営農情報

2015年7月発行「FREY特別号」より転載

Premium Farmers YANMARが繋ぐ“農のクリエイター”

ヤンマーが取り組む農業支援プロジェクト『プレミアムマルシェ』。マルシェを支えるのは、個性豊かな発想で農をクリエイトするプレミアム農家だ。今回は、京丹後の地で土づくりから加工まで一貫して「京丹後フルーツガーリック」の生産に取り組む早川雅映さんを訪ねた。

「京丹後フルーツガーリック」生産者 創造工房

早川 雅映 様

Profile
京丹後市市会議員として丹後を基盤に活動後、1991年に有限会社創造工房を設立。2009年より、京丹後フルーツガーリックの生産、加工、販売まで一貫して行う。「農業ど素人が、ニンニクの産地でもない土地でニンニクを育てるという、とんでもない挑戦」に情熱を傾けて、取り組んでいる。

「土が作物を育てて、それを食べて健康になる。健やかな未来を信じて、今は土づくりから、こつこつと(笑)。究極的には、医食農の力強い連携を目指していきたいです」

日本三景の天橋立を擁する丹後半島は、豊かな自然環境に恵まれ、丹後産コシヒカリをはじめ、野菜、果物などが栽培される農業王国としても知られる。半島の西に位置する京丹後の丘陵地にある畑では、ちょうどニンニクの植え付けが行われていた。4~5人のスタッフが、黒いマルチシートをかけたうねに、植付機でゆっくりと丁寧に、一片ずつ球根を植えていく。
畑を管理するのは、京丹後市の市会議員をしていた早川雅映さんだ。公職を離れた後、2009年から、純丹後産のニンニクを使った熟成黒ニンニク「京丹後フルーツガーリック」の生産、製造、販売に一貫して取り組んでいる。フルーツガーリックの名の通り、ドライフルーツのような風味を持ち、そのまま食べても美味しいという。

現在、早川さんは5haの畑で原材料となるニンニクづくりに取り組んでいる。畑に除草剤を撒くのは1回。そのため、春先から6月の収穫までは草との格闘が続く。熟成段階では、添加物や調味料、水分も極力加えない。つまり純粋に、生ニンニクだけが原料となる。当然だが、原料の味が異なれば、同じ熟成プロセスを経ても出来上がりの味は変わる。いかに安定的に良質なニンニクをつくるか?
早川さんは、この6年間、試行錯誤し、最終的に土づくりの重要性に思いが至ったという。

「土の力=ニンニクの力。ニンニクづくりは土づくりに尽きると思っています。とはいえ、うちは周辺の農家さんと比べて、まだまだ出発点にも立っていないくらいですけど…」。
目指すのは、力漲る土だ。畑ごとに土質検査をして、複合発酵を用いてつくった鶏糞や有機堆肥などをしっかり補充する。さらにセラミックを通した良質の水を与える。そうして肥やした土の滋養をベースに、熟成プロセスでは微生物の発酵力を高める。土づくり、栽培、完熟発酵を通して、ニンニクにいかに滋養とパワーを加えられるか、その出発点としての土づくりに心血を注いでいるのだ。

早川さんの考えはこうだ。人間には免疫力や自然治癒力があるが、その力は数値だけで測れるものではない。土も全く同じ。数値では測りきれない、土本来の資質や生命力のようなものがあるはずで、それを総合的に伸ばしてやりたい。その方法を確立できれば、土地の力という背景を得て、病気に強く、もっと美味しく、もっと滋養豊かなニンニクが絶対につくれるはずだと…。

未だ試行錯誤の土づくりが続くが、年々、ニンニクの玉は大きさを増し、実がしっかりと充実して、熟成後の美味しさが格段にアップしているという。昨年まで12t前後だった収穫が、今年は大粒で良質なニンニクを30tも収穫し、大きな自信に繋がった。「まだまだ発展途上。あれこれ、試したいことは山盛りあるけれど、できることからやるだけです」。

ニンニクは6月の収穫を前に、土の滋養を全力でその身に取り込み、ぐっと肥えて、充実した球に育つ。いくら大粒でも、ぶよぶよしたものはだめ。実がしっかり詰まって、充実したものが良いという。
「手にのせた時、ずっしりと重みを感じるものがベスト。熟成させると本来の甘みがはっきり現れてくるのですが、出来が良いものは、熟成後の甘みが素晴らしいんです」。
丹精込めたニンニクは、木津地区の加工所へと運ばれ、気温60℃の熟成庫へ。女性スタッフが丁寧に管理し、1カ月かけて発酵、熟成、完熟へと移行していく。こうして完成したフルーツガーリックは、国内外のトップシェフにその美味しさが評価され、スペインの三ツ星レストランや料亭でも使われている。他に万能調味料や酢、ドレッシング、ジュレなどの加工品を開発し、販路を拡大中だ。

出来上がったばかりのフルーツガーリックを試食させてもらった。皮を剝くと、艶やかな漆黒の粒が現れる。食べてみて、驚いた。ねっとりと柔らかなニンニクを口に含むと、まるでドライプルーンのような、甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。ニンニク特有の臭みや辛みはほとんど、ない。大げさでなく、まさにフルーティー。「何、これ?甘い!!」と驚く取材陣に、早川さんは顔をほころばせる。
「これが完熟発酵から生まれる甘さです」。

乳酸菌や酵母菌類が複合的に発酵することで、甘みが増すだけでなく、熟成前に比べてポリフェノールが7.7倍、老化を促進するといわれる活性酵素などのフリーラジカルを抑える力が72・8倍も増加するという。
「フルーツガーリックは、ニンニクの匂いが苦手な人にも、毎日美味しく食べてもらえる、天然の“生サプリ”。この一粒が、健康づくりにきっと役立つと思います」。
健やかな土でつくった作物を、人々が食して、健やかな身体を得る。これはまさしく、農が健康を創るという好循環。早川さんはその手応えを感じ、農の向こうにある健康な暮らしをしっかりと視野に入れている。農業がクリエイトするもの=健やかな社会。その一つのかたちが、今、結実しつつある。

9月末から10月にかけて、スタッフが畑にニンニクの球根を植え付けていく。
熟成中は、女性スタッフが丁寧に管理し、水分の抜け具合を慎重に見極めて、ちょうど頃合いの時に熟成庫から取り出す。
調味料など加工品も多彩に揃う。フルーツガーリックS1(袋)1玉756円、フルーツガーリック万能調味料「黒の極味」100mL 1620円、フルーツガーリック入り「黒の酵酢」100mL 1080円、フルーツガーリックのジュレ90mL 864円。
創造工房のスタッフは女性が中心。加工品のアイデアには女性目線が生きている。

YANMAR Presents ヤンマープレミアムマルシェ

「A Sustainable Future」

テクノロジーで新しい豊かさを生み出す企業ヤンマーは、自然と共生しながら、人びとの豊かな生活を支える活動を続けています。「プレミアムマルシェ」は、2013年からヤンマーが始めた、美味しく、健康に良い生産物を、産地から口に入るところまで、「伝え」、「届ける」、生産者と消費者の橋渡しをする活動です。今年も、青空市場、テレビ番組、webサイト、イベント等で、「食と農のクリエイター」の皆さんを支えます。

プレミアムマルシェの詳細についてくわしくはHPをご覧ください。

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