2022.03.30

多様な人材が活躍する ヤンマーシンビオシス社員たちの働く想いとは

左より 白藤さん、井谷さん、有本さん、平野さん、太田さん

ヤンマーでは、国籍・文化・年齢・性別・キャリアなど、さまざまなバックグラウンドをもつ人材を受け入れ、尊重し、その能力を最大限発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進。一人ひとりの能力や個性、価値観が活かされる組織を目指し、社員全員が“働きがいと誇り”を持てる企業づくりに取り組んでいます。

ヤンマーグループのひとつである、ヤンマーシンビオシス株式会社は、2014年4月に特例子会社※1として設立し、障がいのある社員が多く在籍しています。2019年9月には、ヤンマーの取り組みが大阪府に認められ、「大阪府障がい者サポートカンパニー優良企業※2」に登録されました。
また2022年3月9日、経済産業省より健康経営優良法人(中小規模法人部門)に認定、同年3月23日、大阪府より大阪府健康づくりアワード優秀賞を受賞しました。

今回のY mediaでは、社員全員がいきいきと働ける工夫について、ヤンマーシンビオシスで働く社員の皆さんに話を伺いました。

※1「特例子会社」とは、国から特別に認められた制度であり、障がい者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立することにより、グループを一つの企業とみなして、雇用率を算定することができる制度。

※2 2019年9月、障がい者雇用率が法定基準を満たした上で、障がい者の職場実習の積極的な受け入れ、障がい者の就労施設への発注実績の規模、障がい者雇用への取り組み内容など複数の項目により審査される「大阪府障がい者サポートカンパニー優良企業」に登録。

<取材者プロフィール>

白藤 万理子(シラフジ マリコ)
ヤンマーシンビオシス株式会社 代表取締役社長。2000年ヤンマーに入社。アグリ事業とエネルギーシステム事業において経理を19年間担当し、本社の人事部門へ。2020年4月、ヤンマーグループの特例子会社であるヤンマーシンビオシスの企画管理部長として赴任、同年6月社長に就任。

太田 光典(オオタ アキノリ)
ヤンマーシンビオシス株式会社 滋賀事業部長。2007年にヤンマーに入社し、本社総務部に配属。2013年、特例子会社設立プロジェクトに参画。2014年、ヤンマーシンビオシス株式会社に出向し、大阪事業部長。2020年、滋賀事業部長に就任。ヤンマーシンビオシス設立メンバーの一人で、持ち前の明るさで皆を引っ張る。

平野 智久(ヒラノ トモヒサ
ヤンマーシンビオシス株式会社 大阪事業部梅田ゲートタワー(以下、UGT)・YANMAR FLYING-Y BUILDING(以下、FYB)センター長。2017年入社。2018年、コンシェルジュグループ チームリーダー。大阪事業部UGTセンター長を経て、2020年大阪事業部UGTとFYBセンター長兼務。「大阪事業部のお父さん」と、社員からの信頼が厚い。

有本 規人(アリモト ノリヒト)
ヤンマーシンビオシス株式会社 大阪事業部ワークコンシェルジュグループ。2014年入社、オフィスサポートグループ 印刷チーム。2020年大阪事業部ワークコンシェルジュグループに配属。障がいのある立場と、会社設立時からの経験を活かし、後輩からの相談を多く受けている。「大阪事業部のお兄さん」的な役割を担う。

井谷 歩(イタニ アユミ)
ヤンマーシンビオシス株式会社 健康・サポート室。大学のリハビリテーション学部作業療法学科を卒業後、2017年入社、企画管理部に配属。2020年、健康・サポート室の設置と共に同室に配属。専門知識だけでなく、いろいろな立場の人の話を「聞く力」と、その視点の違いを俯瞰的に「見る力」で、社員が心身ともに健康に働ける環境を支える。「なんでも相談してしまう」と、社員たちから頼りにされている。

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

共生社会の実現を目指して

―― ヤンマーシンビオシスはどのような会社ですか

白藤ヤンマーシンビオシスは、ヤンマーグループで障がいのある社員が活躍する職場を“より積極的に”創るために設立されました。2014年の設立当初は、30名規模だったのですが、8年経った今は150名規模の会社に成長しました。

ヤンマーシンビオシスでは、農業に関わる「農業ソリューション事業」、小形ディーゼルエンジンの生産に関わる「製造サポート事業」、ヤンマーグループの社員が働きやすい環境をサポートする「オフィスサポート事業」の3つの事業を展開しています。

社名のシンビオシスは「共生」という意味を表します。最終的には真の「共生社会」を目指すこと。私たちの事業活動を通じて、ヤンマーグループ全体に「ダイバーシティ&インクルージョンの風土を広めていきたい」と考えています。

太田滋賀事業部には、長浜センターと栗東センターの2つの拠点があります。長浜市にはヤンマーのディーゼルエンジンをはじめとするパワーリソースの生産工場があり、長浜センターは製造サポート事業を行なっています。国内外から納品される部品の一部について、梱包されている木箱や段ボールを開封し、検品して、工場で使いやすい荷姿に変更する仕事をしています。ほかにも工場や寮などの清掃もしています。

栗東センターでは、“ヤンマーらしさ”を出すために、農業ソリューション事業をしています。季節の野菜や花苗、イチゴの栽培、冬のシイタケ・夏のキクラゲなど、さまざまな農作物を育てています。

検品作業の様子
検品作業の様子

平野オフィスサポート事業を行っている大阪事業部には、センターが大阪に2拠点、兵庫に1拠点あります。名刺やパンフレットの印刷、研修資料の製本、設計図面の印刷や電子化、社員が使用するパソコンのセットアップなどを行う「ワークコンシェルジュ」。本社に届く郵便物や荷物などを受け取り、仕分け、各部署へお届けする「メールサービス」。グループ各社の施設清掃を行う「オフィスクリーニング」の事業を行っています。

大阪事業部で働く社員たち
大阪事業部で働く社員たち

白藤ヤンマーシンビオシスは株式会社ですので、様々な事業活動を通じてお客様に喜んでいただける品質の仕事を提供するとともに、「ヤンマーグループの生産性向上に大きく貢献できる会社でありたい」と思っています。

多様な人材が活躍できる、働き方の工夫

―― 太田さん、平野さんは、事業部の責任者としてどんな工夫をされていますか

太田製造サポートの現場では、障がいのある社員が8名活躍しています。作業者の方は、自分の1日のスケジュールや、一つの作業を終えた後、「自分がすること」が分からないと不安になることがあるので、スケジュールボードを用いて、一目で分かるようにしています。朝礼では、個人ごとに作業項目や作業時間、目標の作業量などを記した「作業計画表」を説明します。これは「障がいのある方が仕事しやすい方法は、誰にとっても仕事がしやすい」というユニバーサルデザインの考え方に基づいています。

左:作業計画表 右:1日の業務流れを朝礼で確認

平野毎日のスケジュール管理であったり、仕事を始める前の朝礼で「誰が何をする」を確認したり、「仕事の見える化」を心がけています。また、終礼前に皆さんに日報を書いてもらっています。日報には「あれやりました、これやりました」だけではなく、体調がすぐれない場合は「この時、体調がすぐれなかった」など、悩みごとがあれば、それも含めて毎日書いてもらっています。日報は貴重な情報であり、円滑なコミュニケーションや職場環境の改善に役立てています。

また、私たちが大事にしていることは、私たちメンバーの誰かが相談を受けた時、関係する社員で情報を共有すること。社長の白藤、滋賀の太田、現場の有本、健康・サポート室の井谷など、関わる社員がそれぞれ意見を出し合い、相談ごとへの解決に取り組んでいます。障がいのある方の雇用は、「当事者と企業側の双方が話をすることで、得意な事、苦手な事を理解し合い、主体的に働ける環境を整えていく(ノーマライゼーション)」ことが大切だと思っています。

日報のイメージ

―― 皆さんが仕事で大切にしていることは何ですか

有本普段は車椅子で生活をしています。そんな私が社員の先頭に立っていろいろとチャレンジすることで、障がいのある社員だけでなく、社員全員に、ヤンマーシンビオシスを好きになってもらいたいと思っています。就職を検討している方には、「シンビオシスで働きたい」と思ってもらえる会社にしていきたいですね。

障がいといってもいろいろありますし、同じ障がいであっても、同じ人はいません。まずは人、個人をしっかり見ること。人にはそれぞれ個性があり、得意不得意がある。そこをしっかりと見極めた上で、「その人の能力が最大限に活かせるのはどこか?」を大切にしています。

太田有本さんはヤンマーシンビオシス設立時からのメンバー。豊富な経験によるアドバイスで後輩社員からの信頼も厚いですし、自らチャレンジする「背中を見せる」姿勢もかっこいいです。

後輩の業務をサポートする有本さん
後輩の業務をサポートする有本さん

井谷私は、人の“視点”を大切にしています。福祉医療を勉強してきた自分の視点だけでなく、会社、障がいのある社員本人、社員を支える福祉関係者(支援者)、主治医など視点が変わると意見も変わってきます。各々の視点を俯瞰的に捉えるように意識しています。
私は、ヤンマーシンビオシスで働く社員が「仕事が楽しい、ここで働いて良かった!」と自慢できる会社にしたい、と思っています。

太田社員同士のコミュニケーションも大切ですね。この前、井谷さんが所属する健康・サポート室が企画してくれた「ウォーキング健康イベント」が大好評でした。歩数を競うチーム戦を行なったのですが、同じチーム内で「何歩歩いた?」という話になったり、「月間ランキング1位になりたい」という人が出てきたり、みんなで大いに盛り上がりました。

平野大阪事業部では、コロナ禍で活動が終了していた委員会活動を復活させました。美化委員会やスポーツ推進、改善活動委員会など、社員みんなでワイワイと楽しみながら参加してくれました。

 

―― 仕事で「やりがいを感じた」エピソードはありますか

有本ここにいるメンバーも関わった、ある社員のエピソードですが、入社当時はできることが少ない、失敗もするし、失敗したことを言えない。それを注意すると、泣いてしまって、ふてくされてしまうという状況でした。

その社員のサポートをどうするか。井谷さんや上司の平野さんと相談しながら、「この方法はダメだった」「次はこうやってみよう」「これは得意だから、任せていこう」と、少しずつ任せていくポイントを広げていきました。その社員も我慢強くチャレンジしてくれたこともあって、一つの業務を最初から最後まで自分でできるようになりました。現在は、新しい人が入ってきたら、仕事を教えるようになるまで成長してくれました。

井谷私は、その社員の話した言葉が心に残っています。私が「お給料で何か買ったの?」と質問したら、「新しい仕事の靴を買いました」という返事。その社員が仕事に履いてきた靴はとても素敵な靴でした。きっと、自分で気に入ったものを選んだのだと思います。その時私は「仕事をする意味って、働いたお給料で自分の生活が豊かになることだ」と気づかされました。

障がいのある人たちが、これからも働き続けて生活が続けられるようにサポートすること。それが私の仕事なんだと思いました。

ヤンマーシンビオシスで働く想い

太田ヤンマーシンビオシスができる前のヤンマーは、思うように障がい者雇用が進んでいませんでした。当時「このままでは、障がい者雇用を伸ばしていくことができない」と、危機感を持った人事部の発案によって「特例子会社プロジェクト」が始動。プロジェクトは、ヤンマーグループの中から「障がい者雇用を強化していきたい」メンバーによって進められました。私も初期メンバーの一人でした。

プロジェクトの開始は2013年8月で、ヤンマーシンビオシスの設立は2014年4月。わずか200日ほどで会社ができたのは、私たちメンバーの想いもありますが、私たちを応援し、支えてくれた関係会社・部署の皆さんの想いのおかげだと思います。ヤンマーシンビオシスは、ヤンマーの人たちに支えられている会社だと思います。

有本私は太田さんと縁があって、「私の経験を活かして欲しい」という彼の誘いでヤンマーシンビオシスに転職しました。前職とは全く違う仕事だったのですが、いろいろとチャレンジできることが楽しいですね。今は、次のステップとして管理職を目指しています。

平野私はヤンマーシンビオシスの社員と知り合いだったのですが、その上司の太田さんとお話する機会があり、太田さんの取り組みなどを聞いてヤンマーシンビオシスに転職しました。前職では、「物を売る」とか、「売り上げを立てる」「開発する」とか、「利益を上げる」とかがメインでした。この会社は、とにかく「人が主役」。みんなが色んなことに取り組めるようになるのがすごく楽しくて、今は飽きることなく、まだまだやりたいことがありますね。

井谷自分の専門知識を活かしたくて、新卒で入社しました。現在は、専門職を集めた「健康・サポート室」で、障がいのある社員の定着支援や研修、健康経営のサポートをしています。仕事を続けられる気持ちであったり、働き続けられるコンディションであったり、仕事でチャレンジしていける土台づくりを社員と一緒に考えていきたいです。

白藤:平野さんと同じく、私もヤンマーシンビオシスに来て初めて、障がいのある社員が活躍する現場での仕事を経験しました。様々な障がいについて私なりに勉強し理解していく中で、障がいの有無に関わらず、お互いの違いを認め、単純に理解し合うだけなんだと気が付きました。そして、これこそがダイバーシティ&インクルージョンだと思いました。私が得たヤンマーシンビオシスでの体験を、ヤンマーグループ全社に広げていきたいです。

共生社会の実現へ、いっしょに歩もう

太田私は「違いを認める」ことを大切にしています。例えば、自分と違う意見の人と出会った時に、相手を否定せずにじっくり話を聞いてみてください。そうしたらきっと、自分で気づけないことに気づかせてくれる時があります。「他者は自分と違うことを理解して、お互いに尊重し合える社会や会社にしたい」という人と、私は一緒に働きたい。

それから栗東センターの農業ソリューション事業。この地域は農家さんが減り続けています。現在の営農者の平均年齢は75歳で、5年後には80歳。いわゆる「高齢化による担い手不足」が大きな問題となっています。私は「障がいのある方が、新しい農業の担い手として活躍できるのではないか」と考えています。今でいう農福連携事業なのですが、ヤンマーシンビオシスの農業ソリューション事業をもっともっと大きくするのが私の夢。「農福連携の会社といえば、ヤンマーシンビオシス」と言われるような会社にしたいです。

平野私は「自分の意見を持った上で、相手と同じ目線に立って考えること」を大切にしています。周囲を俯瞰で見ようとする人、相手を尊重できる人と働きたい。お互いに理解し、尊重し合うことで「みんなのことを思いやり、多様な人が共生できる会社になる」と思っています。

それから障がいのある社員も、どんどん活躍して管理職を目指して欲しい。そういった社員たちが管理職になって「自分のやりたいことができる会社」にしていきたいです。

白藤働いているみんなを見ていて「大事だな」と思うことは、まずは「自分自身を受け入れる」こと。障がいの有無に関わらず、「自分を理解して、自分を受け入れる」ことがスタート地点。その後に「相手のことを理解して、相手のことを受け入れる」。そこで初めて「お互いのことがわかった」ということだと思います。

人は皆、それぞれに得意不得意があります。得意なことを上手に組み合わせ、「チームとしてヤンマーグループに貢献しているんだ」と、みんなが自信を持って思えるような会社にしたい。「ヤンマーシンビオシスの社員たちが、自分のこと、仕事のこと、自分の会社のことを自信を持って語ってくれる会社」にしたいと思います。

 

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