営農情報

2013年1月発行「トンボプラス1号」より転載

収穫・調製作業の機械化で加工・業務用キャベツの一貫体系が完成!

キャベツは収穫調製作業にかかる時間と労力が、長年、産地の規模拡大のネックとなっていました。近年、食生活の変化に伴う外食・中食の増加から加工・業務用キャベツの需要が拡大するにつれ、産地ではさらなる規模拡大が急務となり、大型コンテナに対応した、高能率な収穫機の開発が待たれていました。

そこでヤンマーと生研センターの産官連携プロジェクトが、進化した高精度キャベツ収穫機HC125・HC141を開発。ここに、一歩進んだ加工業務用の“キャベツ機械化一貫体系”が確立しました。

一歩進んだキャベツ機械化一貫体系を確立

近年の食生活の変化を反映して、加工・業務用キャベツの需要が伸びる中、機械化が待たれていた新しい高精度キャベツ収穫機HC125・HC141が開発されました。

そこで生研センターを訪れ、同センター園芸工学研究部長の宮崎昌宏氏と、同部でヤンマーと共にキャベツ収穫機の開発に関わってこられた主任研究員の深山大介氏にお話をうかがいました。

野菜需要に占める加工・業務用需要の割合

宮崎 昌宏 様

(独)農業・食品産業技術総合研究機構
生物系特定産業技術研究支援センター(以下生研センター) 園芸工学研究部長
筑波大学大学院生命環境科学研究科 教授 農学博士

深山 大介 様

生研センター
園芸工学研究部
野菜収穫工学研究 主任研究員

目標の作業能率と作業精度を達成!ヤンマー高精度キャベツ収穫機

今回の開発にあたって同センターが特に留意したのは、高精度な刈取部の開発と、機上での調製作業の実現だ。そのため平成13年に発売され、評価の高かったHC10の刈取部を継承、さらに機上に大型コンテナを1つまたは2つ置き、作業員が2人~4人乗れるよう足回りと馬力を改善した。

キャベツ収穫の流れを簡単に紹介しよう。
掻込ホイルによって茎を掴んで引き抜かれたキャベツは、まず姿勢制御装置の回転ローラによって一定の姿勢に整えられる。
その後、左右にある上下2段の挟持ベルトによって搬送されるが、その際、ベルトの搬送速度に微妙な差をつけることで結球部の前後姿勢を補正しながら茎部を最適な位置でカットし、機上後部の調製ラインまで搬送する。

現場で開発に携われた深山氏は、「北海道などではほ場も広いので、きちんと育てていても生育が不揃いになるんです。そんな環境でも対応できる刈取部にするのがたいへんでした」と、今回のポイントである刈取部の精度アップについて当時を振り返る。これにより目標の作業精度85%以上と、毎秒15(10~30)cmの作業速度で1日約20aの作業能率を確保した。

「とにかく精度はすばらしく良くなりました。生研センター目標としては、作業精度85%以上としていますが、実感としては95%以上のイメージですね」と宮崎氏。試験機のオペレータの方も、試験を見に来られた農家の方もそんな印象を語っていたと微笑む。

作業速度 0.15m/秒
作業能率 約20a/日
作業精度 85%以上

生研センター目標作業性能

  • 適切な位置で切断され、結球部にキズ等の無いものの割合

そして今回、移植機や乗用の管理作業車なども出揃い一貫体系が確立されるが、収穫調製作業には、もうひとつ目玉がある。

JR貨物コンテナに積載するための大型コンテナの開発とそれを運ぶリヤリフトの商品化だ。これによってモーダルシフト(輸送・交通手段の転換を図ること)も含めた、一歩進んだ一貫体系が確立。低コスト化と労力軽減を実現する。「今回の収穫機開発によって、物流も含め、加工・業務用キャベツ生産効率がさらに上がるでしょう。私達の研究が産地のお役に立ててうれしいです。これからは日本全国での適応性を検証していきます。様々な産地に、この収穫機が普及していってほしい」宮崎氏は、自信に満ちた表情で語ってくれた。

キャベツ生産30年のプロが太鼓判!ヤンマーキャベツ収穫機

腰を曲げて一つずつ穫っていくキャベツの収穫作業は、その重労働から規模拡大がなかなか進みませんでした。北海道芽室町で25haのキャベツをはじめビート、ナガイモ、にんじん、ゴボウ、小麦などを生産する畑作農家、高橋さんに新型のキャベツ収穫機HC125・HC141の感想をうかがいました。

高橋 光男 様

北海道河西郡芽室町

「そりゃ、従来機と比べたら、すべて良くなったよ(笑)」北海道芽室町の畑作農家、高橋さんは、新型のキャベツ収穫機HC125・HC141の感想をそう語ってくれた。
これまでキャベツは、腰を曲げて一つずつ穫っていく収穫作業が大変で、規模拡大が進まなかったのだ。生食用キャベツを栽培してきた高橋さんも、全国のキャベツ農家の例にたがわず、以前からこの問題に直面してきた。そんな中、平成13年に発売されたのがキャベツ収穫機HC10だ。当時から営農意識の高かった高橋さんは、オペレータとして実証試験にご協力いただきその良さを実感。すぐに同機を導入し収穫作業の労力軽減と効率化を図ってこられた。

ところが近年、加工・業務用キャベツの需要が拡大するのに伴い、キャベツの価格が比較的安定しやすくなったことから、去年まで生食用を栽培していた高橋さんも加工・業務用に転向。段ボール出荷からコンテナ出荷に移行していったのだ。しかし従来機は段ボール出荷に特化していたため、ここ数年、高橋さんは物足りなさを感じたていたという。そんな中、新型収穫機開発の話が持ち上がった。今回も実証試験にご協力いただき、従来機からのその変身ぶりに太鼓判を押していただいたのだ。

「能率も良くなったけど、刈取部の精度が抜群に良くなった。刈取ったキャベツの姿勢を、運転席で細かく調節できるようになったのが良いね。茎部カットの精度が上がったから、歩留まりがもっと良くなると思う。これだけ精度が高ければ生食用でも使える」キャベツをつくって30年のベテランにお墨付きをいただいたのだから、まさにキャベツ収穫機の決定版とも言える。

キャベツ機械化一貫体系の確立に、高まる産地での期待

ところで規模拡大を目指す高橋さんの望みはさらに高い。「新型収穫機は2機種あるけど、北海道では大型のHC141だね。全体の効率はコンテナをどれだけ積めるかによって決まる。だからもっと大きくてもいいよ(笑)」。冗談と思われるかもしれないが、高橋さんのキャベツほ場は、一辺が300m近くもあるというから頷ける。

「自分だけでなく、見に来た知人もキャベツ収穫機を導入したいって言ってる。ヤンマーさん早く売ってくれないかなぁ(笑)」キャベツ栽培の効率化を目指す高橋さん達は、新型キャベツ収穫機に大きな期待を寄せている。

ヤンマーキャベツ収穫機

機械での一斉収穫で大幅に効率化・軽労化!

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