ヤンマーテクニカルレビュー

技術力×デザイン:GHP K1シリーズの開発(XAIRⅡ)

Abstract

The new GHP K1 series launched by YES is an upgrade of the previous J series. GHPs have contributed to both energy conservation and electric power saving during the electricity shortages in the aftermath of the Great East Japan Earthquake. The new K1 series models feature enhanced efficiency and a new exterior design, with higher efficiency achieved through a range of improvements targeting different levels of air conditioning load.
This article describes the technologies adopted to achieve these improvements and the new design.

1.はじめに

2011年4月の発売以来、震災後の電力不足を背景に、省エネと節電の双方に貢献できる商品である「GHP XAIR(エグゼア)」の販売は好調を維持している。

GHPは1987年の発売以来、電力負荷平準化を大きな役割として担っており、合わせて省エネをもうひとつの柱として、ライフサイクルにおける経済性を商品力として成長してきた。

その中、さらなるGHPの高効率化を図ることで、社会のエネルギーインフラの安定に貢献すべく、超高効率GHP「XAIRⅡ(当社モデル名:K1シリーズ)」を開発した。

2.開発の背景

GHPにはJISの製品規格がある。GHPに類する業務用の直膨式エアコンとしてEHPがあるが、EHPのJIS改正に追従して、GHPもJISが改正された。その改正の主だった点として、期間成績係数(APFp)がある。旧JISでは、定格・中間の2点で期間成績係数を算出していたのに対し、新JISでは、定格・中間に加え最小の評価が加わった。さらに、電力の実測が定格のみだったのに対し、中間・最小も電力の実測が必要となった。その2点がAPFpに対する大きな変更点であるが、これは実際の使われ方に合わせて試験することで、より正しく評価できるとの考え方からである。当社では、新JISの考え方に合わせて、空調負荷毎に狙いを定めて「K1シリーズ」を開発した。

一方、環境性能をアップした最新シリーズにふさわしくするべく、外観デザインを一新し、その性能を外観からもアピールすることとした。

  • 注:期間成績係数(APFp)とは、一年間の空調負荷(kWh)を一年間の一次エネルギー消費量(kWh)で除算したもの。要は空調機の年間効率。

3.製品の概要

図1にK1シリーズの外観を示す。新しいデザインは、世界的工業デザイナー奥山清行が担当。四隅の縦ラインを特徴とした2トーンのカラーリングで、全体を引き締まって見せた。また、外板パネル上のネジはできるだけ隠すことを基本としたが、メンテナンスにおいて必要な部分についてはあえて露出させ、作業性を確保した。さらに、熱交換器の保護ネットのピッチを上から下に狭めていくことにより、低い位置では小さな子供などの手が入らないように配慮した。

K1シリーズの外観
図1 K1シリーズの外観

次に、高効率化については、当社試算での新旧シリーズのAPFpの比較を図2に示す(旧モデルは正確には新JISでのAPFpを算出できないため)。旧モデルはJシリーズである。

Product Lineup
図2 APFp比較(旧モデル=100)

図2のように、旧モデルJシリーズに比べて20~27%の大幅な高効率化を達成した。K1シリーズのAPFpは表1の通りである。

表1 K1シリーズのAPFp

K1シリーズのAPFp

4.製品の特徴

前述のように、K1シリーズは空調負荷毎に狙いを定めて開発しており、その具体的内容を次に示す。

(1)エンジン回転数範囲の拡大

新JISでは、定格・中間能力に加えて、最小能力の評価が盛り込まれており、それに対応するため、エンジンの回転数範囲を拡大し、最低速を旧モデルの毎分650回転から500回転に下げた。最低速を拡大することで、従来は低負荷で運転・停止を断続的に繰り返す断続運転で空調負荷に追従していたが、連続運転で対応することが可能になる範囲が増え、そのことで低負荷域での効率がアップできAPFpが約8%向上した。低速化の課題には、エンジンの燃焼や調速の安定性などがあるが、それはミキサーや点火プラグなどのエンジン周辺の部品とエンジンを制御しているソフトによる改善で解決した。しかしながらそれ以外にも、エンジンの低速振動の問題がある。他社メーカーのGHPでも500回転を達成しているモデルもあるが、3気筒のエンジンで毎分500回転を達成したモデルはない。小さいエンジンほど低速の安定性を維持するのは難しく、気筒数が少ないほど低速の振動は大きくなるため、その課題を解決する必要があり、K1シリーズでは、振動の絶縁と吸収の双方の構造仕組みを見直し対応した。その構造を新しい外観デザインと共に取り入れた。

(2)空気熱交換器と冷媒/冷媒熱交換器

中・高負荷域での能力をアップさせることで動力源であるエンジンの定格出力を抑えることができ、それはエンジンのダウンサイジングを図ることにつながって、APFpも改善できると考え、中・高負荷域でも効率改善を図った。ひとつは、空気熱交換器の冷媒の流し方の見直しである。当社の空気熱交換器はその冷媒の流し方の考え方を数モデルの間変更しておらず、K1シリーズで大幅な刷新を図った。その概念を図3に示す。旧モデルでは、風下から風上に冷媒を対向流として流すことで冷媒の二相領域とSC(液)領域とに対応していたが、K1シリーズでは、明確にその領域を中間ヘッダで分けることとした。そのことにより、各領域の設計自由度が上がり、二相領域、SC領域で冷媒の流速を最適に設計することが可能となった。これによる、中・高負荷域での能力アップによりAPFpが約8%向上した。

空気熱交における冷媒の流し方
図3 空気熱交における冷媒の流し方

もうひとつは、冷媒/冷媒熱交換器の新規採用である。旧モデルでは冷媒に過冷却をつけるためにレシーバ内にSCコイルと称した熱交換器を搭載していたが、K1シリーズでは、プレート熱交換器化した冷媒/冷媒熱交換器に変更した(図4(25HP以上))。従来のSC熱交よりも熱交換量を増大させ、室内機に流す冷媒流量を減らすことで、室内機~コンプレッサまでの圧力損失を減少させ、冷凍サイクルとしての効率を中・高負荷域で向上させ、APFpは約2%上昇した。

冷媒/冷媒熱交換器(25HP以上)
図4 冷媒/冷媒熱交換器(25HP以上)

(3)大径プロペラファンと電力機器

新JISでは、定格・中間・最小・最大の全ての試験条件で能力・ガス消費量だけではなく、消費電力の計測も盛り込まれており、かつ、省電力化はエネルギー消費量の削減だけでなく、節電にもつながるため、K1シリーズでは、全域での省電力化を図った。まずは、大径プロペラファンとシュラウドの形状適正化である(図5)。プロペラ径をφ610mmからφ650mmにアップさせることで、回転数あたりの風量を増大させ、シュラウドの形状を最適にし、風量ロスを低減させた。これらにより送風効率を全負荷域で改善しAPFpが約7%改善した。

大径プロペラファンとシュラウド
図5 大径プロペラファンとシュラウド

次に、各電力機器の省電力化であるが、コントローラの数を減らしたり、冷媒制御用の電磁弁の数を減らしたりするなど部品単位で機器を削減した。さらに、トランスなど電源装置の効率も改善を図ることでベースとなる電力ロスを減らした。これらのような省電力化により、APFpが約2%改善した。

ここまでに述べてきた改善の他にもいくつかのアイテムを織り込むことにより、K1シリーズは、平均して約24%のAPFpの向上を達成することができた。なお、高性能化と新しい外観デザインは外形寸法を変更せずに対応した。主な性能と諸元を表2に示す。

表2 K1シリーズの主な性能と緒元

K1シリーズの主な性能と緒元

(4)K1シリーズラインナップ

K1シリーズは、この秋に16~30HPでXAIRⅡとして販売を開始した。旧モデルではリニューアル機を既設物件の入替え専用機としてラインナップしていたが、リニューアル物件の比率が増えていることを考慮して、リニューアルの機能(主に冷媒配管長に応じた冷媒の追加量を設計的に計算することなく、自動的に適正量検知してチャージする機能。にこマルチにも搭載)を標準搭載して、標準機とリニューアル機を統合した。また、2016年3月までに、その他のバリエーションのラインナップの拡充を進める。これらを表3にまとめる。

表3 K1シリーズのラインナップ

K1シリーズのラインナップ

5.おわりに:今後の展望

今回紹介した「GHP XAIRⅡ」K1シリーズは、XAIRよりもさらなる高効率化を達成したことにより、節電意識が高まっている国内において、ガス空調のメリットをもう一歩高次元で感じていただける製品に仕上げることができた。また、外観デザインも一新して、通常の設備機器では感じることのできない「所有する満足感」を感じ取れるものにできたと考えている。高効率とデザインの両輪で、ガス空調の存在感を高めて行きたい。

また、電力不足や地球温暖化に代表される環境問題は国内だけのものではなく、地球全体の課題である。GHPは、これらの問題に対して、ガス空調としての解決策を提供できる、国内では十分に実績のある製品群に成長した。しかしながら、海外ではまだまだ認知度が低いのが現状である。当社では、K1シリーズを武器に海外市場への挑戦を新たなものとして、全世界のエネルギー、環境問題の解決に貢献したいと考えている。

著者

ヤンマーエネルギーシステム株式会社 開発部

杉森 啓二

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