農業 - ニュースリリース
ヤンマーとフェイガー、農業分野における世界初のコンプライアンス・クレジット発行に向けて、プロジェクト設計文書とモニタリングレポートを提出
2025年06月13日
ヤンマーホールディングス株式会社

ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーアグリ株式会社(本社:岡山県岡山市、社長:所司ケマル、以下「ヤンマーアグリ」)および現地法人Yanmar Philippines Corporation(以下「ヤンマーフィリピン」)は、フィリピン・ルソン島において株式会社フェイガー(本社:東京都、社長:石崎貴紘、以下「フェイガー」)と実施中の二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、以下「JCM」)プロジェクトに関し、プロジェクト設計文書と初回のモニタリングレポートをJCM事務局へ提出しました。
コンプライアンス・クレジットとは、国や国際機関が主導する公的な制度に基づき、排出削減目標(NDC※1など)を達成するために使用できる、カーボンクレジットです。 JCMでは、プロジェクト設計文書とモニタリングレポートを提出し、内容が適切であると審査されると、クレジット発行の対象となります。プロジェクト設計文書とモニタリングレポートの承認はクレジット発行前のステップであり、今回のレポート提出で農業分野における世界で初めてのコンプライアンス・クレジットの発行に向けて一歩前進しました。
ヤンマーとフェイガーが取り組んでいるJCMプロジェクトとは、2024年6月に発表したフィリピンの水田でメタン削減を図る取り組みです。フィリピンの水田にAWD(Alternate Wetting and Drying)という水管理技術を導入し、温室効果ガスであるメタンの排出を削減することで、気候変動の緩和を実現します。
プロジェクトについて
本プロジェクトでは、ヤンマーグループが保有する農業機械や農業関連ソリューション、フェイガーの水稲栽培に関する知見と日本国内での実績を活用し、フィリピン稲研究所(PhilRice)との連携のもと、現地に貢献できる取り組みを創出します。PhilRiceとはプロジェクトの一環として共同研究を行い、AWDの現地での適応や検証などを行っていきます。 JCMによる国際協力の枠組みを基盤とし、ヤンマーグループとフェイガーがプロジェクトの中核を担って推進することで、プロジェクト終了後も農業界に持続的な価値を残す、具体的な成果へとつなげていきます。また、日本とフィリピンにとどまらず、グローバルでの脱炭素プロジェクトのモデルケースとなることを目指しています。
これまで、ヤンマーアグリ、ヤンマーフィリピン、フェイガーは、現地農家、地方自治体、フィリピン政府機関などと協力し、AWDの導入支援・データ計測・インセンティブ設計などを進めてきました。今後も、日本およびフィリピン政府や現地の農家と連携しながら、JCMクレジットの発行と、AWDに限らない包括的な水稲栽培技術の指導を通じた収量の向上により、フィリピンにおける食糧安全保障と持続可能な農業の実現を目指していきます。

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism 、JCM)について
日本と開発途上国が協力して温室効果ガスの排出削減プロジェクトを実施し、パリ協定に基づいた両国のNDCに活用する制度です。
参考ページ:
Alternate Wetting and Drying(AWD)について
AWDとは、水稲栽培において潅水制御を繰り返す水管理技術の一つです。フィリピンでは通常、水田は連続的に湛水状態であり、土壌中のメタン生成菌がメタンを発生させます。AWDでは、一定期間水田を乾燥させ、土中に酸素を供給することでメタン生成菌の活動を抑制し、常時湛水と比べてメタン排出量を低減するとされています。また、通常の水稲栽培では、湛水状態を保つために大量の水を使用する必要があり、水資源が十分でない地域においては、水資源の浪費が課題の一つになっています。AWDでは水田を一時的に乾燥させることで、水の使用量を大幅に削減できるだけでなく、ポンプを利用する際の燃料消費量の低減が見込まれるとされており※2、温室効果ガス削減の観点からも注目されている手法です。
- ※1Nationally Determined Contributionの略で、2015年に採択されたパリ協定に基づき、各国が自主的に設定する温室効果ガス削減目標や対策を示す
- ※2農研機構「東南アジアの潅漑水田における節水型水管理AWDによるメタン排出削減」より https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2017/niaes17_s12.html
<ヤンマーについて>
1912年に大阪で創業したヤンマーは、1933年に世界で初めてディーゼルエンジンの小型実用化に成功した産業機械メーカーです。「大地」「海」「都市」のフィールドで、エンジンなどのパワートレインを軸に、アグリ、建機、マリン、エネルギーシステムなどの事業をグローバルに展開。環境負荷フリー・GHGフリーの企業を目指し、顧客価値を創造するソリューションを提供しています。未来を育むヤンマーの価値観「HANASAKA」を基盤に、ブランドステートメントとして掲げる“A SUSTAINABLE FUTURE”を実現します。 詳しくは、ヤンマーのウェブサイトhttps://www.yanmar.com/jp/about/をご覧ください。
<フェイガーについて>
株式会社フェイガーは、持続可能な農業の実現を目指し、カーボンクレジットの生成・販売を通じて「環境価値市場の創出」と「持続可能な農業体系の構築」に取り組んでいます。農家と協力し、脱炭素農法によるクレジットを創出することで、企業へ質の高いクレジットを提供します。2024年には日本国内で「水稲栽培における中干し期間の延長」プロジェクトを25,202haで実施し、135,944t-CO2のカーボンクレジット認証を取得しました。
- ※記載内容はリリース発表時点のものです。最新の情報とは内容が異なっている場合がありますのでご了承願います。
【報道関係者お問合せ先】
ヤンマーホールディングス株式会社
マーケティング部 コミュニケーション部 広報担当
E-mail: koho@yanmar.com