営農情報

2017年6月発行「トンボプラス10号」より転載

〈メーカー探訪〉社員と地域と共に!女性が働きやすい職場で創業100年を迎える 株式会社 山本製作所

乾燥機や環境機器などのメーカーとして知られる(株)山本製作所は、2018年8月に100周年を迎える歴史ある企業だ。
そんな同社が、優れた商品やサービスを提供するために大切にしているのは、社員や地域との共存共栄の精神だ。経営理念にも〈人をつくり、商品をつくり、豊かさをつくる〉とある。その考え方は創業以来変わっていない。
「そうですね。言葉は時代によって変わるんでしょうけど、中身はずっと変わってない。経営理念も〈企業は人なり〉から始まるので、そこはいちばん大切にしています」と、説明してくれたのは広報グループの伊藤氏だ。

100年前と変わらぬ思いは〈人と地域を大切に〉

農機事業部 営業部 本間 善教 様(写真左)
経営企画部 広報グループ 伊藤 賢 様(写真右)
経営企画部 広報グループ 高橋 夏帆 様(写真中)

山形県東根市(本社/山形県天童市)
株式会社 山本製作所

女性の活躍を支える従業員功労表彰や子育て支援企業認定

そしてもうひとつ同社で気づいたことは、男性社会と思われがちなメーカーの中で、ひとつふたつと花が咲くように女性が活躍している。
「今は営業でも、女性のセールスが少しずつ増えはじめています。工場でモノづくりをしている人の割合は女性が多いですね」。工場を見学させていただいたが、確かに女性が多かった。それを感じさせるのが、女性従業員の〈日農工・従業員功労表彰〉。そして、最近の取り組みとしては、厚生労働省が認定する〈子育てサポート企業の認定取得〉だ。

「山形県から弊社は2014年と2016年に認定されています。男性社員が育休を取れるか、産休を取れるかなど、いろいろ条件があって、それをクリアしなければ認定されません」と、伊藤氏。しかし認定もさることながら、それを実践するのも大変だ。「部門で仕事のやり方を見直しながら進めないとなかなか難しいですね。工夫しながらやっています」。認定企業は2017年現在、全県で35社だが、その中で2回以上認定されているのは、同社を含めてわずか4社と優秀だ。

同社の製造部門では、男性社員に加えて、工場で明るく元気に働く女性が多い。
操作盤やバーナーなど、乾燥機の中心部はほとんど女性がつくっている。
子育てサポート企業の認定を受けた企業が使える〈新くるみんマーク〉。同社は2回取得しているため2つ星。
第54回・日農工従業員功労表彰を受賞する渡辺うめ氏(写真右)とご家族(写真中)。ここでも女性が活躍!

認められれば世界一周!ユニークな企画でモチベーションアップ

社員のモチベーションアップには、さまざまな工夫が必要だ。例えば同社は社員食堂で、ギャバ米(※)を使っている。「これは社員に対する社長の強い思いです。社員の健康が会社経営の基本だということで」と、伊藤氏。
また、年間2名の社員に世界一周旅行を贈る〈あなただけの世界一周旅行〉や、社員が講師になって自分の得意なものを興味のある人に教える〈わいわい大学〉という企画がある。これならモチベーションも上がる。

もちろんメーカーらしく、技術に真摯に向き合う取り組みもある。〈技能五輪〉への挑戦だ。技術継承にはリーダー的人材が必要なこと、また現場での意識向上などを考え2015年から参加。挑戦者だけでなく周りの人も刺激を受け、全体のレベルアップにつながっているという。今後の技術力の伸びが楽しみだ。

  • アミノ酸の一種である〈ガンマ−アミノ酪酸=ギャバ(GABA)〉を多く含んだ米のこと。食べることでさまざまな健康効果やリラックス効果が期待されると言われています。

発電出力約1.9MW。震災を機に太陽光発電事業に参入

同社の敷地内には、太陽光発電設備が設置されている。「最初は、元々グラウンドだったところに設置したんですが、その後に工場・倉庫の屋根にも設置しました」。

当初の発電出力は500kWだったが、今は1.9MWになっている。実は導入の背景には、東日本大震災がある。「震災で、この工場も2週間ほど止まりました。これがきっかけとしては大きいですね。最初の500kWというのは、工場で使う電力と同じなんですよ」。メイドイン山形の太陽光パネルを使っているのも、地域連携のひとつだ。

旧グラウンド(写真右下)と工場・流通倉庫(写真左上)の屋根には、約1.9MWの電力を発電する、太陽光発電設備が設置されている。

地域ともつながり創業の思いをつなぐ100年企業へ

同社の地域貢献は、以前から行われており、天童市と東根市の駅前や公園などでの清掃活動を実施。活動は現在も続けられている。
さらにその発展形と言えるのが、地元のマラソン大会へのボランティア参加だ。
「東根市主催の〈果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会〉では毎年約60名。天童市の〈天童ラ・フランスマラソン大会〉にも40名ほどがボランティアで参加して、ランナーの皆さんに飲物を提供しています。まぁ、最近はマラソンが終わってから芋煮会やBBQをするので、社員の親睦も兼ねていますね」と、笑う本間氏。社員間の関係も地域との関係も良好だ。

「人をつくり、商品をつくり、豊かさをつくる」乾燥機業界のトップランナー

米づくりで最も重要な工程のひとつ、乾燥調製を担うメーカーとして、業界トップを走る同社は、独自の技術力とこだわりのクォリティで、全国に知られている。
その企業姿勢は、同社の企業理念や社是などに紹介されており、会社案内やホームページ等で知ることができる。しかし実際の職場で、どのように実践されているのだろう?そんな思いから、今回の取材が実現した。そこには、創業の精神を現代に伝えるために考えられた、社員と地域に支持されるさまざまな企画、ユニークな取り組みがあった。
それが〈向上の一路に終点なし〉の言葉を忘れず、常に各自が技術研さんに励み、社員自身が〈買う気でつくる〉顧客満足度の高い商品をお届けすることにつながっている。さらにその姿勢が、農業や環境の分野で、同社の新たな原動力を生み出していることが良くわかった。

同社は2018年に100年を迎えるが、創業の企業姿勢を旨に200年、300年…と、ポストハーベスト分野への貢献を続けて欲しい。

■経営理念

人をつくり、商品をつくり、豊かさをつくる。
企業は人なり、人が中心となって、よい商品・サービスが生まれる。
よい商品・サービスは、社会に豊かさと満足を提供でき、私達も豊かさが得られる。
そのためにも私達は仕事を通じ、日々成長しなければならない。

取材にうかがった東根事業所。広大な敷地には営業部門、技術部門、物流部門、製造部門(工場)などが入る。