代表取締役社長 佐々木 一仁 様
青森県十和田市
株式会社 ササキコーポレーション
農業機械の分野には、歴史ある企業が多いが、創業から100年を超えて、今なお新たな創造・挑戦を続けることは、簡単ではない。代かき機マックスハローや、あぜぬり機カドヌールなどの製品で知られる(株)ササキコーポレーション(以降、同社)は、2021年に創業120周年を迎える老舗企業だ。
青森県で生まれた創業者の佐々木忠次郎氏は、向上心と好奇心に溢れ、刃物鍛冶の技術を習得、強い〈開拓精神〉と高い鍛冶の技を持って、当時、移住ブームに湧く新天地北海道へ渡り、空知郡(現美唄市)の屯田兵村で鍛冶屋を開業した。企業理念にもある〈開拓精神〉は、この時期に生まれ、代々受け継がれたものだ。
青森県十和田市
株式会社 ササキコーポレーション
創業者の佐々木忠次郎氏は、技術の高さもさることながら、旺盛な好奇心とモノづくりに対する情熱から、当時の屯田兵村の倉庫に、日本人の体格に合わず放置されていたアメリカ製馬耕農機具に注目。試行錯誤の末、日本人や日本の農耕馬に合わせて改良を行い、日本初の洋式プラウとして販売。このプラウが初めて売れた1901年6月15日が、農機具屋〈佐々木鉄工場〉の創業日となった。これが現在の同社のルーツとなる。
その後、満州へ進出し成功するも敗戦で帰国。1947年に青森県十和田市で、農機具専門工場、佐々木農機(株)を設立した。当時の日本の食料不足を少しでも改善できるよう、農機具の開発販売で農業の近代化推進の先駆けとして尽力。1951年には、カルチベーターの多用途開発に対する特許考案と普及活動が国に認められ、業界初の発明賞を受けている。モノづくり企業としての同社の地盤は、この頃すでに固まっていた。その後の同社の発展は、誰もが知るところだ。
新しいことに挑戦する同社の意欲、創意工夫にかける情熱は、半端ではない。主力製品の代かきハローやロータリー、あぜぬり機などは、農家のニーズに合うよう見直され、今や作業速度が従来の2倍、3倍のスピードアップを実現している。〈時は金なり〉という諺があるが、まさに同社の製品は創業の〈開拓精神〉を受け継ぎ、農家のコストダウンに大きく貢献している。また早くから電動化に着目するなど、常に自由な発想を受け入れてきた開発気質から、スマート農業への対応もスムーズだ。近年では、ロボットトラクターでもけん引できるニンニク収穫機を開発し、試験に協力いただいた農家から期待の声が届いているという。同社では、開発部員がほ場へ出て農家の声を聞き、農家の協力を得ながらほ場試験を行うなど、活きた情報をモノづくりのヒントにしている。ここにも、創意工夫にかける同社の情熱をうかがうことができる。
同社のユニークな製品を生み出す環境について、佐々木氏に聞いてみた。「企業理念に、“私達は仕事を通じて、私達の生活を豊かにし、よりよい社会を作ります。”と謳っていますので、卓越した価値創造や、技術革新に挑戦しております。具体的に言うと、<意見交換会>を月1回行っています」。
これは、様々な部門の人が集まり、製品企画のアイデアを生み出す場のことだ。ここで出た多様な意見を、製品開発に活かしている。また同社の〈開拓精神〉は開発だけでなく生産ラインにも向けられている。生産ラインは、多品種少量に対応できるよう、社員が積極的に工程改善。2016年にはその功績が認められ、改善された生産ラインが、文部科学大臣より創意工夫功労賞を受けた。
そんな同社の、モノづくりに対するこだわりは、社会貢献の場にも広がっている。「この頃、若者のモノづくりに対する興味が薄れてきているように思うんです」。そんな風潮を危惧する佐々木氏は、地域貢献の一環として、地元青森県内の〈少年少女発明クラブ〉普及のために社をあげて参加・運営面で協力。また県内の教育機関と連携して、普通科の高校でモノづくりの素晴らしさを伝える講義を実施、さらに近年のロボコンブームを受けて、青森県内の大学生の研究サポートや、共同研究などの産学連携活動にも取り組んでいる。モノづくりの大切さを次代に伝える、同社らしいユニークな活動だ。
取材の最後に、佐々木氏に、次の100年に向けてのビジョンをうかがった。「私は〈過去は将来を保証しない〉という気持ちを強く持っています。会社は120年経ちますが、“今までこうだった”というのが嫌いなんです。現時点で何が良いのかをいつも考えますし、社員にも言っています」と、きっぱり。〈開拓精神〉を心に刻み、過去の実績に甘んじず、時代を見つめて挑戦を続ける忠次郎氏から続く創業の精神は、しっかりと受け継がれている。
創業者、佐々木忠次郎氏の〈開拓精神〉を大切にしながら、100年以上も発展を遂げてきた同社は、〈技術〉に重きを置いた、モノづくり企業だ。現社長の佐々木氏も、「自社の技術や工場、協力会社さんの能力で製品化ができそうなモノなら、農業という分野や、いろんな固定観念にとらわれず進めるようにと、皆に言っています」と、語る。その言葉を裏付けるように、同社は環境機械やバイオマス機械などの異分野にも進出。またその技術力の高さは、新製品の開発だけでなく、日本国内の特許をはじめ、アメリカやオーストラリアなどでの国際特許権の取得、多くの受賞歴などを通しても容易に知ることができる。創業の精神は、同社の〈技術力〉の多様性や、奥行きにも表れている。
開拓精神を源泉にあくなき探究心と
熱い創造力で新世紀を拓く
私達は仕事を通じて、私達の生活を豊かにし、
よりよい社会を作ります。