油圧ショベル・ミニショベルの仕組みについて

カテゴリ:建機の基礎知識

油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)はどうやって動いてるの?運転の仕組みから部品・構造までを解説。テコの原理を応用して動く油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー) 。その動きの仕組みから構造、ディーゼルエンジンの特性についてまで、建設機械が動く仕組みを丁寧に解説します!

●油圧ショベル・ミニショベルが動く仕組み

油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)は油圧で動きます。油圧とは、加圧した油を介してより大きなエネルギーの伝達を行なう技術です。
まず最初に、エンジンによって“油圧ポンプ”が回され、圧油(圧力をかけた油)が送り出されます。この圧油は、コントロールバルブ(油の流れる方向を決める装置)によって油圧モーター(走行部・旋回部)や油圧シリンダー(作業機部)へ送り込まれます。油圧モーターや油圧シリンダーは油の方向によって回転や運動の方向が決まるため、運転は「油の流れる方向をコントロールすること」になるのです。
また、“心臓”となる油圧ポンプは構造によってさまざまですが、代表的なものが“ギヤポンプ”。2個の歯車がかみ合ってエンジンによって回転すると、吸込口から歯車に入った油はギヤケース内周に沿って運ばれ、歯車のかみ合いによって吐出口側に押し出されます。
こうした油圧の力をもとにして、油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)は動くのです。

●走行とターンの仕組み

油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)は、走行するのも油圧の力です。コントロールバルブから送り込まれた高圧力の油が油圧モーターを回し、この回転力を駆動輪へとギアを介して伝えます。油圧モーターの構造は油圧ポンプとほぼ同じですが、高圧力の油の力を回転運動に変えることがモーターの特長となります。

●2種類のターン

スピンターン ピポットターン
ターンの特長 左右のクローラーに取り付けられた油圧モーターをそれぞれ逆回転させることで、その場でターンをすること。 左右どちらかのクローラーだけを動かして行うターンのこと。旋回半径はスピンターンより大きくなります。
旋回動作 スピンターンを説明しているイラスト ピポットターンを説明しているイラスト
操向レバー
ブレード前方
ニュートラル位置を示すイラスト ニュートラル位置を示すイラスト

●油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)を支えるスイベルジョイント

上部旋回体の旋回によって油圧の配管がねじれないように用いるもので、下部体の中央部に取り付けます。

●ブーム、アーム、バケットの仕組み

作業装置(ブーム、アーム、バケット)の作動は、油圧シリンダーによるものです。油圧エネルギーを機械的なシリンダーロッドを往復させるエネルギーに変え、強力な力にして仕事をします。油圧シリンダーはパスカルの原理を利用することで、さまざまな現場で活躍できる数千kgもの掘削力を生み出しているのです。

油圧の仕組みと特徴

●油圧とは?

油圧とは、閉じられた空間に油を入れて一方から圧力を加えることで、離れた場所の機器に圧力を伝達し、より大きな力を引き出すことです。 油圧を利用することで、小型の油圧機器でも大きな力を発揮できます。油圧機器には油圧シリンダー、油圧モーター、油圧ポンプなどがあり、これらを組み合わせて建設機械以外にもさまざまな工業機械で利用されています。 また、現代では多くの建設機械が動力の伝達に油圧を利用。油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)ならレバー操作のみでブレードやブーム、アーム、バケットを動かすことができ、力の必要な作業(掘削、積み込み)なども簡単に行うことができます。

●油圧シリンダーとは?

油圧シリンダーは、建設機械に実際に「仕事」をさせるアクチュエーター(エネルギーを機械的な往復運動や回転運動に変換する装置)です。ピストンを押したり引いたりすることで、必要とされる力を発揮します。例えばアームシリンダー部分の油圧シリンダーは、バケットを「引き寄せる力(掘る力)」の方に強い力が出るようにセットしてあります。
バケットの引き寄せる力(掘る力)とは、油圧シリンダーのピストンを押し出す力(A方向の力)を意味します。また、ピストンのA側とB側とでは、ピストンの断面積がB側はロッドの断面積分だけ小さくなり、この断面積差によってA方向の力が強くなります。油圧シリンダーの力は、圧力×シリンダー断面積によって導き出され、より強い力が必要な方向に油圧シリンダーをセットしてあるのです。

油圧ポンプのはたらきと特性

●ピストンポンプ(斜板式)の基本構造

ピストンポンプは建設機械をはじめ、産業車両や農業機械などにも広く使用されているポンプです。駆動源と繋がれたポンプの入力軸が回転し、入力軸とスプラインで結合されたシリンダーブロックが回転します。この時、斜板上を摺動するピストンは斜板の角度により往復運動を実行します。
シリンダーブロックからピストンが突出する際、タンクから油を吸入し、突入する時に油をバルブ・アクチュエーター側に吐出します。また、油を各ピストンに分配する役割を持つバルブプレートにより、吸入ポートと吐出ポートは分けられています。

●可変ポンプ

斜板の傾斜角度αが大きいほどピストン往復のストローク(ポンプ押しのけ容積)が大きく、角度がゼロの時、ピストンは往復運動せずに吐出流量もゼロとなります。
閉回路ポンプの場合は、更に逆方向の角度をつけることにより、入力軸の回転が同じでも吸入と吐出が逆転します。

テコの原理と建設機械

●テコの原理を応用して建設機械は動きます

テコは最も古い機械と言われています。テコには支点・力点・作用点があり、支点を中心にして力点に力を加え、作用点に伝える仕組みです。
テコには「小さな力で大きな力を得る」「少し動かすことで広い範囲の力を得る」という2つの利用方法があり、建設機械の構造や作用に大きく関係しているのです。
油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)のシフトレバーやペダルでは、この「力点から支点の長さ」が「作用点から支点の長さ」より長いタイプが使われています。

●短い労力で広い範囲の仕事をする

また、建設機械の油圧で操作する部分には、「力点から支点の長さ」が短いタイプが主に採用されています。これは、油圧シリンダーの短いストロークでも作用点部分では長い距離の仕事をするためです。
労力(油圧の力)は、作用点の力より大きいことが必要ですが、そこはアクチュエーターの油圧の力で解決します。

●機体の安定や作業能率への応用

「テコの原理」は、作業部分の構造だけではなく、建設機械の安定や作業能率にも関係しています。

例えば、油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)でブーム・アームを長くして掘削する場合は、バケットにかかる力の他に、ブームやアーム自体の重量も余計に大きくかかることになります。

ブーム・アームの長さを一定にセットした場合では、横位置より前向き、さらにそれよりもブレードやアウトリガー(※)を使った方が作業の力はいっそう大きくなります。

  • 建設機械のアウトリガーとは、クレーン車や高所作業車、コンクリートポンプ車などでアームを伸ばしたり物を吊ったりする際に、車体横に張り出して接地させることで車体を安定させる装置です。

キャリアの場合、Aの位置に積み込むよりもBの位置に積む方が、ダンプする時の油圧パワーは少なくて済みます。作業時間は短縮し、燃費も経済的になりますが、Aの位置と比べると初安定性は少し劣ります。

油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)はディーゼルエンジンで動いています

多くの油圧ショベル・ミニショベル(バックホー/ミニバックホー)にディーゼルエンジンが使われています。ディーゼルはガソリンに比べて圧縮比が大きいのが特徴です。
そのため、力が強く粘り強いという利点を持ち、熱効率がよく燃費が経済的で故障が少なく安全です。また頑丈で長持ちという特徴を持ち、ヤンマーのディーゼルエンジンは高い評価を得ています。
ディーゼルエンジンは強い力を長時間続けて発揮しなければならない大型の機械や、ディーゼル機関車、船舶用エンジン、ビル施設の非常用自家発電装置など、幅広く使われています。

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