ヤンマーテクニカルレビュー

カーボンニュートラル燃料に対応するエンジン技術開発のご紹介

化石燃料は、エネルギ密度※1が大きく、短時間のうちに大きな仕事を取り出すことが可能で、重労働からの解放、大量生産、遠距離輸送など社会基盤を大きく変革してきました。一方で、数億年をかけて生成した化石燃料を約200年で大量消費することで、地球規模の炭素循環にアンバランスを生じさせ、地球温暖化・気候変動の要因とされるようになっています。化石燃料が燃焼して発生する二酸化炭素(CO2)は主要な温室効果ガス(Greenhouse Gas)の1つとされ、削減対象となっています。

化石燃料を代替し、燃焼により大気中の二酸化炭素(CO2)を増加させない燃料が求められており、現在、以下の燃料が「カーボンニュートラル燃料」として、注目されています。
① 炭素Cを含まない燃料:水素(H2)、アンモニア(NH3
② 水素と回収されたCO2より合成される燃料(e-Fuel):炭化水素(CmHn)、アルコール(CmHnOH)※2
③ 生物由来のバイオ燃料:メタン(CH4)、エタノール(C2H5OH)、バイオディーゼル油等

① の燃料は、再生可能エネルギによる水の電気分解等によって得られる水素(H2)、および水素(H2)と窒素(N2)の合成によって得られるアンモニア(NH3)で、炭素を含んでいないので燃焼しても二酸化炭素(CO2)を発生しない燃料です。
② の燃料は、工場排気や大気中から回収される二酸化炭素(CO2)と水素(H2)の合成から生成され、燃焼して発生した二酸化炭素(CO2)は元の大気に戻るだけです。その後、再び回収され、燃料製造に再利用されます。
③ の燃料は、生物資源由来の燃料で、その燃焼で発生する二酸化炭素(CO2)は、生物の成長段階で吸収した二酸化炭素(CO2)とバランスしており、大気中の二酸化炭素(CO2)を増加させないとされています。

上記のカーボンニュートラル燃料は、利用機器(舶用、陸用、定置発電等)によって、エネルギ密度※1、燃料供給インフラなどが考慮され、選定・利用されます。今回のヤンマーテクニカルレビューにおいては、カーボンニュートラル燃料に対応するエンジン技術開発として、【Topic1】アンモニア燃料への対応技術の研究、【Topic2】バイオ燃料:メタン(CH4)への対応技術の研究開発、【Topic3】多種燃料対応火花点火機関の開発の3件をご紹介いたします。

  • ※1体積あたりのエネルギ(Wh/L)、重量あたりのエネルギ(Wh/kg)などが、エネルギ密度として指標に用いられます。
  • ※2CmHn、CmHnOHは、それぞれ炭化水素、アルコールの一般式として記載しています。

著者

ヤンマーホールディングス株式会社
技術本部 中央研究所 基盤技術研究センター
燃焼グループ

武本 徹

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