スペシャル対談企画第7弾 西尾隆矢 脇阪麗奈 喜田陽 筒井梨香 桜の幹。センターライン論

CHAPTER #3 スペシャル対談 07

アカデミー時代に培った
“技術以外”の部分

今季からWEリーグ参入を果たしたセレッソ大阪ヤンマーレディース。キャプテンの脇阪麗奈とディフェンスラインの要、筒井梨香はレディースの3期生で同級生、ピッチ内外で厚い信頼で結ばれている。喜田陽と西尾隆矢も、喜田が一つ上の学年だが、ピッチ外を含めて仲は良い。わずかにお姉さんのレディース二人が引っ張る形で座談会は進んだが、全員が大阪出身で、ほぼ同時期をセレッソ大阪のアカデミーで過ごしたこともあって、全体の空気感は非常にアットホーム。男女の垣根を超えて、ファミリー感は伝わってきた。ポジションは、ボランチとセンターバック。チームの軸として、それぞれ心掛けているプレー、楽しさや難しさなど、プレーヤー目線での本音を語ってくれた。キャプテンシーも含め、今後のセレッソを数年に渡って引っ張っていくであろう「センターライン」4選手の言葉に耳を傾けてほしい。(取材日:2023年11月10日)

お互いの試合は見ますか?

脇阪・筒井:見ますね!

やはり同じポジションを見ますか?

脇阪:はい。ボランチの選手を見ることが多いです。

筒井:私もCBの選手を見ます。

男子のお二人はいかがですか?

西尾:YouTubeで配信がある時は見ました。いろいろな発見がありますし、楽しみながら見ています。

喜田:竹花(友也)監督の時に、J-GREEN堺で試合を見たことがあるのですが、「みんなうまいな」と思いました。ガールズも強いですし、レディースは育成が優れている印象があります。

4選手ともアカデミー出身です。セレッソアカデミーの良さとは?

西尾:アカデミー時代はフィジカルトレーニングが多く、練習の強度が高かった。そこはいまにも生きていると思います。フィジカルの練習は、レディースもあったんじゃないですか?

脇阪:ずっと走っていました(笑)。

喜田:レディースの練習を見ると、四つ角にコーンを置いて、ずっと走っていた印象があります(笑)。フィジカルの強化がすごいなと思いました。

筒井:キツかったです(苦笑)。

脇阪:キツいだけではなく、みんながサッカーを楽しんでいることもセレッソの良さ。

筒井:竹花さんには、サッカーもそうですが、人間性の部分もかなり厳しく教わったので、そこも良かったなと思います。

4選手とも高校2年生で、なでしこリーグ2部やJ3の試合にも出られています。高校生で、そうした公式戦の経験を積めたことはどう振り返りますか?

西尾:僕らの時代はU-23があったので、J3で経験を積めたことは大きかったです。ディフェンスラインはユースの選手が出ないとメンバーがそろわないこともあり、自分が呼ばれることも多かった。J1で試合に出始めた時にそこまで緊張しなかったのは、高校生の内からプロの舞台でプレーできたことが大きかったと思います。

喜田:レディースもガールズとつながっているように、男子も当時はU-23とトップがつながっていた。高いレベルを身近に感じることができる環境があったことは、いまにも生きていると思います。

脇阪:中学生や高校生のころから大人の相手と公式戦で戦うことで、強度やスピードは鍛えられました。早くからそうした経験ができたことは大きかったですね。

筒井:一緒ですね(笑)。ただ、麗奈は中2ですでにチャレンジリーグでプレーしていたんですけど、自分は試合に出るのが少し遅かったなとは思います(苦笑)。

現在のアカデミーの後輩に期待することは?

脇阪:自分が同じ年代のころは、「もっと試合に出たい」とか、自我が強かった。いまの子は、そういう意識が少し足りない気もします。

筒井:考えてプレーする部分も少し足りないかも知れません。もっと連係を高めてプレーしたい思いはあります。

脇阪:自分たちが高校生だったころも、しっかり考えてプレーできていたかと言えば、足りないところもあったと思います。ただ、当時は年上の選手が少なかったので、自分たちで考えてサッカーをしていました。いまの若い子たちは挫折とかもなく、ここまで来ている感じもあるので、考える経験は少し足りない部分もあると思います。

西尾:少し近いですが、僕らがいたころより、フィジカルの練習も少なくなっているのかなとは感じます。当時の僕より技術面ではうまいと思いますが、球際で戦うところは少し弱い。たまにユースの子たちがトップの練習に参加するのですが、ボール扱いはうまくても、勝負どころであと一歩、足が出ないこともあります。僕自身、技術的にはうまくなかったのですが、戦うところは言われ続けてきたので、その部分での底上げはもっと必要かなと思います。

喜田選手がアカデミーの後輩に期待することは?

喜田:これまでもアカデミーからは多くの選手がトップに上がってプレーしています。今後もそれは継続してほしいですし、一人でも多くの選手がトップチームに上がって、一緒にプレーできたらなと思います。

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予測。距離感。指示の声。メンタルの強さ。
中央のポジションに求められるもの

今回のメインテーマは“センターライン論”。脇阪と喜田は、ピッチ中央でチームを司るボランチ。ボール奪取に特長がある前者と、ゲームメークが長所の後者。スタイルにやや違いこそあるが、安定した試合運びをするためには、両者の一つひとつのプレー、判断が重要になる。筒井と西尾は、ピッチ後方で相手の攻撃をはね返すCB。屈強な体を生かした対人にヘディングの強さ、周りを動かすコーチングも含め、まさに門番の役割を果たしている。それぞれ試合中に意識していること、チームを引っ張るキャプテンシーについて、選手同士の質問も交えながら、その内面に迫った。

ここからは本題である「センターライン論」のテーマに移ります。現在のポジションをやり始めたのはいつごろからでしょうか?きっかけはありますか?

喜田:中学校1年生の時に、金晃正コーチから「ボランチをやってみないか」と言われて使ってもらったのが最初です。そこからずっとボランチですね。

西尾:僕は、小学生の時は全部のポジションをやっていました。元々、GKが好きで、小5まではGKをやっていたのですが、親から「見ているほうがつまらないからやめて」と言われて…(苦笑)。体が大きかったので、そこからはFWとCBをやって、中学でセレッソに入った時はCBとして取ってもらいました。そこからはずっとCBですね。

筒井:自分も最初はFWでした。

脇阪:ずっとFWやったな(笑)。

筒井:高2くらいまではFWで、気付いたらCBになっていました(笑)。

何かきっかけはあったのですか?

筒井:いえ、ホントに気付いたら、という感じです。ある日の練習で、「筒井」のマグネットがCBの位置に置かれていました(笑)。女子の中では背が高く、ヘディングも強く、キック力もあったので、コンバートされたのかなと思います。

脇阪:私もセレクションではFWで入ったんですけど、そこからサイドバックやCB、サイドハーフもやって、高3ぐらいで私も気付いたらボランチでした(笑)。

いまのポジションで心掛けているプレーは何ですか?

喜田:味方が「いてほしい」と思うところにポジションを取ることです。

脇阪:相手が嫌がるポジションを取ることは、私も意識しています。相手の逆を取ったり、引き付けたり。

喜田選手は司令塔、脇阪選手はボックスtoボックスと、少しタイプは異なるボランチかな、という印象もあるのですが、互いに聞いてみたいことはありますか?

脇阪:ボランチをやっていて、楽しい瞬間はいつですか?

喜田:結構、ありますね(笑)。

脇阪:中でもこのプレー、というのは?

喜田:「ここに来る」と予測して、ボールがこぼれてくる時です。

脇阪:同じです(笑)。

全員:ハハハ(笑)。

CBのお二人は、心掛けているプレーは?

筒井:まず背後を取られないこと。ラインコントロールも意識しています。トリさん(鳥居塚伸人監督)からは、FWとCBの間を20メートルから25メートルくらいの距離に、ということを言われているので、そこは意識しています。

全体をコンパクトに、ということですね。

筒井:はい。セレッソのサッカーは前線からの守備が強みなので、後ろも付いていかないと、奪い切れない。迫力ある守備を出すために、そういう距離感は意識しています。

西尾選手は、筒井選手ともタイプは近いCBかなと思いますが、心掛けていることは?

西尾:もちろん、失点しないことが第一ですが、ビルドアップでいかに前にいいボールを提供するかも意識しています。守備では、ゴール前ではもちろん自分が体を張りますが、できるだけ自分がボールを取りたいところへ相手にパスを出させるように、前の選手をコーチングで動かすことも心掛けています。

筒井:分かります。言葉は悪いですが、いかに自分がラクをして守れるか(笑)。前の選手を動かして、自分のところでうまく取れるように、ということは私も意識しています。

CBのお二人も、互いに聞いてみたいことはありますか?

西尾:メンタリティーの部分を聞いてみたいです。CBはミスが失点に直結するポジション。ほかのポジションに比べて走る距離は短いかも知れませんが、メンタルの疲れは出ませんか?

筒井:出ますね(苦笑)。特に今年はディフェンスラインで一番年上なんですよ。他の子たちは、ほぼ10代。周りを動かすために、声も出し続けているので、頭や喉が疲れますね(笑)。

筒井選手から西尾選手に聞いてみたいことは?

筒井:ビルドアップでミスすることもあるじゃないですか。縦パスを相手にカットされた後でも、もう一回、差しますか?

西尾:僕は基本的にミスをしても気にしないタイプ(笑)。リスクが高いボールもどんどん入れますね。自分が「付けられる」と思ったら、差します。

筒井:例えば公式戦で、失点につながったりした時のメンタルは?

西尾:それでも、そこまで落ち込んだり、引きずったりはしないです。

筒井:そのメンタリティーにもっていくためには、どうしたらいいですか?元々の性格ですか?

喜田:(西尾より先に)元々、こういう性格です。

脇阪・筒井:ハハハ(笑)。

西尾:でもホントそうです(笑)。それがいいことかどうか分かりませんが…。

いまの話にも共通するテーマですが、真ん中のポジションは失点に直結するリスクが常にあります。逆に、チームをコントロールする楽しさもあると思います。いまのポジションでプレーする上で、やりがいや難しさなどは、どのように感じていますか?

喜田:難しい部分は、動き過ぎてもダメで、動かなさ過ぎてもダメ、ということ。

西尾:深いな(笑)。

喜田:その加減で頭を使うことが多いので、楽しいより難しいほうが強いですね。(脇阪に)楽しさは、いかがですか?

脇阪:パスが来た(笑)。ボランチは攻撃にも守備にも関われますし、ゲームを支配できるところが楽しいところです。ボールに触る回数が多いことも、楽しいですね。ただ、リズムが悪い時にどういうプレー選択でリズムを変えたらいいか、それを考える時は頭を使いますし、自分が思い描いているプレーが味方と合わなかった時も、すぐに絵を変えないといけない。そこが楽しさであり、難しさでもありますね。

常に頭をフル回転することが求められるポジションですね。CBの楽しさや難しさなどは、いかがですか?

筒井:先ほどの話にもあったように、CBは失点に直結するポジションですが、逆にシュートブロックで失点を防いだり、1本のロングボールが得点につながった瞬間は楽しいです。

西尾:CBは、なかなかアシスト付かないですもんね。

筒井:はい。だから、どんどん狙っています(笑)。守備はしんどいことのほうが多いので、セットプレーも含めて得点に関わることが楽しいですね。

西尾:僕は点を決めて注目を浴びたい、という思いはそこまでなくて、無失点で勝つ瞬間が、やっぱり一番、うれしいですね。

後ろから攻撃を組み立てたり、チャレンジすることも、やりがいですか?

西尾:そうですね。前の選手にいいパスを付けることができればうれしいですし、チーム全体でボールを支配できていれば、後ろとしてもラクなので。攻められていると、ずっと頭を回転させないといけないですし、ストレスも感じながらのプレーになるので、しんどいですね。

リーダーシップの面でも、4選手は共通する部分だと思います。昔からチームを引っ張る意識は強く持っていましたか?

脇阪:どうですかね?(笑)。

筒井:麗奈はいつもプレーで引っ張ってくれていました。前線から100%で守備にいけていない時でも、麗奈がボランチの位置で120%のパワーでつぶしてくれる瞬間は、後ろから見ていても頼もしいです。簡単なミスをしたら怒ってくれますし、人を選ばず言うこともできます。それはキャプテンだから、という感じではなく、昔からですね。

脇阪:めっちゃ褒めてくれた(笑)。(筒井は)昔はサボることも多かったですが、私たちがチームを離れている間にキャプテンをやって、人としても成長したと思います。今季もチームに対して、年下の子たちにも愛情を持って接してくれているので、私もキャプテンとして助かっています。

西尾選手はチームの中では年下の立場ですが、言動面も含め、チームを引っ張る意識は強いように感じます。

西尾:まずポジション上、コーチングはしないといけません。J1で試合に出始めた21年は、大久保嘉人さんから、「何でもいいから声を出せ」と言われ続けていました。そこでメンタルが鍛えられました。後ろから声を出さないとチームの士気も上がらないですし、自分が気を緩めていたら、失点して負けてしまう。副キャプテンだから、というより、CBというポジションとして自覚を持ってやらないといけない、という気持ちは年々強くなっています。

喜田選手は、黙々とプレーで引っ張るタイプに見えます。

脇阪:ボランチで、試合中に声を出さずにプレーできますか?

喜田:(小声で)一応、出しています。

西尾:伝えたい人だけに聞こえるぐらいの声で、試合中も喋っていますよ。

脇阪・筒井:そうなんですね(笑)。

西尾:それに僕らが中学時代、U-15のキャプテンは喜田陽だったんですよ。誰もが瀬古歩夢だと思っていたのですが、まさかの喜田陽で、みんながザワついたことを覚えています(笑)。

喜田:ザワついていたな(苦笑)。

喜田選手も、キャプテンシーはしっかり持っていると。

西尾:はい。当時も意外としっかりキャプテンを務めていましたよ。言葉でチームをまとめるより、プレーで黙々と引っ張るタイプではありましたが、でも当時はいまより声を出していた印象です。

脇阪・筒井:全部、(後輩の西尾に)言ってもらっている(笑)。

喜田:(西尾に)ありがとう(笑)。

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アカデミー出身の4人に
共通する「悲願」

対談の締めは、セレッソ大阪で成し遂げたいこと、自身を動かす原動力について。アカデミー出身の4選手にとって、小学生や中学生時代から育ててもらったクラブで中心選手となって、タイトルを獲ることは、まさに悲願。その姿がアカデミーの後輩にも受け継がれ、セレッソの未来も形作られていく。そうした“使命”を帯びた4選手だけに、語る言葉も必然と熱を帯びた。原動力については、4者4様、それぞれの個性が見られた瞬間となったが、レディースの主将、脇阪が最後はビシッと締めて、和やかに盛り上がった座談会は幕を閉じた。

今後、育ってきたクラブで成し遂げたい目標はいかがですか?

脇阪:WEリーグに入ったからには、優勝を目指して今季から戦っていきます。個人としても、しっかり結果を残せるように頑張ります。将来的にはトップチームとレディースで一緒に優勝できたらいいなと思います。

西尾:タイトルを獲りたいですね。2年連続ルヴァンカップの決勝で敗れて、あの思いは鮮明に覚えています。二度とああいう気持ちは味わいたくないですし、よりタイトルを獲りたい気持ちは増しています。アカデミーから育ててもらって、自分の力でタイトル獲得に貢献できれば、アカデミー生にもいい影響を与えられると思います。

喜田:僕も優勝したいです。個人としては、「ピッチにいたら助かる」と味方に思ってもらえる選手になりたいです。

筒井:やっぱりセレッソが一番好きなので、いまのメンバーで絶対に優勝したいです。WEリーグは初参入ですが、最初から優勝を狙っていきます。個人としては、圧倒的な存在感で、周りに安心感を与える選手になりたいです。

最後に、サッカーを続ける上での原動力を聞かせて下さい。

西尾:僕は家族ですね。結婚もしたので家庭がありますし、応援してくれる一番身近な存在が家族です。僕が活躍することによって、家族もポジティブな気持ちになれますし、いい家庭を築けると思います。何のためのサッカーをするのか、いままでは自分が上に行くためが第一でしたが、それに加えていまは家族のため、ということが大きいです。もちろん、ほかにもサポーターやスタッフなど多くの人に支えてもらっているので、自分のプレーでいい影響を与えたい気持ちもあります。どれだけ厳しいシーズンがあったとしても、やり続けることはノルマなのかなと思います。

喜田:僕は、子どもたちに「サインがほしい」と思ってもらえる選手になることです。

西尾:それが原動力?

喜田:うん。

脇阪・筒井:ハハハ(笑)。

筒井:自分は麗奈や、やかち(矢形海優)がセレッソに帰ってきてくれて、一緒にサッカーするのがめっちゃ楽しいので、そうした仲間の存在が原動力ですね。少し恥ずかしいですが(笑)。

脇阪:私も家族の存在は大きいです。母はあまりサッカーに興味はないのですが、試合になったら応援してくれますし、おばあちゃんとかいろいろな人も応援してくれるので、ありがたいです。あとは、昔サッカーを辞めようと思っていたこともあるですが、セレッソに拾ってもらってサッカーを続けられているので、このエンブレムを付けて戦う喜びが、私の原動力です。

PROFILE
西尾 隆矢
2001年5月16日生まれ、22歳。大阪府出身。FCグラシオン→セレッソ大阪U-15→セレッソ大阪U-18→セレッソ大阪。
脇阪 麗奈
1999年5月2日生まれ、24歳。大阪府出身。北大冠FC→セレッソ大阪堺ガールズ→セレッソ大阪堺レディース→ノジマステラ神奈川相模原→INAC神戸レオネッサ→セレッソ大阪ヤンマーレディース。
喜田 陽
2000年7月4日生まれ、23歳。大阪府出身。セレッソ大阪サッカースクール泉大津校→セレッソ大阪U-12→セレッソ大阪U-15→セレッソ大阪U-18→セレッソ大阪→アビスパ福岡→セレッソ大阪。
筒井 梨香
1999年6月4日生まれ、24歳。大阪府出身。長野FC→セレッソ大阪堺レディース→INAC神戸レオネッサ→セレッソ大阪ヤンマーレディース。