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助成事業

審査・選考のポイント(選考委員インタビュー)
佐藤 匡央 九州大学 教授

所属機関:九州大学 大学院農学研究院 生命機能科学部門 食料工学講座
専門分野:栄養化学

佐藤教授の研究活動についてうかがいました

Q1:まずはプロフィールについてお聞かせください。

高校生の頃から“砂糖とは何か”ということをずっと考えていました。そこで栄養化学の研究室に進み、何と比較したら差があるのかを考えていました。対象群を何にすれば差だといえるのか、何と比較したら説得力があり治療効果があって予防できるのかといったことです。九州大学で学位取得後、途中2年ほどアメリカルイジアナ州立大学医学部の生理学科に留学して小腸の研究をしました。他には半年ほど政府の機関である国立健康栄養研究所(現 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)にもいました。そこで基本的に小腸の研究をしていたことが、現在の乳酸菌の研究につながっています。今では肝臓に関する研究の割合が多いかもしれませんが、基本的には消化器を対象としています。専門は脂質代謝で、この分野は複雑なため、医学部の先生でも敬遠されることがあります。しかし、複雑だからこそ、さまざまな角度からアプローチできる点が特徴です。振り返ってみると、学生の頃に指導を受けた先生に恵まれ今の研究につながっています。そういったこともあり、大学は先生で選ぶのがベストだと思っています。

ストレートにお話される佐藤教授。
研究室には多くの学生が訪れていました。
Q2:研究室選択時に先生で選んだというのはどういうことでしょうか?
授業で先生の話している内容が理解できないと、研究室に進んでからも十分なコミュニケーションを取ることは難しいと思います。当時、私にとって一番理解しやすかったのが栄養化学の教授で、先生の話を理解できたのは私だけという状況でした。“私だけ”ということが重要で、先生の持っている知識を誰よりも吸収できる環境だったということです。周りが理解できない内容でも、自分だけは理解しようと努力することが大切です。そうしているうちに、先生も、この学生なら伝わると感じ、より深く教えてくれるようになります。親からは嫌なところが似るといわれていますが、先生からは良いところが似てくるのです。教育面ではちゃんとした先生についた方がいいと思います。そうすると結果として良いデータが得られるようになってきます。だから特に学部生の時には、研究室は専攻学問よりも先生で選ぶのが最良だと思います。研究の個性は新たに自分のフィールドを持つということで、既にわかっていることはやる必要はありません。指導教官自身の研究を学生に取り組ませたい場合でも、うまく二人でやっていくことを説明できない先生のところには行くべきではないと思っています。本人が発想しないのか、新しいことに取り組む機会を与えられないのかわかりませんが、そんな先生もいるのでよく選んでほしいと思います。ただし、やりたいことを短絡的にすぐやろうとしてはダメです。会社でもそうですよね。“新しいプロジェクトを立ち上げたい” というのと同じで、いろいろなことを経験したうえで、それが役に立って新しいことができるようになる。それに耐えられないとやめてしまうことになります。若いうちから何に応えたいかというものを持っている人は強いと思います。

審査・選考のポイントについてうかがいました

Q3:審査にあたって最初にどこからとりかかりますか?

まずはタイトルを見ます。タイトルで6割決まるといってもいいのではないでしょうか。ホームページにもタイトルが載るので、助成を受けるうえで責任をもって考えてほしいです。魅力的なタイトルにするという意図が感じられない申請も見受けられました。研究のタイトルでも小説のタイトルだと思って取り組むべきで、本屋で魅力的なタイトルのつけかたのヒントを得るのもいいかもしれません。松本清張の「点と線」など、それくらいのタイトル付けのセンスが欲しいところです。公的研究助成での萌芽的研究のタイトルは結構工夫されていますので、合わせて参考にしてほしいと思います。

九州大学伊都キャンパスにて。
Q4:専門領域の申請はどういったところをチェックしますか?
研究の最大のポイントである“方法”です。それが正しくないと証明は難しい。方法にはアイデアが必要で、着眼点がいいものは評価が高くなります。異なる分野の考え方を利用するのは一つの方法で、専門以外の分野でも研究の方法をチェックします。この手があったか…と、うならせる申請にはワクワクします。例えば、脳や血管と消化器系は、同じ海綿構造であっても、その捉え方や研究のアプローチが異なります。私は常に、それぞれの分野の考え方や手法を応用できないかと考えています。考え方や研究文化が異なるからこそ、他分野の手法を流用・応用することで、新しい発想につながると考えています。研究対象物の気持ちになって考えると理解は進むと思います。「はたらく細胞」などはいい例で、働いているという概念がなくてもエネルギーを使う行動には目的が存在するので、研究対象に感情移入して思考する場合にも同じことがいえると思います。そこに新たな視点ができ、望ましい方法や好ましくない方法が見えてくると思います。ただし感情移入に留まらず、単なる方法だけでなく、理屈がつくように方法を組み立て企画書に落とし込むことが重要で、それには情報量が必要になります。
Q5:専門と専門外では審査基準は異なりますか?
専門の領域の申請にはほぼ巡り合いませんが、プロセスや着眼点だけでなく、後利用や将来性も見据えたものを評価します。目先だけを考えて行き詰まる研究者は数多くいるので、もっと先を見て取り組んでほしいと思います。“何が知りたいのか”という点については企画書にいい加減に扱われていると論外です。うまくいかない場合や、中止の圧力がかかっても、気になる研究は貫き通してほしいと思います。気になる点は網羅的解析を織り込んでおくと新しい発見につながる確率が向上すると思います。それには統計的、数理的な解析力が必要ですが、新たな発想につながり、企画書にも落とし込めると思います。データに余裕があり、成果が出ないときの対応も考慮したうえで、興味深いアプローチが組み立てられていると評価は高くなります。申請とは別にはなりますが、データから何を見つけることができるかは今後の研究に大きく影響します。また、科学者は論文を書いて世の中の人が利用できるようにしなければなりません。それは基礎研究でも同じで、やったことを文章化するのは義務だと思います。助成を受けたからには論文にしてほしいですね。俎上に挙げて多くの人に知ってもらい、そこからまた誰かが考える、というのが日本の科学とビッグデータに関する貢献につながるものと考えています。
Q6:これから申請される方に対してのアドバイスをお願いします。
まずは吟味したタイトル。そのタイトルに対して応えているかどうか。タイトルが質問になっていて、それに応えているかどうか、あとは既存の方法の組み合わせでなく、新しいアプローチであるというのがポイントで、面白い方法だとさらにいいですね。若手の研究者の皆さんには別領域の方法でも構わないので、新しい切り口で挑戦してほしいと思います。
佐藤教授、ありがとうございました。
2025年12月10日取材

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