齋藤 彰浩様
住所 : 青森県五所川原市
建造作業船「第二十八齋勝丸」
搭載ジャイロユニット:GU175
全長・幅・深さ(m) : 11.00×3.80×1.38
総トン数 : 9.1G/T
主機関 : 6HYP-WET YXH-160-2(3.05)
出典 : YANMAR mare vol.46(2025年発行)

住所 : 青森県五所川原市
搭載ジャイロユニット:GU175
全長・幅・深さ(m) : 11.00×3.80×1.38
総トン数 : 9.1G/T
主機関 : 6HYP-WET YXH-160-2(3.05)
出典 : YANMAR mare vol.46(2025年発行)

「安全第一は人間第一。従業員が安心して仕事に集中できる環境を整えたい」
力のこもった声で語るのは、青森県五所川原市に本社を構える齋勝建設株式会社の代表取締役社長・齋藤彰浩氏である。港湾整備を含む数多くの公共工事に従事する同社は、土木・建築の両分野で実績を重ねてきた。大型および中型の曳船や起重機船などの作業船を保有し、総合病院や市庁舎の建築も手がけるなど、まさに地域インフラを支える総合建設会社といえる。
齋勝建設では現在、3隻の船にアンチローリングジャイロ(以下、ジャイロ)を搭載・稼働している。
最初にジャイロを導入したのは、「第三十八齋勝丸」というプレジャー用途を兼ねた船である。同船は主に、社員の福利厚生や釣りを通じた顧客との親睦を目的に運用されており、ヤンマー製DA55VⅡをベースとした特別仕様となっている。10名以上が釣りを楽しめる広いデッキを備え、操船性能や快適性にも優れた一隻である。
特筆すべきは、この船がヤンマー船として初めてジャイロを搭載したことだ。「乗り物酔いしやすい社員や小さな子どもでも、安心して海を楽しめるようになった」満足そうに語る齋藤社長は、自らも釣り人であり、海上での揺れや疲労の深刻さを、身をもって知っていた。ジャイロ搭載後は、船上の揺れが劇的に軽減され、作業中に体を支える負担も大幅に縮小されたという。「踏ん張る必要がなく、疲労感がまるで違う」という社員の声も、ジャイロの有効性を証明している。
ジャイロ導入のきっかけは、齋藤社長がテレビで観たマグロの一本釣り番組であった。荒天でも安定した操業を可能にする船の姿に感銘を受け、「自社の船にも同じような安定性を実現したい」と考えたのである。しかし、当時のヤンマー製プレジャーボートにはジャイロの搭載実績がなく、複数の造船会社から「不可能」「前例がない」「やめておいたほうがいい」と設置を断られた。
そのなかで協力を申し出たのが、ヤンマーディーゼル特約店である齊敏機械の代表取締役社長・齊藤敏昭氏である。苗字の読み方(サイトウ)を同じくする旧知の友人でもある二人は、ジャイロ搭載という未踏の挑戦に向け、即座に意気投合した。「必ず設置します」という齊藤敏昭社長の言葉が、プロジェクトの出発点となった。
最大の課題は、設置スペースの確保だった。重量バランスの関係からジャイロを船体中央付近に設置したいが、そこには竜骨が通っており、通常は手を加えられない構造である。そんな中、齋藤社長が、「竜骨を切っても良いのではないか」と提案。これを受けて、齊敏機械は竜骨の一部を切断し、強度を補うために鋼材で支えながら専用の土台を製作。徹底した強度解析と安全対策のもとで実現した、まさに前例のない設置工法であった。
稼働した当初は発電機の出力の関係で、高速走行時にジャイロを起動すると、低速時には動かないという課題が見つかる。これを解決するため、2025年4月には専用の発電機を追加導入。いかなる速度域でも常時安定した姿勢制御が可能となり、快適性と安全性がさらに向上した。
そして今、EX47にジャイロが搭載可能となっている。そのきっかけをつくったのは齋藤社長であり、ヤンマー船の歴史を変えたと言っても過言ではない。
ジャイロに惚れ込んだ齋藤社長は、2024年4月に竣工した新造船「第二十八齋勝丸」にもジャイロを搭載する決断を下す。この船は作業用であり、今なおジャイロの搭載は、業界全体でも極めて稀だ。建造時には「作業船にそこまで必要か」と疑問の声もあったが、その有用性はすぐに証明された。
「揺れがまったく違います。作業時の集中力や安全性も格段に向上しました」
そう語るのは、第二十八齋勝丸の船長・永坂章氏である。スラスタを装備した操船性の高さに加え、エアコンを完備した快適な作業空間は、作業員にとって大きな安心材料となっている。さらに、ヤンマー製の作業船エンジン6HYP-WETは低回転域でも強い推進力を発揮し、エネルギー効率と操作性に優れている。永坂氏は「13年間の船長生活でも、これほど働きやすい船は初めてだ」と笑顔で語る。
その成果を踏まえ、2025年5月に竣工した「第十八齋勝丸」にもジャイロの搭載が決定。齋勝建設の作業船2隻が、ジャイロ搭載という先進的な装備を有することとなった。
また、第三十八齋勝丸(DA55VⅡ)以降はすべてヤンマーエンジンを採用しており、以前使っていた他メーカー製エンジンから完全に切り替えた形である。ヤンマーエンジンは、部品供給期間の長さや燃費性能、整備性の面で高い評価を得ており、齋藤社長も「もうヤンマー以外を選ぶ理由がない」と断言する。
とりわけ、第十八齋勝丸に搭載されたのは、業界初となる新型エンジン「6AYE-ET」である。まだ実績のない最新モデルにあえて挑むその姿勢からは、ヤンマーへの深い信頼と、常に一歩先を見据える齋勝建設の企業姿勢がうかがえる。
作業船における〈ヤンマーエンジン×ジャイロ〉という新たなスタンダードの幕開けに、業界関係者が胸を高鳴らせている。

主機関6HYP-WETは、低速でも力強く、省エネで操作しやすいのが特長

作業船・第二十八齋勝丸に搭載。安定性を格段に向上させるジャイロGU175