営農情報

2018年12月発行「トンボプラス13号」より転載

〈メーカー探訪〉(株)佐野アタッチ研究所の事業と想いを継承して設立 株式会社 アグリアタッチ研究所

今回の訪問先は、2017年9月に誕生した(株)アグリアタッチ研究所(以降、同社)だ。同社は、管理機アタッチメントメーカーとして知られる佐野アタッチより事業譲渡を受け、ササオカの兄弟会社としてスタートした。同社の誕生には、事業継承への不安から、数年前から事業の譲渡先を探していた佐野アタッチが、同業のササオカと協議を重ね、合意に至ったのが設立の経緯だ。佐野アタッチ側は事業、技術開発力と、ササオカ側は、佐野アタッチの技術力と今後の東日本市場進出の足掛かりを得るという、双方が納得のいく形での事業継承となった。

佐野アタッチのファンを守るために、新会社設立を決断

代表取締役社長 山﨑 清 様(写真中)
営業技術部 東日本GR 主任 府川 誠 様(写真右)
営業技術部 渡邉 道宣 様(写真左)

静岡県富士市
株式会社 アグリアタッチ研究所

同社内では「技術や商品は継承していますが、新会社で頑張っていこう!という気持ちはますます強くなって、社内が活気づいています」。開口一番、元気な声を聞かせてくれたのは、代表取締役社長で、ササオカの社長も兼務する山﨑清氏だ。
山﨑氏が同社を、新会社にしたのには理由がある。約40年前に、両社は競合関係であり、双方に熱烈なファンが存在した。しかしその背景を無視して、ササオカの事業所のような形にすれば、これまでの佐野アタッチファンを無くしてしまう。ササオカグループの会社ではあるが、佐野アタッチのお客様を守っていこうという考え方から別会社にしたという。社名も、旧社名の佐野の部分を、アグリという言葉に置き換えることで、佐野アタッチのイメージを踏襲できた。

  • 文中では、それぞれ(株)アグリアタッチ研究所=同社、(株)佐野アタッチ研究所=佐野アタッチ、(株)ササオカ=ササオカと表現している。

お客様の声を直接聞き、農家の意欲が湧く新商品に

そんな山﨑氏が、経営ポリシーにしているのは〈お客様第一主義〉だ。「私は営業で大事なことは、販売ではなく、お客様の声の吸い上げだと思っています。現在の商品でも、お客様の声を反映していれば、展示+説明で売れるはず。売れないのは、お客様のニーズに届いていないということ。だからお客様の声が重要なんです。それをもとに農家の皆さんの意欲が湧く商品に仕上げなければならない。それが一番の理想だし、やるべきことだと思います」。同社の商品開発の考え方はササオカと同じく、〈すべてはお客様の声から始まる〉だ。このポリシーは、今後にもつながる。「計画には数字が必要だから倍増と言っていますが、お客様がご満足をいただける形であれば、数字にはこだわりません。お客様に選ばれる会社を目指します」と、笑顔で語る。〈お客様第一主義〉を貫く姿勢は変わらない。新しいアタッチメントメーカーとして歩き始めた同社には、お客様の声を道しるべに、全社一丸で頑張っていただきたい。

同社は製造ラインを持たない。組み立て工場だけだ。外部の部品メーカーで製造された部品を集約し、組み立て・調整・梱包・発送する。男性も女性も大活躍だ。
工場だけでなく事務所でも女性が活躍している。
部品棚には品番だけでなく写真を貼って、誰が見てもわかりやすいように工夫している。
ササオカ(本社/高知県須崎市)では、同社の社員も含めて双方の商品研修が行われている。

想いを共有できる仲間と共に1年生のつもりで頑張ります!

東日本担当 府川 誠 様

私は元佐野アタッチの人間です。1年前の今頃、同業社のササオカさんと一緒になると聞かされて「どういうこと?」と思いました。でも1年経ってみて、今私は、新会社になって良かったと思っています。と言うのは、先行きが見えづらい農業機械の世界で、ササオカは独自の経営で伸びている企業です。一方、佐野アタッチは、経営が悪化したわけではありませんが、現状維持を良しとしていた風潮があって、営業としては、以前から少し物足りなさを感じていたからです。
また、新会社の社員となった自分の中で大きかったのは、想いを共有できる仲間が増えたこと。ササオカ本社や西日本、九州の営業所の方々が機械のことだけでなく、色々と教えてくれますし、社長や部長からは経営や営業の話も聞けます。ササオカの皆さんから『皆でやろう!』と言われてすごく心強かったです。
あと感心したのは、「私も1年生なので」と言って、お昼休みなど人が少なくて電話が重なって取る人がいないときなどに、社長自身が電話を取ってくれるんです。あれには驚きました。もちろん私も新会社では1年生と思っていますが、お客様の声を本当に大切にされているのがわかります。それに、最初はササオカになると思っていたのが、佐野アタッチ研究所のイメージを残す方向で新会社にしてもらったことにも感謝しています。社員の心の中では大きな相乗効果が出てきています。私も東日本の担当として、新会社とササオカの両方にメリットが出るように、農家の皆さんに喜んでいただけるように、気持ちを新たに頑張りたいと思います。

早く一人前になって、異業種からの視点を活かしたい!

東日本担当 渡邉 道宣 様

入社したての私は、やりたいこと、やらないといけないことばかり。まずは中途採用なので、1~2年で一人前になりたいというのが目下の目標です。本当は研修期間も欲しかったのですが、新会社なのでそうもいきません。でも、だからこそ実践で効率良く覚えられていると思います(笑)。東日本は先輩の府川さんが1人で対応されていますが、西日本は私1人では無理なので、今はササオカの営業の皆さんにサポートしてもらっています。その意味では、グループのありがたさを一番感じていると思います。それに、私1人ではお会いできない企業トップの方々に紹介していただいて、またその方々から、地域独自の色々な情報を教えていただくなど恵まれた環境なので、しっかり付いていきたいです。
また、私を含めて新人が4人入り、親会社であるササオカの血も入って、転換期になっています。それで組み立てラインの改善策として、部品棚に部品の写真や棚札を付ける、マニュアル化して誰もがわかるようにするといった、工夫がされているので、私もアイデアを出していきたいと思っています。
例えばもっとデータ化できる部分はデータで残して、実績の分析などできるようにしていきたい。図面や取説も、はじめてのお客様が見てもわかるように見直したい。それに今の農家さんはスマートフォンを持っている方も多いので、電話で伝えられない部分を補完するために、ホームページへの動画掲載や二次元コードによる連動なんかもやりたい。
もちろんこの業界の流れもあるので、それに合わせながらも新しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。