個人農家
代表取締役
中川 和俊様・太陽様
- 地域 : 三重県松阪市
- 作物・作業 : 水稲/麦/大豆
個人農家
代表取締役
三重県中部に位置する松阪市。伊勢湾に面し、豊かな自然に恵まれた魚見町では、水稲の生産が盛んだ。同町で個人農業を営む中川和俊氏は、現在、ご子息の太陽氏とお2人で52haの農地を管理されている。地域の農家の高齢化が進むにつれ、この若い担い手に農地管理の依頼が集まり、ほ場は年々増える一方だという。
そんな中川氏は、規模拡大に対応するため、最新の機械設備を導入し、作業の効率化にも注力しておられる。そのひとつが、リモートセンシングである。ゆくゆくは法人化も視野に入れ、さらなる農地拡大を目指すお2人に、導入の経緯やメリットをうかがった。
現在、44歳の中川和俊氏とご子息の太陽氏(18歳)は、魚見町の農業を背負って立つ若き稲作農家である。栽培作物は、食用米(三重23号、コシヒカリ、あきだわら)と飼料用米を合わせて35ha。また、魚見町の農家が集まる機殿下営農組合でオペレーターとして麦と大豆を17haで栽培しておられる。今年4月には防除用のドローンを導入し、ご自身が管理する水田のほか、地元農家からの請負も含めて延べ60~70haの防除をお2人でまかなっているという。
また、5月には新型コンバインYH7115を導入し、規模拡大に向けて本格的に動き出している。昨年からは、ヤンマーとの契約栽培もスタート。その取引きを始めるにあたって、ヤンマーアグリジャパン(株)松阪支店の大木登志朗氏からリモートセンシングによるほ場診断の話を聞き、利用にいたったという。
ドローンでほ場を空撮したそのデータから生育状況のバラツキをマップ化し、結果が報告される。この生育マップを見た和俊氏は、「痩せているほ場はてきめんに色で出ましたね」と感心。昨年は、生育マップ上で青く示された部分、つまり地力の低い部分には、動力散布機による可変施肥を行ったそうだ。さらに、「昨年の診断結果で色が悪かったところには、今年の春作業のときに基肥の量を増やして地力を回復させました」と和俊氏。ほ場の見える化が土壌改良につながっているようだ。
大木氏によると、松阪牛で知られる松阪市では、稲わらによる耕畜連携が盛んだという。和俊氏も、基肥に松阪牛の堆肥を利用して米を生産し、稲わらやもみ殻を松阪牛のエサや敷料として畜産農家に販売。経費節減すると同時に安心安全に配慮した循環型の農業を営んでおられる。
また減農薬への取り組みにも精力的だ。和俊氏が生産する三重県のブランド米「三重23号」は、化学肥料や農薬の使用量を減らし「みえの安心食材認証」を取得することが品質基準として定められている。さらに厳しい品質基準「農産物検査1等米格付、玄米タンパク含有量6.8%」に合格した米は、1等米「結びの神」として認定される。和俊氏が生産した三重23号も、その多くが「結びの神」として県内外のホテルや飲食店、特産の菓子などの材料に使われているそうだ。
ヤンマーとの契約栽培では、加工米のあきだわらと飼料用米を栽培していただいている。去年は2ha、今年は3haと栽培面積が増えつつあり、ヤンマーの販路マッチングによって着実に販路も広がっている。整理整頓・清掃が行き届いた施設に最新農機を所有されている和俊氏と太陽氏。地元農家からの期待を一身に、さらなるほ場拡大と販路開拓へと挑むお2人の姿は、地元の方の目にもたくましく映っていることだろう。
大木氏は、「この辺りも高齢化が進んで、自分の田んぼを管理できなくなった農家が増えています。大型の機械や施設を持っている中川さん親子に最近は田んぼを託したいという依頼が集まっているんですよ」。なんといっても、和俊氏には右腕の太陽氏がいるから将来的にも安心だ。「まだまだ勉強中です」と謙遜される太陽氏だが、ドローンの操作も手慣れたもので、今では和俊氏よりもスムーズに防除をしておられるとか。
「ほ場面積は毎年約10haのペースで増えています。法人化も視野に入れて、規模を拡大していきたいですね」。管理するほ場が増えれば、生育マップで可視化して、データ蓄積もできるリモートセンシングの技術は今後ますます不可欠となるだろう。目指すは100ha。親子の連携プレーで挑戦を続ける。
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