SOLUTION 03 / Resource circulation Cycle model 資源循環サイクルモデル

食品廃棄物を有効活用する
仕組みを構築し、
持続可能な社会の実現へ

ヤンマーホールディングス株式会社 技術本部 
ヤンマーeスター株式会社
年々増え続ける「食品廃棄物」を、ヤンマー独自の技術で効率よく分解するコンポスターを開発。処理後に残った堆肥を作物栽培に再利用し、資源循環の仕組みの構築に寄与します。

ISSUE

食品廃棄物の有効利用を促し、「資源循環の仕組み」を構築。

人々の暮らしが豊かになる裏側で注目され始めた、「廃棄物」の問題。環境汚染を引き起こす原因のひとつと言われています。その中でも私たちの暮らしの身近にあるのが、生きるために欠かせない食分野の「食品廃棄物」です。大きく分けると、まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」と食品加工の際に出る「食品加工残さ」があり、日本だけで見ても年間約2,500万トン※を排出。世界で見ると年間約13億トンを排出しています。また現在では食品廃棄物の多くは産業廃棄物として処理されていますが、水分を多く含んでいるため焼却時のエネルギー効率が悪く、多くのCO2が排出されます。さらに処理にかかるコストも年々増加しているという課題もあります。

このような課題に対してわたしたちヤンマーは、「資源循環の仕組み」を構築することが必要だと考えました。そして注目したのが、食品廃棄物を減量・減容し、地球環境に優しい資源循環サイクルを実現するコンポスター。ごみの減量化はもちろん、処理後に残った一次生成物を堆肥に再利用できるというメリットがあります。食品廃棄物を有効利用することで、ヤンマーの目指す「持続可能な社会の実現」に大きく寄与すると考え、バイオコンポスター「YC100」の開発をスタートさせたのです。※平成30年度の食品廃棄物発生量推計(令和3年4月27日環境省報道発表より)

食品廃棄物の排出量

SOLUTION

食品廃棄物を菌の力で分解するコンポスターに、ヤンマーならではの技術を搭載。

2019年からスタートしたバイオコンポスター「YC100」開発プロジェクト。まずは市場に出ているコンポスターの調査から着手し、「投入した残さが泥状から団子のように固まり、分解が進まなくなる」という課題を洗い出すことができました。そしてこの弱点を克服するため研究を重ね、大きく2つの新技術を生み出すことに成功しました。

1つめが「ADI(Air Direct Injection)方式」です。従来の機械式コンポスターでは槽内に空気を引き込むタイプが主流です。それに対して「YC100」では外気を加温した後、槽内に圧力をかけて押し込みます。空気を引き込むタイプとは異なり、撹拌(かくはん)している残さに直接空気が届くので、乾燥効率が向上。また、横幅2,500 mm、奥行き1,400 mm、高さ1,940mmというコンパクトな設計も可能になりました。開発の中では、空気を圧縮して送り込むので高い気密性が必要になることが大きな壁となりましたが、中の空気を漏らさないように工夫を取り入れ、機能を実現させました。

そして2つめが、「ヤンマー独自の自動制御と撹拌技術」です。撹拌用の爪には、ヤンマーならではの技術を搭載。トラクターで使っている爪の形状と配列を参考に開発を行い、耕うん技術を応用したロータリー方式でむらのない撹拌を実現することができました。こうして安定した槽内環境を維持できるようになったのです。また、槽内を最適に制御するシステムも独自に開発しました。投入した残さの重量を自動計測することで入れすぎを防止できるほか、残さの重量や処理の経過時間に合わせて槽内の温度・風量・撹拌速度・頻度などを最適に制御する仕組みを実装。重い残さであれば乾燥を促すよう出力を上げ、軽い残さは出力を抑えるようプログラムが指示することができます。使いやすさはもちろん、消費電力の低減にもつながりました。

これらの新技術のほかにも、処理時の生ごみ臭を抑制する活性炭吸着方式の消臭装置を搭載し、衛生面も向上。また、スイッチを押すだけで自動運転がスタートするかんたん操作や、誰でも使いやすいよう投入口が大きく低い位置にあるデザインなど細部まで配慮を重ね、「YC100」は誕生しました。

トラクターの技術を応用した撹拌用の爪

槽内を最適に制御するシステム

分解の様子

RESULT

食料資源の分野でヤンマーが「A SUSTAINABLE FUTURE」を体現。

こうして生まれた「YC100」は、100kgの食品残さを24時間でおよそ80%減量※することに成功。処理後の生成物は成分調整を行うことで土壌活性剤や堆肥として土に返すことができ、環境に配慮しながら廃棄コストの削減に貢献します。
今後は、スーパーマーケットや食品工場などで出た食品廃棄物を処理。処理された生成物を、廃棄物業者がリサイクルセンターへ運搬。そこで成分調整を行った後、ホームセンターで販売。土壌を良くする活性剤として農地で利用され、作物栽培に活用する。このような流れを作り出し、資源循環サイクルの実現を目指します。

2022年3月に開催された「第1回フードテックジャパン大阪」に出展し、その注目度は高まりつつあります。展示会に来場したお客様からの高評価に対して開発メンバーは、「まだスタートライン。現場での運用が始まり、そこで集まったお客様の声や運用データなどを参考にしながら、さらに改善を進めていきたい」と今後の展開を語ります。
「YC100」の展開を1歩目として、食品廃棄物を有効活用して持続可能な未来をつくる「資源循環サイクルモデル」の構築への道のりは未来へと続きます。

※当社試験機・標準生ごみ使用時の値。

未来へつながる 資源循環サイクルモデル例

INTERVIEWヤンマーが一丸となり、
持続可能な社会の実現を目指す。

※所属は2022年3月時点の情報です

新技術の開発だけでなく、菌の住処(すみか)となる副資材の選定、品質チェック、お客さまへの営業など、さまざまな工程を経て、実用化へと至った「YC100」。多部署のプロフェッショナルが集結し、1つのプロジェクトを進行していくスタイルが、ヤンマーの強みでもあります。

菌の活動を助ける副資材の選定を担当した槙嶋さんは、「コンポスターには菌の住処(すみか)としておがくずや木片などの副資材を投入する必要があります。これには今まで良し悪しを判断する基準がなかったので、候補となる副資材をひとつひとつテストしました。地道な研究でしたが、納得できるレベルのものができました」と語ります。
また、「新技術の搭載もありチェックする項目も多く、時間との戦いになりましたが、表面だけ繕って後で悪影響が出ては話になりません。自信を持って世の中に出せるよう、入念にチェックしました」と語るのは最終の品質チェックを担当した山下さん。さらに営業面を担当する梶さんは、「YC100のセールスポイントである多様な運用パターンについて、より営業の理解を促し、お客さまに最適なご提案をできる体制を整えていきます」とこれからの拡大に向けて明確な目標を掲げています。