お客様事例紹介

有限会社うねめ農場 伊東 敏浩様〈密苗〉

有限会社うねめ農場
代表

伊東 敏浩様

  • 地域 : 福島県郡山市
  • 掲載年 : 2023年
  • 作物・作業 : 水稲(108ha)/いちご/大豆
  • 密苗導入面積 : 108ha

苗箱数約6,000枚の削減を実現、厚播きで収量アップにも成功

福島県郡山市の西部に位置する片平町で、100年以上にわたり農業を営んでこられた「うねめ農場」。現在は9代目の伊東さんが経営を継ぎ、水稲を中心とした大規模経営を行っておられる。お父様の代から規模を拡大してこられたが、ほ場が点在しており、以前から作業の省力化が大きな課題のひとつだった。また、人手不足が進む中で収益をあげるには、コスト削減も必要だった。
7年ほど前からは、省力化の一環として直播や乾籾200g(育苗箱1箱当たり)の厚播きにも取り組んでおられたが、思ったようにコスト削減にはつながらなかったそうだ。
そして、もっと効率的に成果をあげる技術はないか、と模索されていた時に出会ったのが密苗だ。「展示会でヤンマーさんから密苗の話を聞いて興味を持ち、その後、密苗ならこの人、とヤンマーの三瓶さんを紹介してもらいました。話を聞く中で、今後うねめ農場が成長するために必要な『新技術の導入』や『コスト削減、増収』という課題解決に密苗がぴったり当てはまり、とても意欲が湧きました」と伊東さん。
ただ、お父様やベテラン社員からは、昔ながらの慣行苗による作業を変えることに心配の声もあがったそうだ。「乾籾300g(育苗箱1箱当たり)の厚播きはあり得ない、と言われました。でも、密苗という技術が確かにある中で、良いも悪いもやってみなければわかりません。上手くいかなければ改善策を考えれば良いのだから、まずはやってみるしかない」と決意され、ヤンマーとの付き合いが始まった。「ヤンマー担当の古宮さんが、育苗から収穫、収量アップまで全てお手伝いしますのでお任せください、と言ってくれたのが心強かったですね」と伊東さん。前年にはヤンマーのYR8D田植機の実演機を用いて厚播きでの植付け精度を体感されていた伊東さん。収量にも問題がなかったことから、コスト削減の効果を高めるため、思い切って全面積で密苗をスタートされた。

展示会で密苗の伝道師三瓶部長と出会い、意欲が湧いたという(写真左)。YR8Dに「植付け精度がいい。ここが他社機との違いです」と伊東さん(写真右)。
展示会で密苗の伝道師三瓶部長と出会い、意欲が湧いたという(写真左)。YR8Dに「植付け精度がいい。ここが他社機との違いです」と伊東さん(写真右)。

伊東さんの育苗への取り組み

密苗に取り組む中で伊東さんが特に注意されたのが、育苗での温度管理だった。初年度は4月下旬から一気に気温があがり、葉焼けを起こしそうになってしまったそうだ。「まだミラーシートを剥がせないし、ハウスを開けると風でシートが飛んでしまいます。そこで通気性の良い不織布シートに変更して焼けを防ぎました」と伊東さん。さらに社員の方々が収集した情報を参考に、次年度からは気温の急上昇に備えて、ハウスに空動扇を設置して熱を逃がすなど工夫を重ねられた。

このような「高温対策」と並んで育苗のポイントとなる「育苗ローラーがけ」では、育苗器から出した日の午後一番に育苗ローラーをかけることが重要となる。芽が小さいうちから重いローラーをかけることにためらう方も多いが、うねめ農場では、栽培未経験の若手社員が作業を担当したため、先入観もなく思い切ってローラーがけができたそうだ。

また、根張りを重視し、プール育苗からスプリンクラーシャワーかん水に切り替え、「苗上手アクセル(チッ素液肥)」や「苗上手ブレーキ(リン酸液肥)」などの追肥もかん水と同時にホースで散布でき、健苗育成と省力化の両立につながった。
※苗上手は(株)ミズホの商標です。

高温対策のためハウスの天井に空動扇を設置(写真左)。徒長や病気の発生も育苗ローラーをかけて抑制(写真中央)。かん水チューブで薬剤を同時に散布し、病気予防と省力化(写真右)。
高温対策のためハウスの天井に空動扇を設置(写真左)。徒長や病気の発生も育苗ローラーをかけて抑制(写真中央)。かん水チューブで薬剤を同時に散布し、病気予防と省力化(写真右)。

育苗の基本を実行し、葉先がピンと揃った苗に生育

こうして、育苗の基本となる「温度管理」「育苗ローラー」「追肥散布」の3つを着実に実行されたことで、2年目、3年目ともなると、葉先がピンと揃った芝生のような苗が育ったそうだ。「最初の2週間は古宮さんが午前と午後、毎日通ってくれて、愛情をもって播種から育苗を手伝ってくれました。ノウハウが豊富で適宜アドバイスをもらえたことも育苗が成功した大きな要因だと思います」。

密苗の効果をお聞きすると、「苗箱数が約17,000枚から11,000枚に減ったので、苗の運搬も田植えも楽になりましたよ。田植機1台につき6名体制だったのが2名体制に減りました。これまで繁忙期は外部から労働力を借りていたけど、今は社内のメンバーだけでできるようになったので、人件費が違いますね」と伊東さん。半日に2回必要だった苗箱の運搬回数も1回に減り、ほ場を行き来する労力と時間が軽減されたそうだ。田植機は、実演で植付け精度を実感されたYR8Dを最初に導入され、現在までにYR8DとYR8DAで計3台の密苗仕様の田植機を導入いただいている。「爪幅の狭い専用の爪なので、水があってもしっかり植えられて、転び苗がだいぶ少ないです」と評価をいただいた。

対策から改善へのサイクルでさらなる収益アップへチャレンジ

密苗によってコストを削減し、収益アップを実現された伊東さん。2021年からは、全面積で生育ステージごとにこまめな追肥を行ったことで増収の効果も現れたという。「米が値下がりする一方で肥料は高騰しています。追肥による出費のリスクはありますが、増収すればある程度の収益は取れるという経営判断です」。また、基本に忠実に行えば厚播きでも問題なく育つという確信をお持ちになり、播種量も乾籾約290g(育苗箱1箱当たり)に増量。その年の課題は翌年に対策する、というサイクルで毎年改善を重ねられ、早めの溝切りなど移植後の管理も丁寧に行われたことで、2021年の平均反収は10.2俵になった。

「今後は反収11俵、12俵を目指せるのではないか、と自信がつきました。大規模だからできない、と諦めないことが大事だと思っています。密苗や機械の導入で無駄な仕事が減れば、大規模でも楽に管理ができます。春も秋も楽になれば、こんなに楽しいことはないと思います」と笑顔の伊東さん。見事な稲の姿を見て、これまでとは違う作業方法に抵抗を感じていたベテラン社員も今では納得されたご様子。最近では密苗を始める地域の方も増えている。一方で若手社員の方々にとっては密苗がスタンダードなので「もっと苗箱を減らせないか」と積極的に取り組んでおられるそうだ。

見事な稲の姿は密苗に取り組んだ3年間の集大成。
見事な稲の姿は密苗に取り組んだ3年間の集大成。

うねめ農場をモデルに、密苗に挑戦する農家が増加

ヤンマーのサポートについてうかがうと、「担当の古宮さんが頻繁に稲の様子を見にきてくれて、写真を撮って三瓶さんに送り、状況を把握した三瓶さんから私にアドバイスが届く、という形で連携をとって支えてくれました。育苗だけでなく、田植えから収穫、収量アップに至るまで、ハードとソフトの両面で寄り添ってサポートしてくれたことがありがたかったですね」と伊東さん。 うねめ農場が密苗で収量アップやコスト削減に成功した様子を見て、地域では密苗に挑戦する大型農家が少しずつ増えているそうだ。なかには、密苗によって規模拡大に成功した農家もあり、郡山市の農業はますます活気づいている。

「古宮さんと出会って密苗に挑戦してよかった」と伊東さん。
「古宮さんと出会って密苗に挑戦してよかった」と伊東さん。

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