お客様事例紹介

有限会社安田興和農事 本田 充様 〈密苗〉

有限会社安田興和農事
代表

本田 充様

  • 地域 : 新潟県阿賀野市
  • 掲載年 : 2026年
  • 作物・作業 : 水稲(76ha)/いちご(24a)/いちじく(10a)/その他野菜(10a)

若手が育つ現場のつくり方。密苗と初冬直播で実現する作業効率化と平準化

密苗と11月に直播をする「初冬直播」を組み合わせ、作業効率化と年間を通じた作業量の平準化を実現している安田興和農事。限られた人手で経営規模を拡大するための具体的なヒントが得られる事例として、代表の本田充さんに現場での実感をうかがうため、ほ場を訪れた。




目次






苗運搬の負担と移動時間ロスを軽減

安田興和農事は、越後平野の穀倉地帯に位置する新潟県阿賀野市で3軒の農家によって設立され、着実に規模拡大を遂げてきた。現在代表を務める本田さんが15年ほど前に就農した当時は約30haだった面積も、現在は水稲だけで76haにのぼる。水稲は7品種を扱い、加えて県のブランドいちご「越後姫」や野菜栽培を組み合わせ、年間を通じて作業量が安定するよう工夫されている。

それでも、春作業の負担の重さは長年の課題だった。苗箱数は1万枚を超え、田植え時には軽トラックへの積み込み作業が従業員に大きな身体的負担をかける上に、運搬に往復30~40分かかるほ場が多く、移動時間のロスも大きい。

転機となったのは、10年ほど前。近隣で開催されたヤンマーの実演会で、苗箱数8枚/10aを実現する密苗の技術に出会い、「これなら育苗や田植えの作業負担を増やさず面積拡大できる」と可能性を感じられた本田さん。密苗仕様の田植機を導入し、密苗を始められた。

独自の播種量で適期作業時間確保と省人化を実現

導入に当たり、本田さんには「全ての苗を適期に植えきれるだろうか」という心配があった。その解決策として採用したのが、あえて播種量を抑えて育苗期間を延ばす方法だ。一般的な密苗の乾籾播種量250~300g/箱に対し、同社では200g/箱に調整することで植付け日数に余裕を持たせ、適期での田植えを実現している。

播種量を抑えながらも、慣行で18枚/10aだった苗箱数は13枚/10aに減り、苗の運搬や田植機への積み込み時の作業負担は大幅に軽減された。

1度の運搬で植付けできる面積は44aから61aへ拡大し、運搬回数も減ったことで移動時間のロスも解消。さらに、「受託分も含めると苗箱数は約2万枚ありますが、自社分を一部密苗にすることで育苗ハウスを増設せず面積拡大に対応できました」と本田さんは語る。

中でも最大の利点と感じているのが、人員のスリム化だ。密苗導入前は、田植機1台につきオペレーター1人と補助者2人の3名体制で2台を稼働させていたが、苗つぎの回数が減ったことで補助者が1人で対応できるようになり、2名体制での田植えが可能になった。「高齢で引退する従業員が増え、以前は田植機が2台あっても1台しか動かせない日もありましたが、今は2台体制を維持できています」と確かな手応えを感じておられる。

長年にわたり連携し、営農改善を進めてきた本田さん(写真右)と営業担当(写真左)。
長年にわたり連携し、営農改善を進めてきた本田さん(写真右)と営業担当(写真左)。

直進アシストで若手の即戦力化を実現

2022年には、直進アシスト付き田植機「YR8DA」を2台導入された。オペレーターを務めるのは、就農2年目の若手従業員と田植え経験の浅い従業員だそう。それでも、「少し教えるだけですんなりと自立してくれました。マーカーが見えない場所でも直進できるので、植付けが熟練者並みにまっすぐです」と本田さん。

さらに、YR8DAと栽培管理システム「ザルビオフィールドマネージャー」の連携による可変施肥も大きな成果を上げている。地力マップに基づきほ場の地力差に応じて施肥量を自動調整できるため、「経験の浅い従業員が操作しても、ほ場の一角に肥料が落ち過ぎることがありません。計画通りの施肥ができ、部分倒伏が軽減されました」とその効果を実感しておられる。

直播で作業を分散し春も休日を確保

春作業の期間は従業員が休みを取ることもままならなかったため、その打開策として、11月に播種をする「初冬直播」に挑戦されている。田植えの一部を秋に分散することで春の労働時間を減らし、従業員も週1日の休日を取れるようになった。「若手従業員が辞めずに続けてくれているという事実が、働きやすい環境になり、従業員の満足度が高まった証です」と本田さんの言葉に迷いはない。

30aから始めた直播の面積は、現在は9haにまで拡大されている。「年間の作業量をできる限り一定にならすことができるので、春作業のためだけに新たに人材を確保する必要がありません」。現在の人員体制のまま、さらなる面積拡大へと対応できる体制が整った。

2026年5月、田植え作業の様子。
2026年5月、田植え作業の様子。

地域の農業を背負い挑戦を続ける

新潟県内でも「初冬直播」への関心度は高く、先陣を切って取り組む同社のほ場には市内外から農家が視察に訪れる。昨年は除草管理に課題があったそうだが、2作を終えて最適な除草体系も確立しつつある。

「今年はベテラン従業員を防除に配置し、手厚い水管理で確実に成功させたい」。そう語る本田さんの表情は力強い。

密苗の導入面積も段階的に広げ、最終的には移植分の全面積を密苗に切り替える計画だという。「毎年何か新しいことに挑戦していないと面白くないですから。米価が好転している今だからこそ、攻めのチャンスです」と語る本田さん。春直播や麦栽培なども視野に、ほ場条件に合わせた柔軟な栽培体系を構築しながら、従業員とともに営農の新たな可能性を切り拓いておられる。

有限会社安田興和農事の皆さん。
有限会社安田興和農事の皆さん。

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