上村 健一 様
上村 香織 様
- 地域 : 北海道江別市
- 掲載年 : 2026年
- 作物・作業 : ブロッコリー(6ha)/麦(10ha)/とうもろこし(2ha)/肉牛(20頭)

北海道江別市でブロッコリーを栽培する上村健一さんと香織さんご夫婦。作業効率向上のため、2025年に導入した直進アシスト付きの乗用全自動野菜移植機「PW200R」で、30a当たり約1時間の移植作業時間の短縮と、植付け時のロス低減を実現された。その手応えをお二人にうかがった。
道内でも有数のブロッコリー産地である江別市野幌地域。かつては稲作が盛んだったが、1990年代から収益性の高いブロッコリーへの転作が地域一帯に広まり始め、個人農家だった健一さんのお父様もその流れを汲んで2001年に水稲からブロッコリー栽培へと舵を切られた。
当時、健一さんは別の仕事をされており繁忙期にだけ手伝われていたが、ブロッコリー栽培に人手が求められるようになり、2004年に本格的に就農。それ以来、地域の農地を譲り受けながら、栽培面積を着実に拡大されてきた。
その一方で、常に課題となっていたのが作業の効率化だ。収穫期の臨時雇用を除けば、日々の作業は健一さんと香織さんの2人体制。就農当初、春まきの4月末と秋まきの8月初頭の植付け時期は、歩行型の汎用野菜移植機を1人1台、計2台使って移植作業に汗を流してこられた。2015年頃からは乗用の全自動野菜移植機PF2Rを導入され、健一さんがオペレーターを、香織さんが後方で植付けの手直しや補植を担当するという二人三脚の作業体制となった。さらに2023年には乗用の全自動野菜移植機を導入された。こうして面積拡大にともない、作業効率を上げると同時に身体的負担の軽減を図ってこられた。
以前から、「人手がない中で面積を広げていくには、やはり機械に頼らなければ」と考えていた健一さん。2024年に直進アシスト機能付き乗用全自動野菜移植機「PW200R」の開発モニター機を試したところ、作業効率の大きな変化を実感され、2025年4月の発売と同時に導入された。
PW200Rの導入後、健一さんが実感している最大の変化は、植付状態を自身の目でしっかり確認しながら移植できることだ。「以前は、まっすぐ植付けるために前方に神経を集中させる必要がありました。PW200Rは手放しでもまっすぐ走ってくれるので、作業中でも後方を確認し、植付けの深さを細かく調整できるようになりました」。
特に江別では、水田に表土を入れて畑に転換させているため土質が均一ではなく、土の硬さに応じた細やかな深さ調整が欠かせないという。
以前は香織さんが土の状態を見極め、運転中の健一さんに「深く!」「浅く!」と機械音に負けないくらい声を張り上げて伝えていたが、PW200Rの導入後は香織さんもこの重労働から解放された。
植付けがまっすぐなため、その後の管理作業でもハンドル調整に神経をすり減らすことがなくなった。そのメリットを体感された健一さんは現在、管理作業用に直進アシスト機能を搭載したトラクターの導入も検討されている。「移植作業と同じルートで管理作業ができるので、株を踏んでしまう心配もなくなります。一度その快適さを知ってしまったら、きっと手放せなくなると思います」。
近年の気候変動で難しくなった育苗の課題克服にも手応えを感じておられる。
北海道でも6月頃から30度を超える日が続くようになり、この数年は高温で苗が徒長しやすく、植付け後も干ばつや高温で枯れてしまうこともあるという。その命運を分けるのが植付け精度だ。「万全ではない苗をいかにベストな状態で植付けるか。その点でも、植付けに集中できるPW200Rなら植深さや覆土圧の調整で補うことができます。苗取りもスムーズで、どのような苗でもある程度応えてくれると感じます」。
苗の状態や土質を見極め、ご自身が納得できる「ベストな植付け」を追求される健一さん。PW200Rの導入後は植付精度の向上を確かな手応えとして実感されているようだ。
香織さんも「以前は収穫後のほ場に成長しきれなかったブロッコリーが残っていましたが、今は均一に成長してくれます。収穫を終えて、すっきりとしたほ場を見ると『全部穫り切れた!』と気持ちが良いです」と笑顔を見せてくださった。
PW200Rは、植付け時の苗のロス低減はもちろん、安定した収穫にも貢献できているようだ。
お二人が実感されているもうひとつの大きな変化が、移植作業にかかる時間だ。30aにつき野菜トレイ約70枚分を移植する際、以前は2時間半から3時間を要していたが、現在は約2時間にまで短縮された。これは、一度に積める野菜トレイ積載量が増えたためだ。PW200Rは最大28枚搭載できるため※、一辺300mのほ場を苗つぎなしで往復できるようになり、苗つぎの回数が6回から3回へと半減した。機械を止める時間が減り、連続して作業できる時間が増えたことが最大1時間の差を生み出している。
「数時間後に雨の予報が出ると以前は作業を諦めていましたが、今は『2時間で終わるなら今からでも間に合う、やってしまおう』と、降り出す前に作業を終えられるようになりました」と顔をほころばせる香織さん。
お二人は肉牛の生産も手がけており、短縮によって生まれた時間は牛の世話や堆肥の管理にも充てられる。1日の時間を効率的に使えるようになったことで、ブロッコリー栽培だけでなく農場全体の作業がスムーズに回っている。
※追加予備苗台(オプション)装備時
「最近は主人に、自分ばかり機械に乗って楽をしていると文句を言っているんです」と笑う香織さん。ご自身はまだPW200Rのハンドルを握ったことがないそうだが、「次はオペレーターと補植の役割交代ですね。乗れと言われればいつでも乗りますよ」と意欲的だ。
健一さんも「一度基準線を登録し、速度固定で作業すれば、旋回位置手前で自動停止してくれるので、行きすぎて側溝に落ちる心配もありません。この操作性なら、操作に不慣れでもすぐに乗りこなせるでしょう」とうなずく。PW200Rが「オペレーターを選ばない」ことで、臨時のパートやアルバイトに作業を任せるという選択肢も生まれ、今後の面積拡大の足がかりとなりそうだ。
ブロッコリーは安定的な需要があり、豊作でも値崩れしにくいという特徴がある。2026年度からは農林水産省によって「指定野菜」に定められ、今後も一定の消費量が見込まれるポテンシャルの高い作物だ。その優位性を最大限に活かし、人手が限られている中でも安定的な収入につなげるには、作業の精度を高め効率化する機械の力が欠かせないと健一さんは考えておられる。
一方で、最大の気がかりとなっているのが近年の気候変動だ。長雨かと思えば日照りが続くこともあり、天候が不安定になっている。その影響で害虫も増え、防除にも一手間二手間かけなければ収量が減ってしまうのが現状だと話す健一さん。「良い苗づくり、良い定植、良い活着と、少しでも良い条件を積み上げていくことが最終的にはおいしくて見た目も良いブロッコリーづくりにつながります。厳しい気候の下でも機械の力でその条件を整えて、品質の高い作物づくりを実現していきたいですね」。
牛ふんを堆肥として活用した土づくりで、お二人のブロッコリーはお客様からも「甘い」と評判だそう。機械化で生み出した余力を、品質へのこだわりと面積の維持・拡大に向け、今後は仲間の農家との法人化など新たな経営の形も視野に入れておられる。「担い手のいなくなった農地を預かり、産地を守らなければ」と話す健一さんから、穏やかながら力強い意志をうかがえた。
高能率に、高品質な野菜づくり。