営農情報

2018年1月発行「トンボプラス11号」より転載

〈メーカー探訪〉「スター」ブランドの精神や対応はそのままに、合併で新会社へ! 株式会社 IHIアグリテック

今回、訪問したメーカーは、2017年10月1日に誕生した、株式会社IHIアグリテック(以下、同社)だ。
社名に聞き覚えのない方も多いと思うが、実は酪農畜産関連機械でお馴染みの、前 株式会社IHIスター(以下、旧スター)と、芝草・芝生管理機器で知られる前 株式会社IHIシバウラ(以下、旧シバウラ)が、同じIHIグループ内の農業系企業ということで、ひとつにして伸ばしていくことを目的に合併された新会社だ。

農業に関連するメーカー同士が、事業基盤強化を図り、お互いのリソース(ヒト・モノ・カネ等の経営資源)を集約。また、それぞれの技術を融合して、新たな市場ニーズに応えられるよう、より付加価値の高い製品、サービス、ソリューションを提供できる企業になることを目的に、合併の運びとなった。今回は、旧スターとして馴染みの深い同社千歳本社へうかがい、新会社を紹介いただき、合併によって何が変わり、何が変わらないのか?また農家へのメリットは?など、気になるお話を取材してきた。

旧(株)IHIスターと旧(株)IHIシバウラが合併し(株)IHIアグリテックが誕生!

営業本部 企画部 部長 中崎 幸夫 様(写真左)
営業本部 企画部 商品企画グループ 担当課長 植竹 哲也 様(写真中)
営業本部 企画部 販売企画 千歳グループ 黒坂 智恵 様(写真右)

北海道千歳市(本社/北海道千歳市・長野県松本市)
株式会社 IHIアグリテック

お客様との距離をより近く、旧スター時代と変わらぬ対応

「新会社になっても、昔からの基本的な考え方は変わらないですよ」。笑顔で対応いただいたのは、同社営業本部企画部部長の中崎幸夫氏だ。農家の皆さんに、少しでも楽に作業をしてほしい!収益を上げてほしい!という思いは、旧スター時代から変わらないという。農家へのメリットは「私たちとしては、これまでの酪農畜産関係中心の機械から、旧シバウラさんの自走技術を使った管理作業機等もご提案できますし、将来的にはお互いの技術を結集させた新しい提案もしていきます」と、中崎氏。今後の商品開発が楽しみだ。

また、旧スター時代から実施していた営業担当者向けの研修会も続けている。「ヤンマーさんと協働でお客様へ販売を行っていますが、スターの営業担当者がお客様のところへすぐには行けない時もあります。なので、なるべく多くの販売会社様が、お客様へ提案できるよう、まずは自社の営業担当者の知識、技術を万全にし、販売会社様がお客様へ提案できるよう、研修を多く行ってきました。今後もこの研修を通じて、お客様との距離を縮め、スターブランド商品を拡げていきたいと思います」。

スター営業担当者を集めて行われる商品研修。国内だけでなく海外営業の若手社員にも行っている。

男性社員はもとより、女性社員にも働きやすい職場

社内の雰囲気についてうかがうと、働きやすさは以前と同じく、女性にも働きやすい職場だという。「女性にも責任ある仕事を任せています。工場では、女性が1人で組立てを行うラインもあり、重たい工具は上から吊るす工夫など、環境を整備しています。また営業的な部分では工場見学を行う際には、女性が説明をしながらご案内するという役割も任せています。もちろん展示会・実演会などの説明も女性社員が担当するようにしています」。展示会での、女性が機械を動かしながらの説明は、業界でも先駆けにあたる。さらに女性の管理職への登用もあるという。

女性1人でのラインでは、工具や部品をひとまとめにするなどの工夫がされている。
部品の自動搬送装置には愛称が付けられ、作業により区別できるように工夫されている(写真は〈Eちゃん〉)。

社内の親睦に対しても地域貢献にも手を抜かない

社内コミュニケーションについても昔から配慮してきた。モチベーションアップと社内の親睦を兼ねて、職場対抗のソフトボール大会やソフトバレーボール大会、また敷地内でのジンギスカンパーティなども開催。毎年社員やその家族なども一緒になって歓談し、交流を深めている。仕事以外の時間を共有することで、同僚や上司の新たな一面を発見するなど、普段のコミュニケーションの円滑化にもつながっている。

1924年、豊平機械製作所という地域名を冠した社名で創業をされた同社は、地域社会とのつながりも大切にしている。「団地内の掃除は社員が自発的にやっています。あと地域のお祭りの前には牧草地を刈って、駐車場として使えるようにしています。まぁ、私たちの研修も兼ねてはいるんですけど(笑)、地域の企業と連携をとりながらやっていますね」。たとえ研修を兼ねていたとしても、地域貢献には違いない。

営業本部 企画部 商品企画グループ担当課長の植竹哲也氏は、「地域農業の安全に関する啓発活動ということで、普及センターからの依頼等により、そういった催し等で農機の安全講習の講師をさせていただくことがあります。これからも続けたい活動のひとつですね」。これも地域貢献のカタチだ。社内に対しても地域に対しても取組みの手を抜かない。同社は〈スター〉ブランドの精神を受け継ぎ、新たに〈シバウラ〉ブランドの精神と融合することで、より磐石な企業となるに違いない。農家により近いメーカーをめざし、一丸となって頑張っていただきたい。

年に一度は、北海道ならではのジンギスカンパーティで大盛り上がり。

2社のノウハウを融合し、農家を支える新商品開発を!

IHIスターは、酪農畜産関連農業機械の分野で、国内トップクラスのメーカーだ。90年を超える歴史のなかで、国内の酪農畜産農家をはじめ、耕種農家に対しても、信頼の技術と、お客様により近いサービスで、農家の期待に応えてきた。そんなIHIスターと、歴史のある芝草・芝生管理機器メーカーであるIHIシバウラとの合併は、IHIグループの企業基盤をより強固にし、国内外農業への事業展開を図る強い意志を感じる。

2017年10月1日、両社の合併によって誕生した株式会社IHIアグリテックは、まさに未知の可能性を秘めている。これからはIHIグループ企業の理念を旨とし、農業の発展と、それに携わるすべての方々の安心安全を願い、豊かな食をお届けする農家を支える企業を目指す。この先、2社それぞれが培ってきた実績や独自のノウハウを融合することで、新たに生み出される商品やサービス、ソリューションに期待したい。

■企業理念

「技術をもって社会の発展に貢献する」
「人材こそが最大かつ唯一の財産である」

酪農畜産関連機械の開発部、品質保証部、営業本部、生産センター(千歳)が入る千歳本社。