お客様事例紹介

有限会社共幸水産 様〈6EY17W-Z〉

有限会社共幸水産 様

住所:島根県隠岐郡西ノ島町

まき網船「第十二千鳥丸」

全長・幅・深さ(m):24.80×4.48×1.62
総トン数:19G/T
主機関:6EY17W-Z
補機関:YMGN30B
出典:YANMAR mare vol.47(2026年発行)

アジ・サバ・イワシが獲れる好漁場 共幸水産55年の歩み

島根県隠岐郡の日本海を舞台に、一年を通じてアジやサバ、イワシのまき網漁を展開する有限会社共幸水産。近年、とりわけ好漁に沸くこの海域において、同社は連日洋上に活気あふれる光景を描き続けている。昭和61年の法人化を経て、およそ55年にわたりこの豊かな漁場に根を下ろし、愚直に網を引き続けてきた地域を代表する漁業者である。
創業以来、先代たちが築き上げてきた伝統は、現在3代目へと確かに受け継がれている。同社が擁する全7隻の船団が担うのは、単に魚を獲ることだけではない。地域経済を支え、船員とその家族の暮らしを守るという極めて重要な役割である。
変化の激しい水産業界の中で、いかにして確かな水揚げを維持し、次代へと事業を繋いでいくか。同社の歩みは、常に現場で働く「人」を大切にする歴史でもあった。そして、過酷な洋上で彼らの命を預かり、その操業を足元から力強く支え続けてきた存在こそが、全7隻に搭載されているヤンマーエンジンである。

(有)共幸水産 取締役会長
平木 操氏

(有)共幸水産 代表取締役
平木 哲也氏

ヤンマーへの深い信頼と船機一括発注が導いた新船建造

老朽化した旧船のリース期間満了を機に、共幸水産は新造船「第十二千鳥丸」の建造を決断した。その際、同社が下した大きな決断が、ヤンマーへ「船機一括(元請け)」としてプロジェクトのすべてを委託することだった。
通常、造船所とエンジンメーカーへは個別に発注されるケースも少なくない。しかし、平木操取締役会長(直前社長)の胸中にあったのは、長年にわたるヤンマーへの絶対的な信頼であった。「ヤンマーさんとの深い信頼関係があったからこそ、今回の建造に踏み切ることができた」と操会長は振り返る。
その信頼の理由は、単なるマシンスペックの高さに起因するだけではない。かつて洋上でロープを巻き込み、クラッチが破損するという重大なトラブルに見舞われた際、ヤンマーが示した対応力が経営陣の心に強く残っているからだ。通常の対応であれば代替部品の調達に数ヶ月を要し、その間の休漁リスクは甚大な損失に直結する。
しかし、ヤンマーの担当営業や技術スタッフは違った。すぐさま長崎から代替品を緊急で取り寄せ、わずか数日で応急処置を完了させたのである。休漁を最小限に留め、操業を止めないことを最優先に動いた、この泥臭くも迅速な連携。その積み重ねが、今回の船機一括発注という形に見事に結実している。

最新鋭の機能性と乗り心地、そして6EY17W-Zの実力

ヤンマーおよび造船所と何度も設計検討を重ねて完成した「第十二千鳥丸」は、総排水トン数を前船の38トンから42トンへと拡大し、船幅と全長を広げた新型形状を採用している。長年現場に立ち続けた操会長が「乗る人間の身体に優しい船を」と願った通り、船体を大きくしたことで波の衝撃を和らげ、優れた安定性と静粛性を実現。現場の船員たちからも「とにかく揺れない」と好評を得ている。
一般的に船体が重くなれば船速は落ちるが、その懸念を解消したのが心臓部に据えられたヤンマーの中速エンジン6EY17W-Zだ。トルクが強く粘り強い特性を持つこのエンジンは、過負荷がかかる場面でもタフさを発揮し、重量増にもかかわらず23ノットを超える十分な船速を維持している。さらにブリッジには最新鋭の全周ソナーをフル装備し、最大4000メートル先のわずかな魚群をも的確に捉えることが可能だ。
居住性へのこだわりも徹底している。近海操業の特性を考慮して不要なシャワー室を廃止する一方で、荒天時でも船内・船外の両方から安全にアクセスできるトイレスペースを新設。さらに床面を高くして波の浸入を防ぐ「二重デッキ方式」を採用し、安全性を飛躍的に高めた。「スピードだけを追い求めず、安全性と居住性を改善した結果、以前と変わらない速さを出すことができた」と、操会長は満足そうに手応えを口にする。

出力性能と長期運用における信頼性が評価され、主機関には6EY17W-Zを搭載

夜間作業時の作業灯や船内照明を安定して支える補機関としてYMGN30Bを採用

安全性と作業効率を考慮したフラットなデッキ

広々とした空間のブリッジは黒を基調とした内装で、夜間作業時の視認性を確保

5ヵ年整備計画と、共に紡いだ「ワンチーム」の絆

船を常に良い状態で維持するため、ヤンマーは5年間の整備計画を提案している。これは、重整備と軽整備を年次ごとに分散させ、複数ある所有船の整備時期が重ならないようにシフトを組む、将来を見据えた維持管理計画である。
この体制がもたらす経営メリットは大きい。同社にとっては突発的な故障による休漁損失を未然に防ぎ、年間の整備経費を正確に予見できる。一方のヤンマー側にとっても、人員確保や部品の事前準備を計画的に行えるため、工期の遅れが発生しないという相乗効果を生んでいる。また、今年から燃料を軽油へと切り替えたことで排気臭が大幅に低減され、環境負荷の低減と整備周期の延長という次なるステップも見据えている。
そして、この強固な協力関係の底流には、ビジネスの枠に留まらない両社の深い歴史があった。かつて操会長が中心となって結成した、エンジン、電気、網、造船のプロが結束する通称「平木一家」。その現場を最前線で支え、共に強固な基盤を築き上げてきたのが、ヤンマー舶用システム山陰支店の営業・技術チームである。「仕事だけの繋がりじゃない。仲間であり、ファミリーだと思っている」と操会長は笑う。
こうした確固たる絆を土台とし、令和5年、共幸水産は平木哲也氏が3代目社長に就任して世代交代を完了させた。現場を誰よりも知る新社長は、若い船員たちの自覚を促すため「肩書きを与えて役割を持たせ、褒めて育てる」という、人を大切にする組織改革を進めている。「会長が築いてくれた土台の線路を、踏み外さず真っ直ぐ走れるようにしていきたい」と語る哲也社長。急激な規模拡大を追うのではなく、安定した成長を堅持し、船員とその家族が安心して長く働ける環境を作ること。新社長の言葉に、操会長も静かに頷く。
ヤンマーというパートナーが供給する信頼のエンジン。そして現場を支えるヤンマー舶用システム山陰支店のチームワーク。それらが一体となり、共幸水産の「第十二千鳥丸」は、社員たちの未来と安心を乗せて、今日も確かな航路へと舳先を進めている。

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