世界で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症も落ち着き、制約のない日常生活のありがたみをあらためて感じております。皆さまにおかれましても、学業や仕事の活動範囲が広がり、充実した毎日を送られていると思います。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻が続き、中東情勢の不安定さが深まるなど、地政学リスクが大きくクローズアップされ、私たちを取り巻く環境はより複雑になってまいりました。引き続き先行きが見通しづらい状況下ではございますが、来年も皆さまにとって、健康で充実した年になりますようお祈り申し上げます。
山岡育英会は、私の祖父であり、ヤンマー創業者である山岡孫吉が、「世界の平和と繁栄ならびに、文化の向上に寄与する人材の育成」を目的として1950年に創設いたしました。以来、今年で75年を迎え、卒業生は6,000名を超え、歴史ある奨学財団のひとつとなりました。卒業生の皆さま方が、国内はもとより、世界各国で活躍されていることは、当会の誇りとするところです。高校生、大学院生、さらにはタイ、インドネシアなど東南アジアのジュニアハイスクール生、シニアハイスクール生への奨学金事業に加え、昨年度より、高校生奨学生が大学に進学する際に、引き続き4年間奨学金の支給を延長するプログラムをスタートさせました。また外国人留学生については、広くアジアから日本での研究活動を行う大学院生に焦点を当て、立命館アジア太平洋大学(APU)、愛媛大学、鹿児島大学からの採用をはじめました。現在では国内78名、東南アジア161名の総勢239名が学業に励んでおります。
このように日本国内のみならず海外でも奨学金事業を拡大し、グローバルに奨学金を必要とする学生の皆さんが、質の高い教育を受けられるようサポートをしてまいりました。一方で、経済のボーダレス化やデジタル化が進み、社会を取り巻く環境が大きく変わる中、世界的に「貧困と格差」が大きくクローズアップされております。混沌とする世界情勢により、この問題はさらに加速していると言わざるを得ません。あらためて山岡育英会として、何が出来るかを問う時期に差し掛かってきていると感じております。
ヤンマーグループの理念である「A SUSTAINABLE FUTURE —テクノロジーで、新しい豊かさへ。— 」には、「安心して仕事、生活が出来る社会」の実現といった豊かな未来への想いも込められています。このような社会を目指し、とりわけ教育においては、誰もが平等に質の高い教育を受けられる機会が必要です。私たちはこの想いのもと、公益財団法人として「貧困と格差」に真摯に向き合い、奨学金事業を通じてどのような支援や取り組みができるかを考えてまいります。
山岡育英会の事業は、ヤンマーが長年続けてきた<人と未来を育む活動>そのものです。ヤンマーグループは、この受け継がれてきた想いを“人や、未来に、可能性という花を咲かせ続ける”という意味を込めて「HANASAKA(ハナサカ)」と呼んでいます。次世代の育成を続けることは、世代から世代へ可能性のバトンをつなぐことになり、サステナブルな未来を作ることにつながります。これからも、“チャレンジする人” “リーダーシップを発揮する人” “テクノロジーを進化させる人” “スポーツや文化で感動を生み出す人” など、あらゆる領域の人材を支えることにより、社会に貢献してまいります。
最後になりましたが、長きにわたり奨学財団としての事業を継続できましたのも、ひとえに内閣府をはじめ、各大学、関係各位の皆さまのご理解、ご支援の賜物と心から感謝申し上げます。今後とも一層のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。