されたのか、後どれくらい使えるのかなどがわかります。

●バッテリーを使う時はここに注意!

  1. 液が不足して、極板が露出したまま長時間使用すると、極板が傷んで蓄電量が少なくなります。
  2. 液を入れすぎると、充電時に液が吹き出し、車体の金属部分を腐食させます。(補水不要のメンテナンスフリータイプもあります。)
  3. 充電末期には水が電気分解して、水素と酸素を発生し引火しやすいので火気厳禁です。
  4. 急速充電はバッテリーの寿命を短くします。
  5. 過放電状態になったときは、専門店へ持参して充電してください。
  6. バッテリーは常に満電状態で使うのが最良です。
  7. 長時間放置すると自己放電してしまいます。
  8. 機械を使わないときは端子を外しておくか、バッテリー自体を外して冷暗所に保管してください。
  9. 感電防止のため、バッテリー端子の取り外しはマイナス側から行い、取付はプラス側から行います。

●過充電と過放電はどちらも要注意!

過充電
充電をしすぎると、硫酸がどんどんできて、液温が激しく上昇し、活性物質を極板から脱落させてしまうおそれがあります。回復は難しいので、専門店へ相談してください。

過放電
放電終止電圧(単電池当りの端子電圧が1.75V。)以下まで放電することを過放電といいます。硫酸鉛ができすぎて、極板の活性物質の面をふさいでしまい、極板を傷めてしまいます。