営農情報

2017年6月取材

「カラダが楽になった」「手にマメができない」、島原市のにんじん農家から喜びの声!!

にんじんの生産量では全国で常に上位に入る長崎県。その中でも島原市は肥沃な黒ボク土壌が広がる産地だ。西南暖地といえども冬場につくる春にんじんはトンネル栽培でつくられている。そして人手による支柱の打込み作業はつらい仕事だ。しかも当地では、昔から狭い段々畑で栽培し、農地を目一杯使うことからうね間が狭く、作業性は決して良くない。このような条件の中、(株)藤木農機製作所(本社/大阪府東大阪市)製のトンネルマルチ支柱打込機〈うち丸〉(以下、〈うち丸〉)が注目を浴びている。個人農家ながら、基盤整備を機に同機を導入された機械化の先駆者に、その導入メリットをうかがった。

トンネルマルチ支柱打込み機〈うち丸〉が、にんじん農家の重労働を大幅軽減!

山口 浩二 様(左)
山口 亮平 様(右)

長崎県島原市

栽培作物(規模): にんじん(のべ7~8ha)、ホウレンソウ(約30a)、コマツナ(70~80a)

土壌分析や肥料へのこだわりで、質の高い野菜を安定生産

山口氏はにんじんを中心に、ホウレンソウやコマツナなど、こだわりの野菜を栽培する個人農家だ。
ご家族4名とパート1名の5名体制でほぼ年間を通じて作業を行い、作物は市場と仲卸業者へ直接出荷しておられる。直販だからこそ、作物の品質にこだわっている。

肥料については、コストで選ばず肥効の高いコート肥料を使用、その他には鶏糞などの有機物を入れている。「安い肥料はその瞬間だけ効くけど、効かせたいときに機能しない。けどコート肥料なら積算温度や水分の状態によって、計画的に効かせることができるんです」と、意識の高さをうかがわせる。「肥料や種子は、付き合いが長くて信頼のおけるメーカーさんから買っています。つまり生育が良くないときは、(肥料のせいではなく)なるべく自分のせいだと考えるようにしています」。謙虚だ。またこの肥料を使えば、追肥の手間が省けるというメリットもあるのだ。

「やっぱり色や形や味にはっきり出てくるので、自分たちが責任をもって出荷するためには、最初から最後までこだわりを持って栽培しないとダメですね。ブランドづくりとまではいかないけど、ここはこだわっておかないと自分にかえってきますから。それが価格にも反映してきます」。山口氏のほ場では土壌分析を行い、その結果から施肥設計を立てている。「うまくいっているときは良いんですけど、ほ場の状態がおかしくなってきたときは、土壌分析は特に重要ですね」。

取材当日は支柱立て作業の時期ではなかったため、倉庫では、お母様と奥様、パートさんの3人がホウレンソウの出荷調製作業をしておられた。

〈うち丸〉の導入で重労働から解放、「手のマメも無くなりました」

作物の品質に自信を持つ山口氏だが、作業面では苦労していた。それがトンネルマルチの支柱打込み作業だ。こちらではにんじんだけでなく、ホウレンソウやコマツナも栽培しており、そちらにもトンネルマルチを使うため、支柱打込み作業が多い。そんな山口氏の目に留まったのが〈うち丸〉だ。驚いたのがその情報源。なんと「あ、YouTubeです」と、あっさり。一瞬、皆が顔を見合わせ、次の瞬間にはもうそんな時代になったのかと大爆笑。
うかがえば、刈払機もYouTubeで見て購入されたとのこと。農家のインターネット利用は、こんな場面でも進んでいるのだと再認識した。そして同機に興味を持った山口氏は、地域で開催された展示会に行き、実機をご覧になった上で導入を決められた。決め手はもちろん労力軽減だ。

「支柱立て作業は家族みんなでやっていました。これが手作業なんでいちばん重労働だったんですよね」と、去年までの苦労を振り返る。実際に使ってみた感想は?の質問に「そりゃ、全然違う!楽になった!」と表情が変わる。今はご子息の亮平氏がお1人で同機を使って作業をしておられる。亮平氏にも機械の感想をうかがうと「去年まで、手がマメだらけでしたけど、今年からはそれが無くなりました(笑)」と、にこやかに話してくれた。

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一緒にお仕事をしておられる山口氏とご子息の亮平氏。会話の端々にも仲の良さがうかがえる。

こだわりの精神を発揮して、〈うち丸〉も使いやすく改良

山口氏のこだわり精神は機械にも見ることができる。作業をより楽に、使いやすく、効率良く使うために、機体天面にコンパネを取り付けておられる。本機の上に1往復分の支柱の束を乗せて走行するための工夫だ。

「だいたい片道70m、往復で約140mあるんで、その分の予備の支柱が10束以上(20本/束)必要なんです。でもそれをいちいち取りに行くわけにはいかないからまとめて積むんですが、そのままだと積み降ろしがしにくいんです」。そこで機体天面にコンパネを取り付けた。その上に載せると積みやく、崩れにくく、走行も安定するいという。考えてみれば、支柱の打込みは機械がしてくれるが、支柱の束の積み下ろしは機械ではできない。「そりゃ、積むのも降ろすのも楽な方が良いんで」と、笑う。

支柱の束が積み降ろしやすいように取り付けられたコンパネ。

手作業と〈うち丸〉で競争。効率は「2.5倍くらいになっている」

〈うち丸〉のメリットとして、労力軽減に次いで効率化をあげておられる山口氏が、面白いお話をしてくれた。なんと手作業と〈うち丸〉を競争させたというのだ。
「1人、2人と同じ距離で作業してみたけど機械が勝った。けどさすがに3人にはかなわなかったわ(笑)」と、無邪気に笑う山口氏。「いや、もうちょっとの差やったけどね(笑)」と、亮平氏が突っ込む。それでも山口氏は「作業効率は今までに比べたら、2.5倍ぐらいにはなっていると思う」と、自信たっぷりに答えてくれた。
熟練した作業員3人との競争には負けたが、実際の作業では、1うねで終わることはない。人手では最初は良いが途中で疲れが出て遅れてくると考えられるため、スピード面でも支柱の深さのも均一性で考えても、最終的には機械が有利になるのは目に見えている。それをご自身で検証されるという行動力は脱帽ものだ。
気になる点をうかがえば、唯一、旋回にコツがいるという。しかしそれも「慣れてしまえば全然問題ないですね」。お2人からは太鼓判を押していただいた。

〈うち丸〉の導入で効率化を進める山口氏、今後規模拡大も視野に入れておられるとのことだが、同地区では土地入手の競争率が高く、土地の確保がなかなか難しいという。「移植にしても収穫にしても、このうち丸にしても機械化は可能な範囲で進めているので、(急いでも仕方がないので)マイペースでやっていきます」と、笑顔で締めくくってくれた。

トンネルマルチの支柱を、油圧で「同じ間隔」「同じ深さ」に打込みます!

山科 一雄 氏

株式会社藤木農機製作所
営業技術 部長

トンネルマルチ作業は、山口様がおっしゃっていますように重労働です。支柱を立てるのもそうですし、支柱をうねに一定間隔に置いてまわる運搬作業も大変な作業です。島原地区のように重くて長い(2.7~3m)トンネル支柱は、肩にかついでも先端が地面に付いて運びにくいものです。〈うち丸〉はそんな運搬作業も兼ねて使っていただくことができるので、大幅な労力軽減となると思います。
同地区のお客様が手元にたくさんの支柱を載せられるようにされた改造は、溝が狭く、機械の横にまわりづらい地域では、すばらしいアイデアだと思います。使いやすさ、能率が飛躍的に上がると思いますので、来期にはそのご要望を商品に取り入れていこうと思います。

トンネルマルチ支柱打込機 うち丸TPNシリーズ

往路は支柱打込み!!
復路はトンネルマルチ被覆!!
  • 打込みスピードが1本当たり4~5秒とスピーディ。油圧式で打込み深さも一定なので、支柱の高さも揃います。
  • 行きは支柱打込み、帰りはトンネルマルチ張りを行うので、重いマルチシートを手で運ぶ必要もなく、1人作業が可能です(FCM・FCMA2)。
  • 旧型式ではオプションとして好評だった車幅調整キットを、標準装備しております。
  • 記事中の機械は、打込み専用仕様です。

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