お客様事例紹介

十和田アグリ株式会社 竹ケ原 直大様〈密苗〉

十和田アグリ株式会社 代表

竹ケ原 直大 様

  • 地域 : 青森県十和田市
  • 掲載年 : 2025年
  • 作物・作業 : 水稲(82ha)/大豆(22ha )/小麦(22ha)/牧草(30ha)

密苗は規模拡大に欠かせない省力化技術。若者が憧れる新しい農業へ

今回取材したのは、2016年にいち早く密苗を導入された青森県の十和田アグリ株式会社、竹ケ原さん。新技術を導入して農業のイメージを変えたい、と新しい取り組みに次々と挑戦され、2024年には「田中稔賞」にも輝いた。密苗をはじめとする省力化・効率化の取り組みやその効果をうかがった。
※青森県稲作農業の発展に貢献した個人や団体に贈られる賞

気象条件に合う効率化の技術を模索し、密苗に辿り着いた

家業を継ぐために新規就農され、2013年に十和田アグリを設立された竹ケ原さん。就農当時から規模拡大を目指し、離農する近隣農家から農地を積極的に引き受けることで栽培面積は年々増加していった。「1日にこなす作業面積が増えていくので、従業員の肉体的負担も大きく、計画通りに作業を終わらせることが厳しくなっていました。この先も面積を拡大していくには効率化が不可欠でした」と竹ケ原さんは語る。

育苗から移植までの作業時間を短縮するべく、一度は鉄コーティングの直播にも挑戦されたが、青森は「やませ」の影響で夏でも低温になることがあるため、播種から収穫までの積算温度が足りず、収量面で納得のいく結果が得られなかった。そこで、気候条件に合うベストな技術を模索していたところ、2016年にヤンマー担当者から「密苗」という新技術が確立したと聞き、30aから試験的に導入された。
※6〜8月頃、北海道や東北、関東などで吹く冷たく湿った風

「密苗でなければここまでの面積拡大はできていなかった」と話す竹ケ原さん(写真右)と従業員の河野さん(写真左)。
「密苗でなければここまでの面積拡大はできていなかった」と話す竹ケ原さん(写真右)と従業員の河野さん(写真左)。

育苗期間が短いから健苗づくりに集中できる

慣行苗では乾籾120gだった播種量を乾籾280gに増やして密苗をスタート。苗づくりで気を付けたのは、播種時の覆土の量だという。「かん水時に種籾が露出すると、水分をうまく吸収するものとしないものが出て生育ムラにつながりました。それが1年目にわかったので、2年目からは最適な床土の量をミリ単位で決めました」。加えて、約3日間育苗器に入れ、数ミリ程度芽が出そろってからハウスに移すことで生育ムラは改善されたそうだ。

ハウスに移した後すぐに気温が上がりすぎると徒長してしまうため、温度管理も徹底された。現在は育苗専任の担当者を配置して数時間おきに生育状態を確認し、ハウスの開閉で気温を調整されている。「慣行では約40日間だったハウスでの管理期間を2週間程度にすることで、人手をかけてしっかり管理ができるようになり、慣行より均一な健苗ができています」。

1年目から効率化の効果を実感され、さらに収量面でも納得された竹ケ原さんは、3年目で当時の全面積、約40haを密苗に切り替えられた。思い切った決断だが、「面積を拡大し続ける計画だったので、5年先、10年先を見据えれば技術革新は不可欠だと考えました」と迷いがない。

水と温度の管理をしっかりと行うことで、葉先の揃った見事な健苗を育成されている。密苗の成功ポイントをうかがうと「どの場所に行っても、同じような水位で生育を進められるような状況をつくるために代かきがとても重要だと思います」と竹ケ原さん。
水と温度の管理をしっかりと行うことで、葉先の揃った見事な健苗を育成されている。密苗の成功ポイントをうかがうと「どの場所に行っても、同じような水位で生育を進められるような状況をつくるために代かきがとても重要だと思います」と竹ケ原さん。

密苗とスマート農機の相乗効果で、コストも労力も削減

移植時にも密苗の効果は感じられたのだろうか。「慣行苗では1反当たり約30枚だった苗箱数が8枚に減って、ハウスからほ場への運搬回数も、1日約20回から6〜8回に減りました」と話すのは、従業員の河野剛士さん。「慣行苗の時は、軽トラへの苗箱の積み込みで腕はパンパン、腰にも負担がかかっていましたが、回数が1/3になってかなり楽になりました」と喜んでおられる。加えて竹ケ原さんも、「苗箱数や育苗日数が減ったので資材費や人件費なども抑えられ、生産費の低減にもつながっています」と、コスト面でのメリットを実感されたようだ。

田植えには、YR8Dを2台使用されている。「手元だけで調整・切り替えができて操作性が良いし、密苗専用の植付爪は小さく確実にかき取って安定して植付けられるので、満足しています」と竹ケ原さん。さらに、オペレータの負担をできる限り軽減したいと、ニコン・トリンブルの高精度な自動操舵システム「GNSS受信機NAV-900」を追加搭載されており、「隣接条植付け時に線引きマーカーの跡が見えない状態でも、一発勝負の植付けを確実にまっすぐ決めてくれる」とお墨付きをいただいた。

苗箱数が減ったことで、栽培面積が2倍に拡大した今も拡大前と同じ9棟のハウスで管理できている。
苗箱数が減ったことで、栽培面積が2倍に拡大した今も拡大前と同じ9棟のハウスで管理できている。

自動操舵システムを追加搭載したYR8Dが、高度な植付け精度を実現。自動操舵ならまっすぐ走れて、後工程も楽に行うことができる。
自動操舵システムを追加搭載したYR8Dが、高度な植付け精度を実現。自動操舵ならまっすぐ走れて、後工程も楽に行うことができる。

良質な米づくりで、権威ある「田中稔賞」を受賞

竹ケ原さんの米づくりには妥協がない。肥料には、竹ケ原さんがJAと共同で密苗用に開発した混合肥料を使い、安定した肥培管理を実践されている。さらに、先代からの取り組みである耕畜連携も継続。地域の酪農家に稲わらを提供し、回収した堆肥で丁寧に土づくりをしていることが高品質な米の生産につながっている。また、密苗と同時期にスマート農機も積極的に導入を始めた。田植機の他、トラクターや乗用管理機にも自動操舵システムを導入し、無駄なく効率的に肥料や農薬を散布できる体制が整っている。

こうした取り組みが高く評価され、青森県稲作農業の発展に貢献した個人や団体を表彰する「令和6年度 田中稔賞」を受賞された。県内でも権威ある賞の受賞に、取材や視察の依頼も増え、注目が集まっている。「見られているからこそ、規模拡大をしても手をかけるべきところに手をかけて品質を追求し、収量もしっかり確保したいですね」と竹ケ原さん。

今後のビジョンをうかがうと、「密苗やスマート農機などの新技術を取り入れて省力化・効率化し、農業のイメージを変えたい。そうすれば、若い人たちが就農したくなる新しい農業の可能性が拓けるのではないかと思っています」。地域の農業を守る担い手としても、企業を成長させる経営者としても、常にベストを探り続けておられる。

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4~8条まで、密苗にベストマッチな田植機

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