COOメッセージ

COOメッセージ:ヤンマーホールディングス株式会社 代表取締役(COO) 山本哲也

社会課題の解決は私たちのパーパス

創業者の山岡孫吉は、今から110年前に農家の方々の過重労働を減らしたいという思いで、世界で初めてディーゼルエンジンの小型化・実用化に成功しました。そして、一滴の燃料も無駄にしない「燃料報国」という理念のもと、ディーゼルエンジンによる省力化で農村を豊かにしていきました。これは、私たちが創業100周年で示した「A SUSTAINABLE FUTURE-テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」の考え方へとつながっています。そして社会課題を解決し“A SUSTAINABLE FUTURE”を作り出すことが私たちのパーパスです。
私たちがフォーカスすべき事業領域は、ミッションステートメントで掲げている「食料生産」と「エネルギー変換」の分野です。2050年に世界の人口は約97億人に達すると推定されていますが、農業人口の減少や耕地面積が縮小するなか、今後それだけの人の食料需要に応えていくためには、農業の省力化をはじめ、効率化、高度化が必要になってきます。また、エネルギー需要も都市部を中心に増え続けています。気候変動のリスクは年々高まり、アンモニアやメタン、水素などの活用や、電動化へのシフトなどが期待されています。ヤンマーにとってはいずれも貢献が求められる領域です。

サステナビリティの推進は私たちの事業領域において非常に重要です。これに関しては、短期的に成果が出るものばかりではないため、製品開発への投資と同じような感覚で中長期の視点を持ち果敢にチャレンジしていく考えです。いち早く経験を積むことで競争優位性は高まり、お客さまや社会の課題も早期に解決できます。
また、サステナビリティを掛け声で終わらせず実践につなげていくためには、役員のみならず社員の意識を変えていくことが肝要です。そのために、私が大事だと考えているのは対話です。会社のビジョンや方針をマネジメント層がきちんと翻訳し、部下一人ひとりと対話していく。そこで共感と納得が得られれば、成果は自ずと出てきます。

対話の重要性はサプライチェーンについても同じことが言えます。2023年1月、私たちは「サプライチェーン行動規範」を制定し、人権の尊重や労働安全衛生、環境保全などの社会的責任について、すべてのサプライヤーに協力の要請をしました。対話の軸となる基準ができたことで、ヤンマーが考えるサステナビリティに反することには明確にNoと言える環境が整いました。これから、事業会社ごとに資材部が中心になってサプライヤーとの対話を進めていきます。

食料やエネルギー分野でのチャレンジ

さまざまな情報がグローバルに広がる現代社会では、あらゆる製品やサービスのコモディティ化が加速しています。ヤンマーにおいても、単にものを作るだけでは他社との差別化が難しくなっており、お客さまが何について困っているのか、現場でしっかりと耳を傾けることが大切だと考えています。私たちは、「顧客価値創造」という原点に回帰し、お客さまと私たちがWin-Winの関係になって、共に課題を解決していく取り組みを進めています。

食料分野では、農家の生産だけでなく、農産物ができた後の加工や、流通、販売といった部分にヤンマーが関わることにより、食の循環全体をサポートし、農業を魅力ある産業「食農産業」に発展させていく活動に取り組んでいます。たとえば、食品残さなどから作った堆肥を農地に戻す取り組みや、規格外で市場に出せなかったり、廃棄されたりしていた農産物をヤンマーが農家から買い取り、それを私たちの社員食堂で利用しています。
また、「スマートアシスト」や「ロボット・オートトラクター」など、これまでにさまざまなスマート農業を提案してきました。現在、パワートレインを電動化した小型農機の開発を進めており、2025年までには市場に投入する予定です。小型農機は園芸ハウス内で使用される場合があり、電動化することで排ガスによる農作物への影響や農作業者の健康被害を軽減できます。また、「スマートアシスト」は、アジア諸国で国や代理店と共同で実証試験を行っています。

エネルギー分野では、一昨年策定した「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」の活動の一環として、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを行っています。ディーゼルエンジンにおける私たちの強みは、燃焼とレシプロエンジンに基づいた効率的な爆発を駆動に変える技術です。カーボンニュートラルを実現するうえで問題になるのはエンジンではなく、カーボンが入っている燃料を燃やすことです。そのための代替手段として有望だと考えているのが水素です。
既にドイツでは、水素を通すパイプラインが稼働しており、私たちも40%まで水素混焼可能なガスエンジンコージェネを製品化しています。さらに、2023年9月には、水素発電システムなどの実証施設「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」を岡山県に開設しました。2024年に発売予定の水素燃料電池発電システムなど、さまざまな機器を実物で見ていただく機会を提供し、最適なエネルギー機器の組み合わせを提案していきます。
また、バッテリーやモーターによる電動化の開発も進めています。電動化の課題はパワートレインをバランスよく制御することですが、ここでも私たちのパワートレインを最適化する技術を生かすことができます。

「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進

グローバル化戦略を進めるうえでは、国籍、文化・宗教、性別、年齢を問わず、世界に通用する人材を育成するため、「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進も欠かせません。現地法人の現地化にも早くから取り組んでおり、現在、多くの現地法人のトップは現地の人材です。
日本国内では人事部ダイバーシティ推進グループが中心になって、社内のダイバーシティ実現に取り組んでおり、女性活躍の推進や男性の育児休業取得促進などの施策を進めています。

まずは社内から「HANASAKA(ハナサカ)」の浸透を

ヤンマーでは、人の可能性を信じ、挑戦を後押しする価値観が受け継がれてきました。こうした価値観は今なお挑戦の原動力になっています。この価値観をヤンマーらしさの象徴として「HANASAKA」と名付け、人材育成などの施策を進めています。まずは社内から自分にとっての「HANASAKA」とはどのようなことか、世界各国で行っているワークショップ活動を続けながら、社員の理解を深めていきます。 また、経験年数や在籍年数に関係なく、やる気のある人のチャレンジを称賛するような仕組みづくりをして、社員が活躍できる環境を整えていきます 。

サステナビリティの実現に向けて

今の消費者は、よりサステナブルなものを選ぶ傾向が強くなっており、そのような製品やサービスを提供する会社が選ばれる時代です。サステナビリティの実現に向けて、まずはカーボンニュートラルに本気で取り組み、その成果がお客様の課題解決、ひいては社会課題の解決につながることを社員全員が実感できるようにしていきたいと考えています。ヤンマーは、食料とエネルギーの分野で社会に貢献できるさまざまな技術を磨き、ソリューションを提供していきます。私たちは、お客さまや社会から選ばれ続けるためにも、サステナビリティに真摯に取り組んで参ります。

サポート・お問い合わせ