営農情報

2014年1月発行「トンボプラス3号」より転載

適期作業のための時間短縮術

さらなる規模拡大、高品質化を目指す農業経営にとって、適期作業は作物の収量・品質を大きく左右する重要な課題です。
言い換えれば「時間との戦い」といっても過言ではありません。
特に降雨の多い日本においては、限られた時間を有効に使って天候のリスクを回避するために、これまで数々の省力化機械・技術が進歩してきました。

今、不順な天候や労働人口の減少などにより、以前にも増して時間の有効活用が求められています。そこで、ここでは規模拡大、品質向上を実現するための時短作業についてご紹介します。

時間の短縮実現のための3つのポイント

Point1. 「複合作業」で適期に作業を行い、天候リスク回避と規模拡大を実現

1台のトラクターに複数の作業機を装着し、1工程で効率よく作業を実施。限られた時間の中で適期に作業を終え、安定した生産を行うことができます。

Point2. 田植えと直播の組み合わせで、「農繁期の作業を分散」し、規模拡大を実現

農繁期に集中する作業を分散し、限られた期間内により多くの面積をこなすことで、規模拡大を実現します。

Point3. 「高速作業」で労働力不足を解消し、人件費や燃費の低減を実現

スピーディに作業を行うことで、労働力不足を解消。人件費、燃費の低減も実現することができます。

Point1. 「複合作業」で適期に作業を行い、天候リスク回避と規模拡大を実現

「作業のコンビネーション」で適期作業を実現

複数工程を同時に行い、作業時間を短縮することで適期に作業を終え、天候によるリスクを低減します。また、ほ場での作業回数が減り、トラクターの大型化により問題となっている土の踏み固めを低減することができます。

複合作業の組み合わせ例

フロント:施肥 / リヤ:耕うん+うね立て+播種+マルチ
リヤ:ロータリー+GPS車速連動施肥機+マルチ
リヤ:心土破砕、砕土、整地

フロント:粗砕土、鎮圧

「耕うん同時施肥」で作業時間を大幅に短縮。

1工程で播種に最適な土壌条件に整え、作業時間を大幅に短縮することができます。
また、GPS搭載機は、車速を気にすることなく精度の高い散布が行え、散布ムラやロスを低減。作業時間の短縮と減肥を実現することができます。

GPSフロント施肥機
GPSリヤ薬剤散布機

時短ポイント〈化学肥料と石灰資材の同時散布技術〉

石灰資材と化学肥料の同時施用は有毒ガス発生のおそれがあり、通常は石灰散布後7~10日放置し、肥料散布を行います。しかし、散布する石灰資材・肥料の選択、施用方法を工夫すれば、すべての工程を同時に行うことができます。

化学肥料と石灰の同時施用の条件

  • 効果のゆるやかなカキ殻やコーティング肥料、炭酸カルシウムを使用する
  • 局所施肥の採用などにより、施用量を抑える
施用効果のイメージ

「うね立て同時施肥」による局所施肥で追肥の手間を省き減肥も実現。

うね立てと同時に効率的に肥料を施用する「局所施肥」技術は、時間短縮に加え、肥料コストの低減や追肥作業の手間を抑えることができます。

うね立て同時条施肥機

試験区ごとの肥料成分と肥料代

下のグラフは夏秋ナスを局所施肥で栽培した例です。特に55kg/10aを局所施肥した区画では、慣行区(72kg/10a)と比較してコスト低減を達成していることがわかります。

試験区 肥料成分(kg/10a) 肥料代(円/10a)
窒素 N リン酸 P2O5 カリ K2O
慣行区 72.0 49.9 59.1 107,424
55kg区 58.3 34.6 33.6 57,755
44kg区 53.9 40.2 39.2 59,232

(平成21年度新稲作研究会資料より)
肥料代は窒素・リン酸・カリ成分の肥料代の合計。施肥量は55kg区、44kg区は、それぞれN55kg、44kgに設定したが、施肥量の調整が計画通りにいかず、設定より多くなった。

田植えと同時に施肥を行い、農繁期の作業を効率化

重労働である施肥、除草作業を大幅に省力化。高精度な作業ができるので肥料コストも低減できます。

側条施肥による施肥(粒状肥料・ペースト肥料)

苗のすぐ横の土中に条施肥するため、少ない施肥量で肥料コストを節減します。春先の低温期に地力窒素では賄えない基肥を田植えと同時に投入することで、時間短縮と良好な初期生育を促します。

除草剤散布(粒剤・フロアブル剤)

植付け作業が長期間にわたる大規模営農では、田植え同時散布で除草剤散布作業を省けるため効果的です。

粒剤散布機
フロアブル剤散布機

箱施用剤散布機

植付けと同時に均一に散布できるため、防除作業の回数を減らすことができます。
また、手播きと違い散布ムラがなく、農薬が効果的に効き、低コストを実現します。

箱施用剤散布機

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