カーボンニュートラルScope(スコープ)1・2・3【中小企業も無関係ではない】

更新日時:2025.12

カーボンニュートラルScope(スコープ)1・2・3【中小企業も無関係ではない】

カーボンニュートラルに世界的な関心が高まる中、ニュース記事などで「スコープ1・2・3」という言葉を目にしたことはありませんでしょうか?
脱炭素対策の検討段階において、専門用語が多くて意味を正確に把握できないことから、対策が進まない、効果的な取り組みが分からず検討が進まないといったケースがあります。
「スコープ」は脱炭素の取り組みを進める際に、基本的かつ重要な考え方です。
今後は「スコープ3」によって、中小企業においても、より一層カーボンニュートラルへの取り組みが求められるようになります。
そこで本記事では、スコープの基礎知識から実務対応のポイントまでを整理し、それぞれに合った取り組み方を考えるヒントをご提供します。

<目次>

カーボンニュートラルのScope(スコープ)1・2・3とは

スコープとは、温室効果ガス(GHG)排出量の発生源に応じて分類する国際的な基準であり、GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)に基づいて定められています。
GHGプロトコルは、世界資源研究所(WRI)と世界経済人会議(WBCSD)が共同で策定したもので、現在世界中の企業や自治体がGHG排出量の算定・報告で用いていられている枠組みです。
大きく3つに分かれており、それぞれ企業活動のどの段階で排出されたかが基準となります。

スコープ 排出の範囲 管理しやすさ 実務での取り組み例
スコープ1 自社施設や車両など、
直接排出されるGHG
比較的容易 ボイラーの省エネ型更新、
アイドリング削減など
スコープ2 購入した電力・
熱の使用に伴う間接排出
中程度 再エネ電力への切り替え、
電力契約の見直し
スコープ3 サプライチェーン全体に関わる間接排出 困難 取引先との連携、輸送手段の工夫、
廃棄物削減など

Scope(スコープ)1:自社の直接排出でカーボンニュートラル達成

自社のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けた取り組みの出発点が、「スコープ1」と呼ばれる排出区分です。スコープ1は、自社が所有・管理する施設や設備から直接排出される温室効果ガス(GHG)を対象としています。
比較的把握しやすく、かつ即効性のある対策が取れる範囲といえるでしょう。

以下で、スコープ1の定義や排出量の算定方法、削減に向けた取り組み、そして企業が直面しやすい課題と対策を解説します。

スコープ1に含まれる排出とは

スコープ1では、自社の活動によって直接排出される温室効果ガスが対象となります。

排出源の例 内容の概要
ボイラーや発電機の燃焼 ガスや重油を使用する設備からの燃焼排出
社用車・フォークリフトなど 車両の走行によるガソリンや軽油の燃焼排出
冷媒ガスの漏洩 空調機器や冷蔵庫からのフロン類の排出

上記は「自社の管理下にある活動」に起因するため、比較的コントロールが容易です。

排出量の算定方法と基本の考え方

排出量を算定するためには、「活動量 × 排出係数」の公式を用います。

  • 活動量:燃料や冷媒などの使用量
  • 排出係数:使用した物質のGHG排出量を示す数値

たとえば、軽油を1,000リットル使用した場合、環境省が定める排出係数(2.58 kg-CO2/L)をかけて、排出量(2,580 kg-CO2)を算出できます。
算定にあたっては、環境省が公開する「温室効果ガス算定・報告・公表制度」の資料が活用可能です。
初心者向けのExcelツールも整備されており、初めての方でも扱いやすくなっています。

削減に向けた取り組み事例と工夫

排出量の算定ができたら、次は「どのように減らすか」を考える段階に進みます。
以下のような対策が挙げられます。

  • 古いボイラーを省エネ型に更新
  • 社用車のアイドリングストップを徹底
  • 空調温度の適正管理や照明のLED化
  • エネルギー使用量の「見える化」

たとえば、ある企業では、毎月の燃料使用量をグラフで「見える化」することで、部署ごとの削減目標を設定し、社員の省エネ意識が高まった事例があります。

企業にとっての課題と対応のヒント

「やるべきことは分かっているが、リソースや知識が足りない」という企業様も多いのではないでしょうか。
そんな時頼りになるのが、各自治体や国が提供している支援制度です。
たとえば、「脱炭素経営の推進に向けた補助金」や、「GHG算定アドバイザーの無料派遣制度」などが活用できます。
また、私たちヤンマーもメーカーの知見を活かし、お客様の脱炭素をサポートしております。
ぜひお気軽にお問合せ下さい。

Scope(スコープ)2:使用エネルギーでもカーボンニュートラル達成

電気は買ってるから、自社で温室効果ガスを排出していないと考える企業様もいるかもしれません。しかし温室効果ガス(GHG)を排出して作られたエネルギーを使用すると、「スコープ2」として企業の責任範囲に含まれます。
以下でスコープ2の定義や、算定方法、省エネ・再エネを活用した対応策を解説します。

スコープ2とは?電気を“使う側”にも責任がある

スコープ2は、電力会社等がエネルギー製造の際にが排出した温室効果ガスを、「使う」側の排出としてカウントする考え方です。
電力使用に伴う排出は、製造業をはじめ多くの業種でGHG排出全体の2〜4割を占めることもあり、スコープ2への対応は脱炭素経営の中でも大きな鍵となります。

どれくらい排出している?計算方法を解説

スコープ2の排出量は、次の計算式でおおよそ把握できます。

使用電力量(kWh) × 排出係数(t-CO2/kWh)= GHG排出量(t-CO2

ここで使う「排出係数」は、電力の供給元や契約の種類によって異なります。
たとえば、再生可能エネルギーの比率が高い電力会社と契約していれば、同じ電力量でも排出係数が低くなり、GHG排出量が少なくて済みます。

具体例:
年間の電力使用が12,000kWhで、排出係数が0.00045t-CO2/kWhの場合
12,000 × 0.00045 = 5.4t-CO2

排出係数は電力会社の開示資料や、環境省の算定支援サイトから確認可能です。
手元に電気料金の明細があれば、おおよその排出量を算出できます。

削減のカギは「使い方」と「選び方」

スコープ2の排出量削減には、大きく次の2つの方向性があります。

  1. 使う電力を減らす(省エネ)
  2. 排出の少ない電力に切り替える(再エネ)

どちらも企業にとって導入しやすい工夫が存在します。

  • 照明をLEDに変更し、照度センサーを導入
  • 空調設備を高効率機器へ更新
  • 業務時間外の待機電力を減らすための電源タイマー
  • 再エネ由来の電力(グリーン電力)への契約切り替え
  • 太陽光発電パネルを設置し、PPAモデルで初期投資ゼロで導入

たとえばPPA(電力購入契約)モデルなら、第三者が設置費用を負担する代わりに、一定期間電力を購入する形で導入できるため、資金面のハードルを下げられます。
PPA(電力購入契約)について詳しくは下記をご参照ください。

企業が抱える現実的な課題とは

再エネ電力に興味はあるけれど、導入に踏み切れない企業様の多くは、以下のような課題を抱えております。

  • 切り替え先の電力会社選定が分からない
  • コストが増えるのでは?という懸念
  • 社内の理解・協力が得られにくい

こうした課題に対応するため、国や自治体では再エネ導入の初期費用を支援する補助制度や、専門家の無料相談窓口を設けております。
また、非化石証書付きプランを活用すれば、契約先を変えずに再エネ対応を進められるケースもあります。

スコープ2は、企業の意思と選択によって大きく変えられます。
使用量の把握と契約内容の見直しから始めて、脱炭素を進めていきましょう。

Scope(スコープ)3:サプライチェーンを含めたカーボンニュートラル達成

カーボンニュートラル社会を実現するためには、自社以外で発生する温室効果ガスの排出にも目を向ける必要があります。
スコープ3は、仕入れた原材料の製造から、製品の使用・廃棄に至るまで、企業活動に関係するすべての“間接排出”を対象とします。

スコープ3の概要と中小企業への影響

スコープ3は、自社内だけでなく、サプライチェーン(仕入から消費まで)が対象です。
たとえば以下が該当します。

  • 資材の製造段階で発生したCO2
  • 商品を運ぶ際の物流による排出
  • お客様が製品を使用・廃棄する際の影響

他社の問題ではないかと思う方もいるかもしれません。
しかし、自社のサプライチェーンが排出するGHGの把握・報告が、企業の“信頼性”につながります。

各業界の大企業が、カーボンニュートラルへの取り組みをPRする中で、スコープ3を進めていくことに言及しています。
近い将来、大手がサプライチェーン全体の排出削減を進めるため、子会社や取引先である中小企業へデータの提供を求めたり、GHG削減に取り組むよう要請が高まるでしょう。
スコープ3を通して、カーボンニュートラルは事業規模に関わらず必須となりつつあります。

すべてを正確に把握する必要はない。大切なのは“取り組み姿勢”

スコープ3の難しさは、製造・輸送・使用・廃棄などその対象範囲の広さにあります。
ですが、排出しているGHGを全て正確に把握する必要はありません。
たとえば、次のようなアプローチが考えられます。

  • 調達先に排出係数を聞く
  • 発送業者から輸送距離などのデータをもらう
  • 使用済み製品の回収データを使って排出量を推定する

要するに、“分かるところから始める”という姿勢が、スコープ3対応の第一歩です。
その後、業界平均値やガイドラインを活用して、段階的に精度を上げることが望ましいでしょう。

「対応していない」ことのリスクが広がっている

もし、スコープ3への対応がまったく進んでいないと、どのような影響が出るでしょうか?

  • 大手との新規取引の打診があっても、スコープ3の情報提供ができないため断られる
  • ESG投資を受けようとしても、サステナビリティ評価で除外されてしまう
  • 地方自治体の補助金申請で「脱炭素の取り組みが不十分」とされる

上記のようなリスクは、既に現実のものとなり始めています。
特に製造業や物流に関わる企業では、スコープ3対応が避けて通れない課題となっています。

「まずは影響の大きいところから」――中小企業の現実的アクション

「うちにとって排出量が多いところはどこか?」を見極めて、着手するのが最も現実的といえるでしょう。
たとえば下記が考えられます。

  • 部品の調達比率が高い → サプライヤーとの対話から始める
  • 輸送距離が長い → 配送業者との連携強化
  • 製品の使用期間が長い → 製品ライフサイクルの見直し

スコープ3は、“やらされるもの”ではなく、“自社の信頼や継続的な成長につながるアクション”として捉えることが重要です。

これからの時代は、小さな企業でも「できるところからカーボンニュートラル対策をやっている」という姿勢が、ビジネスを支える力になっていくでしょう。

まとめ

スコープ1・2・3という3つの視点から自社の温室効果ガスを整理することは、大企業でなくても必ず意味のあるアクションにつながります。
まずは、「自社で何が出来るか」を把握し、省エネや再エネ導入、取引先との連携など、できる範囲から取り組んでいくことが重要です。

ヤンマーでは、脱炭素のご相談を受け付けております。
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