ヤンマーテクニカルレビュー

ViO45/55-6型 製品技術紹介

左:キャビン仕様 右:キャノピー仕様

当社は1993年に「後方超小旋回機」のViOを業界に先駆けて商品化し市場へ投入した。2000年には広いオペレータ空間を確保し快適な作業が行える「グローバルViO」2005年には信頼性・快適性・安全性を徹底追及した「ユニバーサルViO」とフルモデルチェンジを行い、快適なオペレータ空間、優れた作業能力、高い耐久性を持った製品を市場へ投入した。また、近年グローバル化により製品の使われ方も多様化しており、多種多様な市場要望も高まってきている。
この様な背景の中、市場の声を反映させ、お客様に満足して頂けるような製品をいかに作り上げていくかが小型建機業界のシェアを伸ばすポイントとなっている。そこで我々は企画段階に市場調査を徹底的に行ない、2013年、お客様の声を反映させた商品「ViO45/55-6型」を商品化した。これまでの「ユニバーサルViO」の「信頼性」・「快適性」・「安全性」をブラッシュアップさせたものに加えて、新しく「経済性」・「整備性」を加えた5つの特長を持ったViO45/55-6型を以下に紹介する。

特長紹介

1.経済性(燃費向上・仕事量アップ)

ヤンマー電子制御エンジンと油圧ポンプの最適な出力マッチングを行い、油圧配管径・及び継手の形状を見直すことで、油圧の圧力損失を低減。従来機に対し、約30%の燃費低減を実現した(当社測定法による)。ECOモードを併用することで更に10%の燃費低減も可能である。ECOモードはエンジン回転数を定格回転数から300min-1下げて使用するモードで、作業全般で燃費を低減する。また、作業待機中はオートデセルモードにて燃料消費量を低減する事も出来る。オートデセルモードは作業機レバーを止めて、4秒後にエンジン回転がアイドリング回転まで下がるモードで、待機時の燃費を低減することが出来る。この2つの「ECOモード」、「オートデセルモード」は全仕様に標準装備されており、お客様の作業形態・優先度に合わせて各々モード切替出来るようになっている。

仕事量に関しては、作業機部位のブーム・アーム・バケットの複合動作スピードの最適なマッチングを行い、掘削サイクルタイムを向上させた結果、従来機に対し燃費低減しながらも仕事量を約10%増加させることに成功した。

2. 整備性

エンジン廻りのメンテナンスをしやすくするために、リアボンネット・右ボンネットは工具レスで開閉出来る構造とし、日常点検やメンテナンスが容易なワンタッチフルオープンボンネット構造を採用。バッテリーの交換は右ボンネットとダクト下カバーをオープンすれば簡単に行なえる。また、本機右側の樹脂カバーをオープンすると、燃料と作動油の給油、エアクリーナーエレメント交換を簡単に行うことが出来る。
ラジエータ・オイルクーラーの冷却方式は従来機同様、吐き出し方式を採用。メンテナンスしやすくするために、フィンはウェーブタイプを採用した。従来機に比べ、ゴミ詰まりが少なく、清掃も簡単である。

ボンネット開閉構造
本機右側

エンジンヘッドのメンテナンスは上方からのアクセスをしやすくするため、座席シートを開閉構造とした。またシートマウント前面を取り外しすれば、ジェネレータやスタータにも簡単にアクセスが可能である。

座席シート開閉構造
エンジン前側

3.快適性

どんな人も無理なく、負担なく機械を操作できることを目的としたユニバーサルデザイン(以下UD)を採用。企画段階で、従来機を用いて建設機械オペレータ以外の様々なお客様からも評価していただき、UD5原則に基づき、随所に使いやすさと快適さを考えた設計を盛り込み、更に快適性を向上させた。

ここで採用例をいくつか紹介する。ボンネット、キャビンドアハンドルは、左右どちらからでも開閉しやすいハンドルを採用。

横開閉構造としたことで、身長の高低を問わず、誰でも簡単に開閉することが出来るようにした。またキャビン乗降時、どの位置からも握りやすいアシストバーを採用し、乗降しやすくした。足元への配慮として、乗降しやすいように段差をなくし、広々した空間を確保。運転席廻りでは、様々な情報を把握できる大型液晶モニターと各種スイッチ類を運転席右側に集中配置させ、オペレータの負担や疲れを低減させた。

キャビン
フラットフロア

リストコントロールレバーやブレードコントロールレバーにおいては、ストロークや操作荷重を見直し、フィーリングを徹底的に検証し滑らかな操作性による快適性を実現した。

運転席右側
3.3インチ大型液晶モニター

視認性にすぐれた3.3インチ大型液晶モニターを標準装備。時計、アワメータ、燃料メータ、水温メータ、各種異常表示、メンテナンスモード等を表示することが出来る。また稼働管理は、毎月の稼働状況や一日の稼働時間など、詳細な稼動状況を管理することができ、最大3ヶ月間の稼働状況を表示することが可能である。

GPS、通信端末を搭載している建設機械の位置情報を、通信システムによって管理出来るスマートアシストリモートをオプションで設定した。遠隔監視によってお客様の建設機械を見守り、インターネットを通じて、メンテナンス時期やマシンのトラブルをすばやく把握し、常に適切なサービス・サポートをお客様へ提供できるシステムを活用して頂くことで、より安全に快適な作業を行える。

4.信頼性

製品のグローバル化に伴い、どのような地域でも適応出来る様、足廻り部品を強化。
解析や実機検証を行い、アイドラ・スプロケット・トラックローラの耐摩耗性・部品寿命を従来機に対し、各々10%以上向上させた。
油圧部品の高寿命化、エンジンオーバーヒート低減を目標とし、オイルクーラー・ラジエータの大型化を行い、従来機に対し約15%以上の冷却性能アップを行った。
また、コンポーネント部品のレイアウト変更を行うことで、効率的に本機前後バランスを向上させ、吊り能力をアップさせた。

5.安全性

軽量で、2本支柱でありながら、TOPS・ヘッドガードに対応したキャノピーを採用。
また、キャビン・4柱キャノピーはROPS・FOPSに対応し、横転や落下物からオペレータを保護する。
環境への対応は、最も厳しいと言われるアメリカの排ガス規制EPA4次規制に対応したヤンマー製DPF付Tier4エンジンをアメリカ向けと韓国向けに搭載。国内仕様においても2015年秋には、同エンジンを搭載して販売する予定である。
従来機で好評であったシリンダーガードは、今シリーズでも継承し全仕様に標準装備。また、オプション設定のブーム高さ制限・アーム巻込み制限を新たに設定し、安全性を高めた。

  • ブーム高さ制限:架線がある現場や上方に高さに制限がある場合等、オペレータが任意に設定した高さでブームを止めたい高さに設定することが出来る機構。
  • アーム巻込制限:ブレーカー装着時などブームシリンダーなどへの接触を防止できる機構。

製品特長の評価検証

2013年秋に新商品を市場投入してから1年後、設計者自ら国内外の市場調査を実施し、直接お客様から聞取りを行った。商品開発するにあたり設定した商品コンセプトが本当にお客様に受け入れられているか、市場要望からずれた設定をしていなかったかを確認した結果、製品全体での評価は高く、特に整備性・信頼性の評価は高かった。これにより、商品コンセプトは十分に市場で受け入れられたと判断した。しかしお客様によっては、厳しいご意見・ご要望もあり、まだまだ製品として改善すべきポイントがあるのも事実である。このように新たに市場調査で収集できたVOCは、次期モデルチェンジでの貴重な情報として有効活用する。

おわりに

今回紹介した特長は一部であり、全て説明できてはいないが、本製品は企画時と量産後に設計者自ら市場調査を行い、お客様が要望される内容に優先度を設定し、その機能を実際に織込めた製品である。非常に難易度の高い商品開発であったが、社内の様々な関連部門の協力もあり、当初の予定通りに量産・拡販に繋げることが出来た。現状に満足せず、今後もヤンマーとして更にお客様に喜んでいただける製品を開発し提供していきたいと考えている。

著者

ヤンマー建機株式会社 開発部

三好 正剛

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