産業用機械電動化の開発ストーリー

建設機械や農業機械など、産業用機械では電動化の波が訪れていますが、開発の最前線ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。本記事では、ヤンマーパワーテクノロジーにおいて電動作業機のシステム開発に携わっている、電動化推進部の岡本雄樹氏、河野龍平氏に開発の現状や将来の展望を伺いました。

脱炭素時代に応える、作業機の電動化への挑戦

岡本:私たちは、電動作業機に向けたパワートレインの開発を一手に請け負う、電動化推進部の開発者として業務を行っています。昨今は気候変動への対策として、カーボンニュートラルへの取り組みが推進されています。そのため、これまで内燃機関を扱ってきた当社としても、世界的な情勢に合わせたクリーンなパワーソースを提供することを重要視しており、その一つとして電動化の開発を行っています。

もちろんクリーンエネルギーには電動化以外にも水素や合成燃料など様々な種類があるのですが、中でも電動化は性能的にも小型作業機に相性が良く、ヤンマーがこれまで培ってきた様々なアプリケーション対応の経験も十分に活かされるため、特に重視すべき技術として開発に注力しています。

当社が電動化に舵を切ったのは、2020年に電動化推進室が立ち上がったところからとなります。その後私たちを含め人員が増えていき、ここ1~2年でより具体的な検討が進むようになりました。直近では、お客様にサンプルを供給し、実機に搭載して評価をさせていただく所まで進んでおり、数年以内に量産を控えているような状況になっております。

若手主導でのスピード感のある電動化開発

岡本:現在、電動化推進部はこれまでエンジン開発に携わっていた各部署の技術者が中核となってチームを形成しています。また、ヤンマー中央研究所で長年電動の研究を行ってきたスペシャリストも在籍しており、開発メンバー全体が電動に関する知識をキャッチアップしつつ、協力して開発に臨んでいます。

私たちのチームの強みは、若手の開発メンバーが中心となって構成されていることです。平均年齢は30歳程度とフレッシュなメンバーが揃っており、権限も他部署と比べて若いメンバーに与えられているので、スピード感のある開発が実現できています。また、企画、設計、制御から評価や調達、アフターサービスまで、専門分野の異なる多様な人材が揃っていることも強みです。ソリューション全体を網羅できる人材が若手から熟練者まで揃っているので、それぞれの強みを活かすことで課題にも迅速に対応できています。

カスタマイズ可能な標準化システム制御による、柔軟性と効率性の両立

河野:私たちはお客様が開発期間の短縮、コスト削減を実現できるようなソリューションを日々開発しています。特にシステム制御において、標準化できる範囲と顧客ごとにカスタマイズする範囲を分ける取り組みが、設計開発の効率化と顧客の個別仕様を同時に叶えられる弊社独自のものとなっています。

カスタマイズ性を持った標準化は、電動業界の変化の速さに対応するといった目的があります。電動業界では新製品の開発スピードが速く、古い製品はすぐに生産中止になる傾向があります。このため、採用部品が生産中止になると、その都度開発をやり直さなければなりません。

また、特定のコンポーネントで構成されたパワートレインのために制御を専用設計してしまうと、別のモーターを使いたいといった要望に対処できず、開発を最初から行わなければならなくなるといった問題も発生します。

岡本:そこで、私たちはモーターやインバータなど、市場にある部品を評価して利用できる部品をライブラリー化することにより、お客様の要望などに合わせて複数の部品を選定できる状況を作っています。

このカスタマイズ性を持った標準化により、部品の選定における検討や評価を行う手間を大きく減らすことができます。その他の取り組みと合わせて、フルスクラッチ開発よりも工数を4割程度減らすことを目標として、体制の構築を進めています。

なお、標準化とカスタマイズ性を持たせる部分の切り分けについては、例えばモーターの回転数制御など、多様な作業機の中でも不変の部分を切り出して標準化を行います。一方で、お客様ごと、あるいは作業機ごとで変えたい機能についてはカスタマイズ性を持たせるということで対応しています。

エンジンから電動へ。ノウハウの橋渡しによる最適な「乗り味」

岡本:もう一つ、初期段階での要件定義において手戻りの少ない開発の進め方ができるのも、私たちがお客様にメリットを提供できる点です。例えば、産業用機械ではエンジンのトルクの上がり方や回転の追従性によって変わる「乗り味」も重要なポイントとなっています。この乗り味は作業機メーカーごとに異なるので、私たちが逐一マッチングを行って最適な特性が出るようにしています。このマッチングはモーターでも必要になるので、どのような特性にすればお客様に最適なものが作れるか、私たちが長年培ってきたノウハウが強みになると思っています。

また、モーターは、バッテリー残量や温度条件などの違いによって出力できるトルクカーブが大きく変わるなど、エンジンとは異なる点がいくつかあります。このような違いは初めて電動市場に参入するOEMメーカー様が気づきにくい点ですが、私たちが事前に情報をお伝えすることで、余計な手戻りを減らすことができます。

このように、当社では長年のノウハウや電動化に関する知識を持っているので、お客様の欲しい情報を先回りして提供し、お客様の要求を尊重した最適なスペックを逆提案することで、開発スピードの向上に貢献できると考えています。

OEMメーカーと伴走した開発ストーリー

河野:初めて電動化への取り組みを始めたOEMメーカー様に、電動パワートレインを提供させて頂いた例を紹介します。

要求のすり合わせにかなりの時間がかかったのですが、お客様も電動市場の状況が分かっていなかったこともあり、要求仕様が固まっていなかったことが要因です。お客様の経験の蓄積が少ないことから決めきれない要求について、我々が伴走する形で情報をお渡しし、提案を行うことで最終的に仕様にまとめていくのに時間を要しました。

電動化部品の量産維持に関しては、当社は標準化による供給期間の延長や、生産中止時に向けたバックアップサプライヤーの確保など、サプライヤーのトラブルに対する一元的な対応を提供しています。これにより、OEMメーカーは一度量産したものを再設計する必要がなくなり、再評価も最小限に抑えられます。さらに、当社内でのフィールドトラブルの横展開を通じて、品質向上のメリットも享受できます。

例えば、お客様は当初カタログスペック値を大きくしたいという要求がありましたが、バッテリーサイズやコストなどに様々な背反がある状態でした。そこで私たちはカタログ値を最大化したA案と、バッテリーサイズや稼働時間などを勘案した場合に最もバランスの良いB案を提案し、逆提案を行う形で情報を提供しました。

その後もお客様からのフィードバックを頂きながら、少しずつ仕様を固めていき、最後はお互いで合意を取ることができました。このように企画段階で時間をかけたことにより、開発では大きな手戻りも起きることがなく、順調に開発が行えたと思います。

創業精神を受け継ぎ、エネルギーマネジメントを進化させたい

岡本:当社の電動化でキーとなるのは、市場にある電動コンポーネントをうまく使って、いかにお客様にフィットさせるかという技術になると考えています。ヤンマーには「燃料報国」という、燃料でいかに国を支えるか、いかに少ないエネルギーで仕事をするかを重視する創業者の精神を示す言葉があります。この精神は電動化技術でも変わらず重要なので、バッテリーに蓄えられた限りあるエネルギーを少しでも有効活用するため、エネルギーのマネジメント技術を他社の追随を許さない技術として構築できるように日々技術開発を進めています。

直近では、市場への迅速な製品投入を重視しているため、標準化に力を入れています。今後、市場の拡大に伴い、システム全体のマネジメント技術の開発にも注力し、さらにもう一歩上の技術を提供していきたいと思います。

岡本 雄樹OKAMOTO Yuki

ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
電動化推進部

河野 龍平KAWANO Ryuhei

ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
電動化推進部

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