ガスのカーボンニュートラル化を実現する4つの技術

更新日時:2025.09

ガスのカーボンニュートラル化を実現する4つの技術

世界的に脱炭素の流れが加速する中、都市ガス分野でもカーボンニュートラル化が大きな課題となっています。水素やバイオメタン、カーボンニュートラルLNGなどの新しいエネルギーへ移行すれば、温室効果ガスを削減できます。

しかし実用化に向けてはコストや供給体制の整備といった課題も多く存在します。本記事では、都市ガスのカーボンニュートラル化を支える技術と現状を整理し、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた道筋をわかりやすく解説します。

<目次>

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と削減量を差し引きして、全体としてゼロにする考え方です。

人間の活動で排出される二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス(GHG)は、気候変動の大きな要因とされています。しかしGHG排出量を完全にゼロにすることは難しいため、排出量をできる限り減らしつつ、GHGを森林吸収などで回収することでGHG排出実質ゼロを目指します。

日本政府は2050年までにカーボンニュートラル社会の実現を目指すと宣言し、各産業において脱炭素の取り組みが進行中です。

ガスのカーボンニュートラル化が求められる背景

ガスのカーボンニュートラル化が求められる背景

ガスのカーボンニュートラル化が求められる背景は以下のとおりです。

  • 脱炭素社会に向けた国際的な規制と目標の強化
  • エネルギー安定供給と化石燃料依存からの脱却
  • 企業のESG経営や消費者意識の高まりによる圧力

上記の背景を把握しておくと、より積極的にカーボンニュートラルを進められます。

脱炭素社会に向けた国際的な規制と目標の強化

2015年のパリ協定以降、世界全体で気温上昇を1.5度以内に抑える目標が設定されました。この目標を達成するために、各国はマイルストーンの設定を行うとともに、GHG排出削減に向けた法整備を行っています。

合わせて民間企業への取り組みに対する補助金等支援が行われており、エネルギー分野の技術革新が進むでしょう。

天然ガスは経済活動に欠かせない燃料ですが、利用過程で二酸化炭素を排出します。ガスの脱炭素化が実現すれば、カーボンニュートラル社会の実現に大きく寄与します。

エネルギー安定供給と化石燃料依存からの脱却

日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、安定したエネルギー資源の確保が課題です。とくに天然ガスや石油は輸入比率が高く、国際情勢の変化によって価格が変動しやすいです。

ガスのカーボンニュートラル化は、安定した供給と環境負荷低減の両立が期待できます。再生可能エネルギーを活用したバイオメタン等を組み合わせれば、企業は燃料調達リスクを下げながら持続的に事業を運営可能です。

価格変動に左右されにくい体制を整えることは、長期的な競争力の確保にも直結します。

ESG投資や消費者意識の高まり

環境への取り組みは、企業の存続や成長に直結するテーマになっています。なぜなら近年、投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営を投資判断の基準に加えているからです。消費者も製品やサービスを選ぶ際に、環境配慮を意識する傾向が強まっています。

社会的な意識の変化が、ガス事業者に環境に配慮したガスの供給を促しています。

ガスのカーボンニュートラル化を実現する技術とは

ガスのカーボンニュートラル化技術

ガスのカーボンニュートラル化を実現する技術は主に以下があげられます。

  • メタネーション技術
  • バイオメタン
  • 水素
  • カーボンニュートラルLNG

以下で解説します。

メタネーション技術

メタネーションは、水素と二酸化炭素を反応させてメタンを合成する技術です。生成されたメタンは都市ガスの主成分のため、既存のガス管や設備を使えます。

再生可能エネルギーで生み出した水素を利用すれば、実質的に二酸化炭素の排出を増やさないクリーンエネルギーが実現します。大規模な設備投資とコストが課題ですが、エネルギー供給の安定性を保ちながら脱炭素を進められる方法として注目されています。

バイオメタン

バイオメタンは、生ごみや家畜ふん尿などの有機物を発酵させて得られるガスを精製したものです。都市ガスと同じように利用でき、再生可能な資源から生まれるため、カーボンニュートラルにつながる燃料です。

廃棄物の再利用にもつながるため、循環型社会の実現にも貢献可能です。導入には収集体制や設備整備が必要ですが、地域単位でのエネルギー自立に役立ちます。さらに効率的に活用するには、発電と熱利用を同時に行える「バイオガスコージェネ」が有効です。

弊社が提供する「バイオガスコージェネレーションシステム」は、廃棄物由来のエネルギーを最大限に引き出し、安定した供給と環境負荷低減を両立させます。

水素

水素は燃焼しても二酸化炭素を排出しないため、次世代エネルギーとして期待されています。
さらに再生可能エネルギーで生み出した水素は「グリーン水素」と呼ばれ、完全にカーボンニュートラルなエネルギーとなります。製造コストの高さや、輸送や貯蔵の難しさが課題ですが、技術開発とインフラ整備が進めば、ガスの脱炭素化が進むでしょう。

ヤンマーでは水素と空気中の酸素から発電を行う「水素燃料電池発電システム」を提供しています。高効率かつ安定した電力供給で企業や地域の脱炭素経営を支えます。

カーボンニュートラルLNG

カーボンニュートラルLNGは、液化天然ガスの生産や輸送・燃焼の際に発生する温室効果ガスを森林保全などによる吸収や排出削減で相殺した燃料です。実際には二酸化炭素を排出しますが、カーボンクレジットを活用することで全体として排出ゼロを実現します。

既存のインフラを変えずに導入できる利点があり、国際的な取引も拡大中です。ガス事業者にとっては現実的な移行手段として位置づけられています。

その他

ガスのカーボンニュートラル化には、二酸化炭素を回収して地中に貯留するCCSや、回収した二酸化炭素を再利用するCCUといった技術もあります。

これらは直接排出を抑える技術ではありませんが、ガス利用により排出したCO2を回収することでGHG削減が可能です。技術を組み合わせることで、安定した供給と環境負荷の低減の両立が期待できます。

ガスのカーボンニュートラル化の現状と課題

ガスのカーボンニュートラル化の現状と課題には以下があげられます。

  • 技術の確立と供給価格
  • カーボンクレジットの信頼性、法整備
  • GHG排出量、削減量の計測
  • 供給インフラの整備

上記の課題を以下で詳しく解説します。

技術の確立と供給価格

メタネーションや水素の普及が期待されていますが、現段階ではコストが高く、生産・供給インフラが十分に整っていません。

再生可能エネルギーは、現段階では発電コストや設備投資が大きい場合が多く供給価格に影響します。

ガス管網など既存のインフラをどう活用するかも重要な課題です。

社会全体で利用を広げるためには、エネルギー製造の効率化と同時に、価格を引き下げる工夫が求められます。

カーボンクレジットの信頼性、法整備

カーボンニュートラルLNGや排出削減事業では、カーボンクレジットが活用されています。カーボンクレジットとは、森林保全や再エネ導入による削減効果を取引できる仕組みです。

しかし出来たばかりの制度なので、クレジットの算定基準や透明性が十分であるか判断がつかない状況です。さらに、国際的な基準と国内制度の整合性を取ることも課題の一つです。

GHG排出量、削減量の計測

温室効果ガス(GHG)の削減を把握するには、排出量と削減量の正確な計測・検証が求められます。国際的なルールでは、ライフサイクル全体での排出量を測る手法が重視されており、燃料製造から利用、廃棄までを含めた評価が必要です。

精度の高い測定技術と共通の基準を導入することで、国内外での信頼を確保できます。

まとめ

カーボンニュートラル社会の実現に向け、都市ガスの役割は大きく変わりつつあります。メタネーションやバイオメタン、水素、LNGなど多様な技術が注目され、いずれも安定供給と脱炭素の両立につながります。

今後、法対応や社会の流れによって、省エネ・脱炭素への要求はより一層高まるでしょう。
ヤンマーでは、「コージェネレーションシステム」や「脱炭素支援サービス」などお客様のお困りごとを解決する製品・サービスを取り揃えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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