2023.10.05

女性活躍推進法とは?注目される背景・国や企業の取り組みをわかりやすく解説

女性活躍推進法は、働く女性の活躍を後押しするために2016年に施行された法律です。2022年に法改正が行われるなど、今「女性の活躍」に注目が集まっています。

この記事では「女性活躍推進という言葉はよく耳にするけれど、具体的にどんなことに取り組めばいいの?」と疑問に思っている方に向けて、女性活躍推進法の内容を踏まえながら、女性活躍推進が注目される背景、国や企業の取り組みについて、ヤンマーの事例を交えてご紹介します。

女性活躍推進法とは?

まずは、女性活躍推進法の概要について確認していきましょう。
女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の略称)とは、働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指し、10年間の時限立法(一定の有効期間を付した法令)として、2016年4月1日に施行された法律です。

この法律により、常時雇用する労働者数が301人以上の企業には、

・自社の女性活躍に関する状況の把握と課題分析
・課題解決のための数値目標を含んだ一般事業主行動計画の策定
・届出・周知・公表・自社の女性活躍に関する情報の公表

などが義務付けられました。

なお、常時雇用の労働者には、正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの名称を問わず、以下のいずれかに当てはまるすべての従業員が該当します。

1.期間の定めなく雇用されている者
2.過去1年以上にわたって雇用されている者、または雇入れ時から1年以上の雇用が見込まれる者

対象となった企業は、次の4つの項目をベースに「女性が働きやすい環境が整っているか」の現状把握と課題分析を行い、課題解決のための一般事業主行動計画を都道府県労働局へ提出することが義務付けられています。

⚫️状況把握する事項

また、女性活躍推進法の成立により、一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優良な企業には、都道府県労働局に申請を行った後、厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)が受けられる制度も登場しています。

認定を受けた企業は、認定マークである「えるぼし」を自社の商品や求人などに使用することで、女性活躍推進企業であることを対外的にアピールできるようになります。

【2022年4月1日施行】「改正女性活躍推進法」で変わったこと

女性活躍推進法は2016年に施行された後、2019年5月29日に一部を改正する「改正女性活躍推進法」が成立し、2022年4月1日から施行されています。

「改正女性活躍推進法」によって変わったポイントは、主に次の3つです。

1.一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大
2.女性活躍に関する情報公表の強化
3.特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設

それぞれの変更点を簡単に解説していきます。

法改正のポイント|1.一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

1つ目の変更点は、一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大です。

一般事業主行動計画とは、

・従業員が仕事と子育てを両立させるための雇用環境の整備
・多様な働き方の整備(子育てをしていない従業員を含む)

などに取り組む際に「①計画期間」「②目標」「③目標達成のための対策及びその実施時期」を定めたものです。

これまでは常時雇用の労働者数301人以上の企業を対象としていましたが、法改正によってその対象が、常時雇用の労働者数101人以上300人以下の企業にまで拡大しました。

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法改正により「女性活躍推進」は、大企業だけのものではなく、従業員数300人以下の中小企業にとっても向き合うべき直近の課題となったことがわかります。

法改正のポイント|2.女性活躍に関する情報公表の強化

2つ目の変更点は、女性活躍に関する情報公表の強化です。

法改正によって、常時雇用の労働者数が301人以上の企業には、

1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

のいずれかの項目から1項目以上選択し、求職者がいつでも女性活躍推進に関する情報を閲覧できるように公表することが新たに義務付けられています

法改正のポイント|3.特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設

3つ目の変更点は「特例認定制度(プラチナえるぼし)」の創設です。

「えるぼし認定」とは、先ほどもご紹介した通り、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業を認定する制度です。

法改正によって、えるぼし認定を受けている企業のうち、より高い水準の要件を満たした企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができるようになりました。

【2022年7月8日制度改正】情報公表項目に「男女の賃金の差異」の追加

さらに2022年7月8日には、男女間の賃金格差を縮小するために、女性活躍推進法に関する制度改正が行われています。

この制度改正に伴い、常時雇用の労働者数が301人以上の企業には、「男女の賃金の差異」に関する情報公表が義務付けられました。

参照:女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について_厚生労働省

女性活躍推進が注目される背景と必要な理由

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女性活躍推進法の改正によって、多くの企業が女性活躍推進に取り組んでいます。ここでは、女性活躍推進が必要とされ、注目を集める理由についてご紹介します。

・少子高齢化による労働人口の減少
・諸外国に比べて女性活躍推進が遅れている

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

背景と必要な理由|1.少子高齢化による労働人口の減少

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参照:令和4年版高齢社会白書_内閣府

女性活躍推進が注目される背景のひとつに日本の労働人口の減少があります。

内閣府が発表している「令和4年版高齢社会白書」によると、2065年には日本の総人口は8,808万人になると推計されています。加えて、高齢化も深刻で、同資料では日本の高齢化率(総人口のうち65歳以上が占める割合)は28.9%に上ると報告されています。

当然のことながら、人口の減少と高齢化が進めば、日本の労働人口は減少します。高度経済成長期のように男性が中心となって働くという仕組みでは、超少子高齢化社会にはとても太刀打ちできません。

そこで政府は、日本の労働力不足解消の鍵を女性をはじめとした「多様な人材の確保(ダイバーシティ)」に見出しました。

総務省の「労働力調査」によると2019年の女性の就業率(25〜44 歳人口に占める就業者の割合)は77. 7%。見方を変えれば、22.3%の女性は未就業であるとも捉えられます。

働く意欲のある女性が職場で活躍できるように、また現在活躍している女性がライフステージの変化によって就業を諦めてしまわないように、女性活躍推進を進めることで、政府は日本の労働力不足に立ち向かおうとしているのです。

参照:働く女性の状況 Ⅰ 令和元年の働く女性の状況 _ 厚生労働省

背景と必要な理由|2.諸外国に比べて女性活躍推進が遅れている

世界各国の男女格差を測る「ジェンダー・ギャップ指数」によると、2022年の日本の総合スコアは0.650で、順位は146カ国中116位。主要先進国の中で最下位と、日本の男女格差が明らかになりました。特に、女性活躍推進で遅れをとっているのが「経済」「政治」の分野です。

スコアが低迷した主な原因は「管理職における女性の割合が少ないこと」「国会議員における女性の割合が少ないこと」などで、いずれも組織の方針を決定する場面に女性が参加できていない状況が懸念されています。

女性管理職や女性の国会議員の割合を増やすことで「意思決定ボードの多様性(意思決定に関わる役割を担うメンバーの多様性)」に繋がるのではないかと注目されています。

>参照:「共同参画」2022年8月号

国の現在の女性活躍推進に対しての取り組み

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続いて、女性活躍推進に対する国の取り組みについて確認していきましょう。

2022年6月に決定した「女性版骨太の方針2022」では、政府全体として2022年度及び2023年度に重点的に取り組むべき事項として、次の4つの柱立てが示されました。

1.女性の経済的自立
2.女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現
3.男性の家庭・地域社会における活躍
4.女性の登用目標達成(第5次男女共同参画基本計画の着実な実行)

順番にご説明します。

国の取り組み|1.女性の経済的自立

「女性版骨太の方針2022」では、女性の経済的自立を「新しい資本主義の中核」と位置付けています。具体的な取り組みは次の通りです。

1.男女間賃金格差への対応
2.地域におけるジェンダー・ギャップの解消
3.固定的な性別役割分担意識・無意識の思い込みの解消
4.女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討
5.ひとり親支援
6.ジェンダー統計の充実に向けた男女別データの的確な把握

なお、男女間賃金格差への対応については、既に女性活躍推進法の改正により2022年7月8日から「男女間賃金格差に係る情報の開示」が義務化されています。

国の取り組み|2.女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現

女性活躍推進の実現には、女性一人ひとりが尊厳と誇りを持って生きられる社会環境の整備が欠かせません。性犯罪や性暴力、ハラスメントを根絶するために、次のような取り組みが実施されています。

1.アダルトビデオ出演被害対策等
2.性犯罪・性暴力対策
3.配偶者等からの暴力への対策の強化
4.困難な問題を抱える女性への支援
5.女性の健康
6.夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方

性犯罪・性暴力対策については、就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメントの防止対策、教職員が学生に対して行うハラスメントの防止対策なども含まれます

国の取り組み|3.男性の家庭・地域社会における活躍

男女共同参画の取り組みを後押しするためには、女性活躍推進と並行して、男性の活躍の場を家庭や地域社会に広げることが重要です。男女問わず育児に参加しやすい環境を整えるために、次のような取り組みが実施されています。

1.男性の育児休業取得の推進及び働き方の改革
2.男性の育児参画を阻む壁の解消
3.男性の孤独・孤立対策

しかしながら、民間企業における男性の育児休業取得率は12.65%(2020年度)と低い水準に留まっています。そこで政府は、ハローワークにおける育児休業中の代替要員確保に関する相談支援や両立支援等助成金の周知などを通して、2025年度までに男性の育児休業取得率を30%にするという目標を掲げています。

国の取り組み|4.女性の登用目標達成(第5次男女共同参画基本計画の着実な実行)

女性の登用目標達成では、以下の6つの分野と「第5次男女共同参画基本計画」で掲げられた女性の登用・採用に関する全 58項目の成果目標について、その達成状況を内閣府のホームページにおいて公表することで進捗の「見える化」に取り組むと述べられています。

具体的な6つの分野は次の通りです。

1.政治分野
2.行政分野
3.経済分野
4.科学技術・学術分野
5.地域における女性活躍の推進
6.国際分野

行政分野では、男女共同参画局ウェブサイト内に設置されている女性役員情報サイト内にて、女性役員比率ランキングや女性活躍推進を考慮したジェンダー投資の状況などが発信されています。

参照:女性版骨太の方針(女性活躍・男女共同参画の重点方針)_男女共同参画局

企業が女性活躍推進を推奨するメリット

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女性活躍推進というと、女性側のメリットばかりに目が行きがちですが、女性活躍推進は就業を希望する女性だけではなく、企業にも多くのメリットをもたらします。

1.企業イメージの向上や優秀な人材の確保
2.社内の多様性が高まり新たなアイデアが生まれる
3.離職率が下がる

順番にご紹介します。

メリット|1.企業イメージの向上・優秀な人材の確保

女性の管理職が多い職場や、育児にまつわる制度の充実など、女性活躍推進を打ち出すことで、企業イメージや信頼の向上に繋がります。女性をはじめとした多様な人材が働きやすい職場であることが認知されれば、自ずと求人への応募者数が増え、優秀な人材に出会える確率も高まるはずです。

メリット|2.社内の多様性が高まり新たなアイデアが生まれる

女性活躍推進に取り組むことで、社内に多様性(ダイバーシティ)がもたらされます。女性の視点や経験、価値観を取り入れることができれば、男性中心の会議では生まれなかった魅力的なアイデアや新しいサービス、商品が生まれる可能性も高まるでしょう。

メリット|3.離職率が下がる

多くの採用コストをかけ入社した女性社員が、社内でキャリアを積み上げ「これから活躍する」というタイミングで退職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。妊娠・出産後も安心して働ける環境を整えることで、これまでやむを得ず退職の道を選んでいた女性の雇用を守ることができ、社内の離職率も低下します。

女性活躍推進の現状の課題

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女性活躍推進法においては「女性採用率」「労働時間の状況」「勤続年数男女差」「女性管理職比率」の4つの項目を元に、自社の女性活躍に関する状況の把握と課題分析を行うことが義務付けられています。ここでは、4つの項目をさらに「女性の就業継続の課題」と「女性の昇進・昇格の課題」に分類して考えていきます。

最近よく聞く?女性活躍推進法とは 注目の背景や国・企業の取り組み例をわかりやすく解説

課題|1.女性の就業継続

1つ目は、女性の就業継続に関する課題です。日本では、妊娠・出産によって、時間的制約が生まれ、職場を退職する女性が少なくありません。

こうした課題の背景には「男性は外で仕事をする、女性は家庭を守る」といった性別的役割意識の他に、保育所に預けたくても子どもを預けられない「待機児童問題」、男性の育児休業取得率の低さ、長時間労働などがあると言われています。

中でも女性の就業継続において鍵となるのが、男性の家事・育児への参加です。しかしその一方で、多くの男性社員が「帰宅がいつも夜中になってしまい、子育てに参加したくてもできない」「育児休業を取得したいけれど、前例がない」など、子育てと仕事の両立にもどかしさを抱えているのが現状です。

もちろん、女性が産休・育休を取得しやすいような職場の体制づくりも重要であり、「女性の就業継続の課題」を解決するためにも、男女問わず、仕事と生活の両立に向けたワーク・ライフ・バランスの推進が求められています。

課題|2.女性の昇進・昇格

2つ目は、女性の昇進・昇格に関する課題です。日本の企業に女性管理職が少ない理由のひとつに、女性は育児・家事などで時間的な制約が発生しやすい一方で、管理職登用の制度が時間的な制約条件のない人材(長時間労働が可能な人材)をベースに整えられていることが挙げられます。

その結果、女性で管理職に就ける人材は少なく、さらにロールモデルとなる女性がいないことでリーダー像のイメージが湧かず、昇進・昇格に対するイメージを持ちにくくなってしまうのです。

企業が女性活躍推進に対して行うべき取り組み

最近よく聞く?女性活躍推進法とは 注目の背景や国・企業の取り組み例をわかりやすく解説

ここまで、女性活躍推進には「女性の就業継続の課題」と「女性の昇進・昇格の課題」の2つの課題があるとお伝えしてきました。では、これらの課題に対し、企業はどのような取り組みを行っていけば良いのでしょうか?

ここでは、ヤンマーの事例を挙げながら、企業が女性活躍推進に対して行うべき取り組みについてご紹介していきます。

1.女性の採用
2.ワーク・ライフ・バランスの推進
3.管理職への女性登用

企業の取り組み|1.女性の採用

ヤンマーでは、様々な職種で女性が活躍しており、将来的にも多方面での女性の活躍を見据え、女性スカウトや就職活動中の女子学生に向けた「女性社員との座談会」の開催などを通じて、積極的に採用を行っています。

企業の取り組み|2.ワーク・ライフ・バランスの推進

最近よく聞く?女性活躍推進法とは 注目の背景や国・企業の取り組み例をわかりやすく解説

「女性の就業継続の課題」を解決するためには、女性社員と男性社員双方の「ワーク・ライフ・バランス」を考えていくことが不可欠です。

ヤンマーには、1年間の産休・育休の取得、また復帰後は時短勤務を活用できる制度があります。近年は「男性社員の育児休業取得率」も増加し、男女問わず多くの社員が子育てと両立しながら就業を継続しています。

Y mediaでは、産休・育休を取得して職場に復帰した後、現在も子育てをしながらキャリアを積み上げている社員や、実際に育休を取得した男性社員を取材。「産休・育休復帰後のキャリア感の変化」や「育児と仕事を両立させるために大切なこと」についてお話を伺いました。

企業の取り組み|3.管理職への女性登用

最近よく聞く?女性活躍推進法とは 注目の背景や国・企業の取り組み例をわかりやすく解説

ヤンマーでは、女性の管理職も年々増加傾向にあります。

ヤンマーが大切にしているのは、男女問わず公正に評価される制度・風土を整えること。Y mediaではヤンマーホールディングスの女性初の取締役に就任した長田志織さんと、ヤンマーホールディングスの人財戦略のトップとして活躍する浜口憲路さんを取材し、「ヤンマーのダイバーシティ戦略」についてお話を伺いました。

多様な社員が活躍できる職場を考えることが女性活躍推進に繋がる|まとめ

最近よく聞く?女性活躍推進法とは 注目の背景や国・企業の取り組み例をわかりやすく解説

女性活躍推進には「女性の就業継続の課題」や「女性の昇進・昇格の課題」など、まだまだ多くの課題があります。女性活躍推進法は、そんな女性たちがさまざまな制約を抱えながらも一人ひとりの能力を十分に発揮できる職場環境を整えられるよう企業に現状を把握し、課題を解決するように義務付けたものです。

『いきいき、ワクワク、SMILE』。

ヤンマーグループを支えているのは、心豊かに働くすべての社員たちです。

女性活躍推進に取り組む鍵は、女性の働きやすさに加えて、性別や国籍を問わずすべての社員が自分らしく活躍できる環境を整えていくことにあるとも言えるでしょう。

ヤンマーではこれからも、性別や宗教、国籍を問わず多様なバックグラウンドをもつ社員がいきいきと活躍できる職場を目指すと共に、ダイバーシティ&インクルージョンを通して、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。