松尾 高生氏
ヤンマー株式会社
農機事業本部 開発統括部 グローバル開発部 基幹開発部
安定姿勢による高精度作業や湿田走破性、省力化など、トラクター作業に求められる性能は、ますます高度に、そして多様になっています。これに応えるために、ヤンマーではデルタクローラを搭載した「エコトラデルタ」を開発。
ここでは、「エコトラデルタ」の魅力を作業別にご紹介します。
ヤンマーには、ホイルトラクター、フルクローラトラクター、エコトラデルタの3種類のトラクターがあります。作業やほ場条件によって、それぞれの特性を活かしたトラクターを使うことで、作業能率・作業精度がグンとアップします。
移動性・小回り性能、メンテナンス性など、ベーシックな能力が高く、汎用性が高いトラクターです。
作業適応性・精度をはじめ、全体的に高い能力を発揮します。
超湿田での作業やけん引などの重作業はフルクローラの独壇場です。
農作業を大きく変えるデルタクローラを搭載したヤンマー「エコトラデルタ」は、ホイルトラクターやフルクローラにはない、新たな魅力を持っています。
後輪クローラの広い面で接地し、荷重を分散。低い接地圧で沈み込みが少なく、湿田や軟弱地で優れた走破性を発揮。降雨後のほ場でもすぐに作業が行えます。
地面にピッタリ追従する揺動式のクローラを搭載。さらに前上がりを抑制することで強いグリップ力を実現し、悪条件でも余裕のけん引力を発揮します。
揺動式クローラと長い接地長の相乗効果で、ほ場の凹凸にも影響されにくく、常に安定した前後姿勢を保ちます。作業機の上下動が小さく、代かきや播種など、精度が求められる作業もスムーズに行えます。
芯金とスプロケットの金属同士が直接接触しない新駆動方式を採用。さらに揺動部には剛性の高いダグタイル鋳鉄製の2リンク機構を採用(EG97/105を除く)し、足周り部品への負荷を分散するなど、部品のロングライフ化を図っています。さらに、ヤンマーではハーフクローラユニットを特別保証部品とし、安心してご使用いただけるサポート体制を構築しています。
納品日から起算して満2年以内、または稼働時間600時間以内のいずれか早い方とします。
ヤンマー株式会社
農機事業本部 開発統括部 グローバル開発部 基幹開発部
ヤンマートラクターのコア技術である低燃費で粘りのある「エコディーゼルエンジン」と変速ショックのない「無段変速トランスミッション」、この2つに、フルクローラトラクターで培った技術を融合させ『プラスα』の魅力を持つ「ヤンマー独自のハーフクローラトラクターをつくろう!」という想いからエコトラデルタの開発はスタートしました。
まずは求められる『プラスα』とは何かを知るために、全国各地のユーザーの方々を訪問し、調査を実施しました。
様々な声の中から絞り込んだコンセプトは「高い作業適応性」、「低振動・低騒音」、「高耐久性」、「ラクラクメンテナンス」の4点でした。そして、その中でも最もこだわり抜いたポイントが「高い作業適応性」です。クローラの利点を活かし、作業適応を高めるために、試行錯誤を繰り返すことで到達したのが、2リンク式揺動方式です。
この揺動方式は、けん引力と旋回性のバランスをとることが可能で、しっかりと地面を捕まえることにより、作業安定性、湿田走破性はもとより、耐久性も向上させることができました。この実力はプラウやサブソイラなどの重けん引作業や、湿田作業で体感していただけると思います。さらに、あぜ塗りやうね立て作業においては、安定性・直進性に優れた「デルタクローラ」と、作業中に変速を行ってもショックが少ない「無段変速トランスミッション」の組み合せで、キレイな仕上がりを実現します。また、傾斜地にも強く、横滑りしにくいクローラのラグ形状を新たに採用するなど、随所に安定性と快適さの工夫を盛り込むことでエコトラデルタは完成しました。
商品化に至るまでには、多くの方から助言をいただきました。
特に試作機のテスト段階では、全国各地のお客様や販売店を訪問し、湿田をはじめ、畑作管理作業など様々な状況下でのテストを実施する中、時には厳しい言葉をいただくこともありました。
しかし、その期待に応えるべく、全員開発で取り組んだ結果、『プラスα』の魅力を兼ね備えたエコトラデルタを完成させることができたのです。
開発、製造、販売、そしてヤンマーに期待を寄せてくださる農家の皆様…多くの人の想いをけん引する「エコトラデルタ」シリーズ、是非一度、試乗していただきたいと思います。