営農情報

2017年1月発行「トンボプラス9号」より転載

コシヒカリ発祥の地で、地域農業を受け継ぐミニライスセンター

コシヒカリのふるさと福井県坂井市で離農が進む地域の将来を憂い、専業として独立・法人化し、米の直販を実践してきた有限会社さんさん池見。そんな同社の営農をけん引してきたのが、施設内につくられたミニライスセンターと〈農と食〉に対するこだわりだ。工夫とこだわりで自慢の米を全国のお客様に届ける代表取締役の大嶋裕一氏に想いを語っていただいた。

大嶋 裕一 様

福井県 坂井市
農業法人 有限会社 さんさん池見

高齢化・後継者不足で離農する人の農地を預かり地域の受け皿として〈さんさん池見〉を設立

コシヒカリを生み出した地、福井県坂井市で、(有)さんさん池見の代表を務める大嶋氏は、現在3名で36haの水稲ほかを生産しているが、同社を立ち上げる前は、個人の兼業農家だった。
あるとき、すでに組織を運営していた知人から大嶋氏に「これからは規模も大きくなるし、自分らも歳を取るから、一緒にやらんか?」と、声をかけられた。個人の兼業農家が営農組織を立ち上げるのは大変なことだが、離農により地域の農業が先細りしていくのを目の当たりにしておられた大嶋氏は一念発起。2004年に、もう1人の知人と3名で、まだ任意団体のさんさん池見を立ち上げた。地域名称の〈池見〉を社名に付けられたことからも、地元への思いの強さがうかがわれる。

組織の立ち上げにあたってまず考えたことは、米を直販して利益を確保すること。それにはミニライスセンターが不可欠だ。しかし施設を建てるにも資金がない。
「とにかく資金を借りて施設を整え、自分たちで米を売って返済する計画だったので、JAを頼りました」。(当時は貸す側も事例が少なかったためか)紆余曲折の末、金額を減らされたものの借りることができた。当時の規模は水稲約8ha、作業受託が約10haで、自分たちで売れたのはその約1/3。残りはJAや一般の販売業者に出荷した。現在、同社が預かっているほ場は全部で36ha。12年で2倍になった。お客様もクチコミで増える一方だという。

鮮度・食味・安心・安全にこだわった米を販売。クチコミで広がる丁寧な仕事

同社のすごさは、商品販売力だ。「自分から営業をしないのに、クチコミで広がって、今はほぼ全量、自社販売です」。その人気の理由は〈こだわり〉だ。と言っても特別なことをしているのではない。「今は、農繁期以外は作業受託をせず、ほ場を預かる形態にしています。全工程を自分たちで管理できるんで、品質も安定しています」。お1人が辞められたが、去年からご子息が入られ、基本的に3人で作業をしておられる。そして同社では、農薬を通常より減らしたり、施設内の清掃等にも気を配るなど、食の安心安全にも配慮している。「ウチの米は価格が高いという人がいますが、きちんとつくってますから、スーパーの米とは全然モノが違う」と、胸を張る。

幹線道路に面した事務所前の直売店舗では、米や枝豆、ブドウなどを買い求めるお客様が頻繁に来店する。

とにかく品質には、ゆるぎない自信がうかがえる。当然食味にもこだわって、乾燥には遠赤外線乾燥機を使っている。一昨年、乾燥機を更新したが、その際も、従来と同じ金子農機株式会社(本社/埼玉県羽生市)の遠赤外線乾燥機RKF(90石)を2台導入された。金子農機を選んだのは、使い慣れていたこともあったが、独自の〈全粒照射方式〉を採用しているからだ。

またこの選択には機械トラブル低減の意図もある。
「メンテナンス対応はもちろん、担当者が、通りがかりに覗いてくれるんです。『トラブルはないですか?』って。やっぱりプロが使う農機は、サービスも含めた信頼が重要」。またヤンマー特約店の、合資会社定池農機製作所(本社/福井県坂井市)定池社長も、施設のラインづくりから関わり、何かあるとすぐ駆けつける。大嶋氏は、ほ場や施設の管理には〈サービス〉が重要と強く認識している。このような両者の対応も同社のこだわりを支えている。さらに購入後の米の食味を保つ〈お米のお預かりシステム〉という流通形態にも取り組んでいる。30kg以上は同社で預かり、お客様の必要な量だけその都度精米して届けている。食べる人の身になって保管のあり方まで考えておられるのだ。

遠赤外線乾燥機は、特許技術の【全粒照射方式】

全粒放射式の場合、照射ポイントの籾層が約1cmと薄く穀物の1粒1粒に赤外線が当たるため、ムリ、ムラなく高品質に乾燥する。一方、一般的な遠赤外線乾燥機の場合は、照射ポイントの籾層が厚くなったり、多孔板によってさえぎられるため赤外線がいきわたりにくい。

空間の使い方のひと工夫が、スペースの有効活用や安心・安全につながる

乾燥機に続いてほかの施設を見ていこう。まずは機械の配置。
「修理や清掃がしやすいように、機械と機械の間に余裕をもたせています」と、大嶋氏。一般的な施設では機械の間に余裕がないが、同社の場合、ゆとりがあるのでメンテナンスがしやすいうえ、床の清掃も行き届く。『玄米を1粒も落とさない。足で踏まない』『食品を扱う場所は清潔に』が、大嶋氏のモットーだ。
さらに、必要は発明の母ということわざがあるが、限りある敷地でも効率良く使いたいという思いが、意外な工夫を生み出した。

施設内に入ってすぐ、3台の貯蔵タンクが目につく。必要に迫られて追加したというが、実はこのタンクの脚部分にキャスターが取付けられているのだ。
「ここは春作業でも使うから、キャスターを付けて移動できるようにしました。でも処理量が増えてタンクの上部を足したんで、人力では移動できなくて、今は上のクレーンを併用しています」。
大嶋氏の言葉に促されて上を見ると、なんと建屋の天井にクレーンが設置されている。今では貯蔵タンクの移動だけでなく、ほかの設備の移動やメンテナンスの際などにも役立っているという。

機械と機械の間に、人が1人十分に入れる空間を空けて、清掃・メンテナンスをしやすくしている。
3台ある貯蔵タンク(左)。各脚にはキャスター(右下)がついており、使わない時期は、天井のクレーン(右上)とキャスターを使って移動させる。
ミニライスセンターの核とも言える乾燥機(左)と貯蔵タンク(右)。搬送コンベアも上にあげて清掃をしやすくしている。

5台の乾燥機群と3台の貯蔵タンクをやり繰りし、自社米とお客様の米を効率良く選別

また同社では、自社米以外に地域のお客様の米も乾燥しているため、この3台の貯蔵タンクは、自社米とお客様の預かり米の選別乾燥に活躍している。
時期中の乾燥調製は、1日に約320石(約48t)を処理する。だから大変なのだ。「朝、乾燥が終わったら、すぐ次の荷受けができるように乾燥した籾を貯蔵タンクに移します。そして移した籾は、その日の内に籾すりをする。でないと、次の荷受けができないんです」。そこで問題になるのが、個人からの持込み米の乾燥だ。
「自社分はプール式で順番に満タンにしていけばで良いけど、個人のお客さんの預かり分は『何時いつに60a分ぐらい』とか、日程も受け入れ量も決まっているし、1軒ごとに乾燥するから混ぜられない。乾燥機と貯蔵タンクの空き具合を考えながら、メインの乾燥機はお客さん用に使って、ウチの米は空いてるところでやります」。貯蔵タンクが3台あるからうまく回すことができる。
これも地域貢献の一環と言えるのではないだろうか。

独自に工夫された〈さんさん池見〉の精米フロー

乾燥機と貯蔵タンクを駆使して、自社米とお客様の持込み米を効率良く選別乾燥。収穫時期が終われば脚部のキャスターと、天井のクレーンを使って移動。空いたスペースを春作業に活用。

規模拡大も、主軸は「地域農業の継承」。〈見える化〉で、若い人のアイデアも取り入れたい

最後に大嶋氏の考える、同社のビジョンをうかがった。クチコミでお客様の増える同社の今後は、どこを目指していかれるのだろう。
「将来は若い人が農業に魅力を持ってもらえるような会社にしたいなと思います。今はまだ、ウチが預かっている面積は、当地のほ場面積の半分ぐらいですが、規模拡大についても(単にビジネスを広げるのではなく)将来的には、この地区のほ場をできるだけ受け継げるような受け皿になっていきたい」。地域への想いはブレない。
ただ、考え方は柔軟だ。「私たちはもう頭が固くなってくるから、若い子が増えたら、その子たちの発想を活かしていきたい。今も一部データを使ってやっているけど、手書きしていた情報を全部入力して、衛星写真とリンクするようなシステムも入れていきたい」と、〈見える化〉にも前向きだ。

さらに「ウチはまだ無理だけど、海外で日本食ブームだから、これからはG-GAPなんかも視野には入れないとね…」と、新しい市場も意識しておられる。
穏やかな表情、口調のなかに大嶋氏の強い思いが感じられる。こだわりと創意工夫と信念で、これからも米どころの農業を絶やさないよう頑張って欲しい。

カルパーコーティングマシンYCT20、産業用無人ヘリAYH-3、コンバインAG6114R、籾すり機ACH600などのヤンマー製品もお使いいただいている。

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