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2025年6月発行「トンボクロス10号」より転載

〈メーカー探訪〉優れたポンプ技術で広く社会に貢献する 株式会社丸山製作所

代表取締役社長 内山 剛治様

東京都千代田区
株式会社丸山製作所

消火器に始まりポンプ技術を発展させ多様な製品を展開

株式会社丸山製作所(以下、同社)は、東京都千代田区に本社を構える、幅広い分野で事業を展開する農業用機械、産業用機械のメーカーだ。創業は1895年。今年で130周年を迎える。消火器の開発から始まり、その技術を応用して農林業分野に進出、ポンプ技術を発展させるとともに、自社でエンジンを開発するまでに至った。時代と共に歩んできた同社の沿革を内山氏はこう語る。

創業は「新潟県で丸山商会として消火器の製造販売を始めたのが起こりです。当時は木造家屋が主で火災が多く、海外製品を研究して初の国産消火器を生み出しました。また、食糧増産が国の課題であったため、農業に商機を見た創業者は、消火器で培ったポンプ技術を応用して防除用噴霧器を開発しました。1918年に人力噴霧器を発売して以来、噴霧器は当社の主力製品です。その後は時代と共に動力噴霧器、スプレーヤと発展し、工業・農業用ポンプ、産業用洗浄機なども手がけてきました。創業以来一貫して、ポンプ技術を中核に歩んできた企業です」。

同社は2サイクルエンジンの技術も有している。もともとは他社製エンジンを搭載した草刈機を販売していたが、競争力を高めるために自社開発に取り組み、背負式の動力噴霧器等の製品ラインアップへと研究開発を進めてきた。「現在、国内で2サイクルエンジンを製造しているメーカーは少なく、当社は最後に参入した企業ですが、堅実に市場シェアを維持しています。開発から販売、アフターサービスまで自社で手がける体制を整え、国内の販売網を大切にしてきたことが、その理由だと自負しています」。

1895年製造の消火器。記念すべき初の国産消火器となった。

130年を経ても、たゆまぬ進化

「常に時代の変化に対応してきたことが強みです」という内山氏の言葉通り、同社はモノづくりを進化させ続けている。

2023年発売のハイクリブームスプレーヤ「BSA-2000C」は近年のトピックのひとつだ。2,000Lの薬剤タンクを備える大型機で、全ての部品をゼロから設計し、主要ターゲット地の北海道で試験を繰り返したという。2025年9月末まで実施予定の130周年キャンペーン対象製品でもあり、購入者には同社の温水洗浄機のプレゼントが付く。また、2024年発売の農業用散水ノズル「TeQSHOWER」(テックシャワー)も新機軸の製品だ。同社が誇る「丸山ウルトラファインバブル」(以下、MUFB)の発生機構を内蔵し、作物の根に効果的に水と酸素を届ける。

「ウルトラファインバブルは当社以外も手がける技術ですが、当社のポンプ技術との相性が非常に良く、TeQSHOWERにはこれまでの技術を注ぎ込みました。大学と連携して詳細なデータを取り、生育促進、肥料低減、収量増加の効果を確認しています。MUFBのエントリー製品とする狙いもあり、実際にTeQSHOWERをきっかけに既存のMUFB製品を導入してくださった事例もあります」。MUFBは洗浄にも高い効果を発揮し、業務用洗濯機や空港のトイレ等に多数の同社製品が導入されている。そうした現状に安住することなく、畜産への展開など、さらなる可能性が模索されているという。

ホースに取り付けるだけでMUFB水を生成できるTeQSHOWER。その手軽さも大きな魅力だ。

企業の課題にも盛んに取り組む

同社では、現代の企業に求められる課題への取り組みも盛んだ。2024年4月には、同社IT部門を母体とするM-Innovations株式会社を設立した。「まずは社内のデジタル改革を進めますが、将来的には急進するIT環境に限られたリソースで対処される中小企業様向けの技術支援を手がける計画です。別会社としたのは、柔軟かつ迅速に動けるようにする狙いがあります。こうした取り組みが評価され、2024年10月に当社は経産省のDX認定事業者となりました」。

また、農水省の女性活躍推進企画に参画した「Lプロジェクト」では、軽量化に加えて肩掛けストラップに携帯電話や保冷剤用のポケットを付けた刈払機「かるーの」などの、女性の声を活かした製品を生み出した。「小さな工夫であっても、お客様の視点に立った工夫をいかに突き詰めるかが当社の製品開発です」と内山氏はいう。

さらに同社は「健康経営」を掲げ、社員の健康を会社の健康につなげることにも取り組む。会社から一方的にヘルスケアを指示するのではなく、社員に自発的な取り組みを促すことが特徴だ。取り組み開始以来、社員の声で運動会やウォーキングの会が企画され、コロナ禍で薄れていた交流を取り戻すきっかけにもなったという。

管理職の社員には「ほめ文化活用」としてメンタルケア研修の受講も課している。内山氏が海外の社員と接した時、率直に「もっと褒めてください」と求められたのが始まりだという。「私自身は怒られて育った世代で、カルチャーショックでした」と笑いつつも、内山氏は事業の持続には社内の活性化が必須として、「社内から閉塞感を一掃することが目標です」と力を込める。

  • デジタル技術を活用してビジネスの変革を推進する準備が整っていると国から認定された企業。
製品開発のみならず、サポート、サービスにおいてもお客様の視点に立った工夫を突き詰める。

「丸山のこころ」を100年先にも継いでゆく

同社には、「誠意を持って人と事に當(あた)ろう」の社是と、それを行動指針として具体的に示した「丸山のこころ」がある。社是を単なる題目に留めず、改めて説き起こしている点に誠実さがうかがえる。例えば、製品を長く使ってもらうために点検サービスに力を入れ、安全啓発も行っている。特に果樹の防除作業に欠かせない「ステレオスプレーヤ」乗車中の事故防止を目標とし、安全バー設置を呼び掛けている。また、災害支援にも力を注ぐ文化もあり、被災地への物資供給を積極的に実施してきた。2024年の能登半島震災では石川県の要請に従い被災地入りを控えたが、内山氏は「防災製品を手がける当社が何もできないことに無力さを感じました」と振り返る。その反省を活かし、災害時に役立つ濾過装置搭載の洗浄機を開発された。同社は海外5か国にも拠点を持ち、現在はインド展開に注力しているが、海外で力を付けることは、国内農家を支え続けるためだという。

内山氏は、同社の存在意義をこう語る。「当社は長らく農家様の支え手として歩んできました。縮小する国内市場において、支え手が減ることでさらに担い手も減る悪循環は食い止めなければなりません。期待してくださるお客様のために、次の100年においても『丸山のこころ』を守り、求められる支え手であり続ける。それが当社の使命だと考えています」。

「水流のプロ」が生んだ浴室用シャワーヘッド「habiller」

同社の異色の製品として、2022年発売の浴室用シャワーヘッド「habiller」(アビリア)がある。産業分野の製品を手がけてきた同社にとって初の家庭向け製品となった。
「habillerはTeQSHOWERの前段階として開発したもので、農家様にまずは身近な家庭用品でMUFBを体感していただく狙いがありました」と内山氏。実験的な製品でもあったが好評を得られ、パッケージに社員の意見を反映させるなど、社内でも意欲的な取り組みになったという。MUFBをたっぷりと発生させるhabillerは、洗いながら潤い、温かさが持続することが特長。ポンプ技術を磨き続ける「水流のプロ」が自信を持って送り出した1本だ。

初の家庭向け製品ながら好評を得た「habiller」。自慢のポンプ技術が新たな展開を見せた。

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