アグリプロ株式会社
代表取締役
松蔭 利幸様
- 地域 : 福岡県行橋市
- 作物・作業 : 水稲/麦
アグリプロ株式会社
代表取締役
福岡県の中でも、特に稲作が盛んな行橋市。耕地面積の約90%に当たる1,790haが田耕地で占められている。同市で複合農業を営むアグリプロ株式会社も、稲作を中心に、約47haの広大な田畑を従業員を含む4人で管理されている。
代表の松蔭氏は、先代の跡を継ぐために就農されて7年になる。作業の効率化や負担軽減に貢献するICT技術の活用にはもともと興味をお持ちだったという。昨年からは、スマート農業への第一歩として、リモートセンシングによるほ場の実態調査を活用されはじめた。これまでは目視でしか確認できなかった生育状況がデータとして表れたことで、はじめて気づいたことがあったという松蔭氏。その効果をうかがった。
アグリプロ(株)は、食用米/ 21ha、麦/11ha、飼料作物/8ha、WCS/12ha、飼料用米/8.5ha、高菜/1ha、大豆/1ha、キャベツ/0.5haと、幅広い作物を栽培されている。モットーは、「生産者は一番の消費者であれ」だ。消費者が必要とする作物を必要な量だけ生産し、契約販売のみを行っている。アグリプロの従業員数は2名。少人数で大規模農場を管理しているので、従業員の負担軽減への取り組みに熱心だ。農機や設備への投資のほか、最近ではスマート農業にも関心を寄せておられる。
「新規就農者に経験則で農業を教えるのは非常に難しい。農業もマニュアル化が必要です。いつ、何を、どうすれば良いのか、マニュアルを読めば実践できるように見える化しないと、農業は衰退していく」と松蔭氏。目指すは、スマート農業による省力化と人材育成。その第一歩が、リモートセンシングによるほ場の見える化だ。
リモートセンシングをご利用いただいたのは、昨年と今年の合計2回。食用米のほ場10haだ。松蔭氏は、1回目のほ場調査の結果レポートを見て驚いたという。ひとつのほ場に、生育の良い「赤色」の部分と、生育の悪い「青色」の部分が混在していたからだ。
「肥料をムラなく散布したつもりでも、これほどバラツキがあったのかと思いましたね。リモートセンシングをしなければ気づけなかったでしょう」と、効果を実感されている。バラツキの理由も明確になった。エリアが広大なため、高低差による水の停滞や、土質による違いが生育に影響をおよぼしていたのだ。松蔭氏は、データを元に、肥料の効きが悪かったほ場に無人ヘリで追肥を行ったという。
2回目のリモートセンシングも、食用米のほ場10haに活用された。ブロックローテーションのため、前年とは異なるほ場だが、前回の結果をふまえて改善策を施したという。「前回はブロードキャスタで基肥を入れたのですが、均一に散布したように思っていたのに、軌跡がそのままムラになって生育マップに表れていたんです。そこで今年は、側条施肥に切替えました」。マップのデータは、土壌改良にも役立てておられる。「これまではほ場の全面に堆肥を入れていたんですが、マップを見ると、明らかに基肥のいらない場所もありました」。
現在はマップと照らし合わせ、効率的に施肥を行っているとのことだ。契約販売専門の同社には、安定した収量と品質が求められる。そこにリモートセンシングの技術が大いに役立ったようだ。松蔭氏は、「近いうちに、空撮した画像をリアルタイムで分析し、現場でデータ化できるようになるでしょうね。ドローン自体もリーズナブルになり、農家が自分で購入して撮影できるようになるかもしれない。そうなれば、生産もずっと効率的に回るでしょう」と農の未来を見据えておられる。
今後のビジョンについてうかがうと、「福岡でナンバーワンになることです」と力を込める松蔭氏。露地栽培ではすでに超高糖度キャベツの栽培を成功させ、市場で高い評価を得ているそうだ。いずれはICTを導入した最先端のビニールハウスで水耕栽培を行いたいとも語ってくれた。
グローバルGAPの取得や農福連携も見据え、すでにビジネスの軌道は頭の中に描かれている。農家の勘に頼らず、空撮データの活用で農地を効率的かつ正確に管理し、新人でも安定した品質と収量の確保が可能になる。松蔭氏の目には、そんなひらかれた農の姿がはっきりと映し出されている。
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