2023.02.07

性別や国籍、文化・・・「違い」を超えて働きやすい環境へ。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するヤンマーの役員が今考えていること ~3月8日の国際女性デーに向けて~

ヤンマーでは、グローバル化戦略を進める上で「国籍・性別・年齢を問わず、世界で通用するプロフェッショナルな人材の確保」を目的とするダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。

性別、国籍、ライフスタイル、文化などのさまざまな違いを受け入れ、尊重し、一人ひとりの能力を最大限活用することで、企業価値を向上させるとともに、グループ全社員が“働きがいと誇り”を持てる企業となることを目指しています。

そこで今回は、ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役、ヤンマー建機株式会社 代表取締役社長、Yanmar Energy System International  CEOの3名に、「ヤンマーのダイバーシティ&インクルージョン推進における今とこれから」についてインタビューしました。

<取材者プロフィール>

山本 哲也
ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役

Giuliano Parodi
ヤンマー建機株式会社 代表取締役社長/ヤンマーホールディングス株式会社 執行役員

Peter Aarsen
Yanmar Energy System International CEO/ヤンマーホールディングス株式会社 執行役員

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

ヤンマーにとって「ダイバーシティ&インクルージョン」とは

ロゴ

――まず、「ダイバーシティ&インクルージョン」をどのように定義されていますか?

Parodi:ダイバーシティ&インクルージョンとは、あらゆる人にとって居場所のある組織であること。目に見える、見えないに関わらず、私たちのそれぞれの違いが認識され、受け入れなければなりません。最も成功している企業は多様性があるだけでなく、人々が力を与えられ、安心して自分の考えを発言できる人材を育成しています

Aarsen:包括的な文化を醸成するには、トップマネジメントの変化が大切です。メッセージを発信するだけでなく、組織のトップ自らその価値を理解し、信じて行動する必要があります。

山本:私にとってダイバーシティ&インクルージョンとは、オープンマインドでいること、オープンに議論すること。誰もが安心して意見を言える、そういう風土を醸成することが大切であり、そのような文化を作りたいと思っています。

ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役 山本 哲也
ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役 山本 哲也

――ヤンマーにおけるダイバーシティ&インクルージョンの現在地をどのように感じていますか?

Parodi:ヤンマーは、今まさにグローバル化を推進している最中です。社会の急速な変化に戸惑う部分もありますが、それでも自ら変化・進化し、新しいアプローチを受け入れようという意気込みを感じます。

例えば、マネジメント職としてのイタリア人の私の存在は、新しい文化へのオープンさや国際的なダイバーシティ&インクルージョンを体現する好例です。このような試みは、ときに受け入れがたいものかもしれませんが、多様性がもたらすプラス面はリスクをはるかに上回ります。

Aarsen:そうですね。私が現職にアサインされたとき、ヤンマーは経営陣に外国人を受け入れた最初の日本企業の一社でした。また、2020年にはヤンマーとして初めて女性役員を登用したことにも組織として変化しようという意思を感じましたね。さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて、社内で使われる言語についても、英語利用を社内で推進してきました。この取り組みは、経営陣はもちろんのこと一般社員にまで広がっています。

また、ヤンマーは開発志向の強いものづくりの会社であり、女性が入りづらい環境であるかもしれません。能力のある女性のエンジニアにとっても、魅力的な会社である必要がある。そして、性別や年齢に関係なく、仕事の質を大切にする文化も必要です。

Yanmar Energy System International CEO Peter Aarsen
Yanmar Energy System International CEO Peter Aarsen

山本:ヤンマーは古くから、どうグローバルに発展していくか、自らに問い続けてきました。2013年にヤンマーホールディングス株式会社を立ち上げたのもそのためです。そうした結果、かつては30%に過ぎなかった海外売上比率も、現在では50%を超えるまでに高まっています。

大切にしているのは、グローバルに考えつつも、ローカルに行動すること。”Think Globally, Act Locally” です。グローバルを意識しつつも、実際には個々のマーケットや地域の特徴に合わせてアクションをしていく必要があります。

「女性の活躍」へのアプローチと取り組み

――SDGsの「Goal5」でも言及されている「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」について、ご自身の考えをお聞かせください。

Parodi : 先述のように、ヤンマーは開発志向の強いものづくりの会社ですが、この分野では、携わる人のウエイトが男女で開きがある現状があります。 しかし、男女間の不平等を変えられない事実として受け入れるのではなく、ものづくりの魅力にもっと多くの人が気づけるような活動をしてくべきです。女性にとっても魅力的なキャリアであると考えています。

ものづくりの分野で働くことは、女性にとっても多くのメリットをもたらします。私たちは業界の先駆者として、その魅力を伝えていかなければなりません。 その方法のひとつとして、この分野において、大学で工学を選択するよう女性に奨励することも必要です。女性や家庭に適した労働環境に変えていくことも大切ですね。ジェンダーバランスが取れれば、ビジネスにも、全社員の幸福度にも、大きなプラスになるはずです。

ヤンマー建機株式会社 社長 Giuliano Parodi
ヤンマー建機株式会社 社長 Giuliano Parodi

Aarsen:まさに、性別に限らず、すべての社員のための働く環境の質、ワーク・ライフバランスの確保が大切です。ワーク・ライフバランスが改善されれば、女性の社会進出も加速するでしょう。ヤンマーではコロナ禍を経て、在宅勤務がより一層浸透しました。今後、すべての社員にとってより良い機会が増えると思っています。

山本:女性にとっても働きやすい環境を作ることの重要性は言うまでもありません。一方で、Parodiも言うように、最も大切なのは数値的な目標ではなく、社員のエンゲージメントを高めることです。

エンゲージメントとは、社員一人ひとりが居心地よく働けること。居心地がよくないと感じる社員がいるのであれば、それがなぜなのかをみんなで考え、対話する、そのプロセスを全員で共有することこそが大切だと思っています。

「女性の活躍」へのアプローチと取り組み

――3月8日は「国際女性デー」です。社内の女性活躍(エンパワーメント)についての考えをお聞かせください。

Parodi:ヤンマーは、女性のエンパワーメントが会社の発展に欠かせないと考えています。現状では、子育てと両立しながら働く女性も多いという事実を認識したうえで、彼女たちに能力を最大限に発揮してもらうために、企業として柔軟に 対応する必要があります。

ヤンマーの建機事業部門には、ワーク・ライフバランスに関する有志の集まりがあり、年齢や文化、性別、社内での肩書きを超えた、さまざまな社員によるオープンな議論の場を設けています。そうすることで、分野を横断して社員全員の声に耳を傾け、より良いワーク・ライフバランスの実現に向けて組織を発展させていくことができます。

その場では、「女性のエンパワーメント」といったテーマについても議論する予定です。この有志の集まりが、私たちが普段は口にしないような多くのテーマを提起し、ヤンマーの変化と進歩のための重要な存在として機能することを期待しています。

社会は絶えず変化しています。今私たちが議論していること自体も、いずれは時代遅れなものとなるでしょう。だからこそ、部門の垣根を超えて、アイデアを交換し続けることが大切だと思っています。

Aarsen:あらためて、全社員にとってより良いワーク・ライフバランスを実現していきたいですね。そして、そのためにさらに必要なオープンかつインクルーシブな文化というものをより広めていきたいです。

国際女性デーということで、ワーク・ライフバランスなど、女性にとって重要な課題やサポートについて、社員のみなさんにより積極的に考えてもらえたらと思います。

「女性の活躍」へのアプローチと取り組み

山本:やはり、女性はもちろんですが、性別関係なく、「チャレンジしたい」という人に選ばれる会社になりたいですね。

「女性の活躍」へのアプローチと取り組み

ダイバーシティ&インクルージョン実現の鍵「次の100年を見据えて」

――今後、さらにダイバーシティ&インクルージョンをどのように進化させていこうと考えていますか?

Parodi : ダイバーシティ&インクルージョンの目標を達成するためには、仕事のやり方を変え、旧来の伝統的な考え方に対して挑戦することが必要です。そして、望ましい変化を起こすには、実践的かつ体系的なサポートが求められます。

例えば、ダイバーシティとインクルージョンの必要性を、研修を通じて社員がより認識することも求められるでしょう。それによって、私たちは意識的な偏見だけでなく、無意識の思い込みや偏見をも認識し、可能な限り多様であることの利点を、よりオープンに受け止めることができるようになります。性別、年齢、経歴、信条などに関係なく、だれもが自分の意見を表明でき、評価されていると感じられるような文化を育んでいきたいと考えています。

Aarsen:ダイバーシティはもはや単なるイデオロギーではなく、企業にとって不可欠なものです。現在、ヤンマーのビジネスの基盤の多くは日本にありますが、今後の成長を考えたとき、性別や国籍に関わらず様々な才能を獲得していく必要があります。そして、日本でダイバーシティ&インクルージョンを受け入れる雰囲気を積極的にプロモーションしていく必要があるでしょう。

山本:そのために最も大事なのは、ヤンマーのビジョンを社員一人ひとりが理解し、日々の職務のなかで実践すること。いかなる大きな方針も、それを吸収し、日々の活動で実行する社員にかかっています。そういう意味で、コミュニケーションとトレーニングはとても大切ですね。

 

――最後に、「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現に向けた夢をお聞かせください。

Parodi : ヤンマーは、真にグローバルな企業になれる。欧米の企業が日本に進出するのは難しいことですが、その逆は可能だと考えます。このチャンスを逃さないようにしたいです。

Aarsen:ヤンマーは今後よりグローバルな企業になっていくでしょう。よりオープンに、よりインクルーシブになるための努力が、組織全体に浸透することが私の夢です。そして、若い世代を応援することも大切ですね。若い才能がマネジメントにいれば、組織の変化も加速するはずです。

山本:そうですね。今後、よりダイバーシティ&インクルージョンを実現していくうえで、さらなる働き方の改革を進めていきます。

四半期単位の短期的な視野ではなく、より長期的な視野を持って経営を行い、「次の100年」を見据えてこれからも改革を続けていきます。

ダイバーシティ実現の鍵「次の100年を見据えて」

[取材] 杉田真理子 [編集] 岡徳之 [撮影] 伊藤圭

 

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