お客様事例紹介

山根海運株式会社様〈6EY22AW〉

船名: 第八越山丸

・船主: 山根海運株式会社
・建造造船所: 本瓦造船株式会社
・トン数: 497G/T
・船種: 内航ケミカル船
・搭載機関: 6EY22AW×2基
・定格出力: 735KW
・回転数: 800min-1
・竣工: 2019年5月

制度改正による難問をクリア! ケミカル船の未来を切り拓く1番船 中速主機関6EY22AW&トップサイドタンク 不可能を可能にした、2つの新発想

慣習を打ち破る社長の英断 期待を上回る結果に

1971年の設立以来、内航および近海区域における液状石油化学製品の海上輸送業を営んできた山根海運株式会社。内航船9隻、外航船15隻を運航する在京オペレーターである。所有船舶の自社船比率を2~3割に抑える同業者が多い中、同社ではほとんどを自社で保有。いついかなる時も取引先の期待に応えたいという責任感の表われであり、それが数十年単位の長期契約に結びついているのだ。そんな同社が、思いがけない事態に直面する。海運業にとって大きな転換ポイントであるILO(国際労働機関)海上労働条約の批准に伴う制度改正が施行され、これまでの船型を大きく見直す必要に迫られたのだ。
「船員法が改正され、乗組員の待遇改善が要求されました。以前から気を配ってきた当社にはほとんど問題はなかったのですが、ひとつだけ困ったことが…。それは船内の居住空間の拡張です」と話すのは、 新井努代表取締役社長だ。
限られた船内空間において、何処かの容積が増えれば、別の何処かに皺寄せが来るのは当然だ。従来から無駄を省いた設計を徹底しており、タンクの容量を減らすわけにもいかない。第十八山菱丸 (2018年3月竣工)の建造計画にあたり頭を悩ませていた。
同社では設立以来、特定メーカーの低速主機関を採用し続けており、新造船においても慣習に倣うはずだった。安全を最優先に位置付ける主機関において、実績で選ぶのは当然と言える。そんな折、 ヤンマーから中速主機関の提案があった。船全体の仕上がりから逆算し、機関配置や船速など協議を重ね、中速主機関の採用を本格的に検討。「これなら改正法を順守しながら従来のタンク容積を確保できる。」と考えた新井社長は、勇気をもって低速主機関から中速主機関の転換へと舵を切る。その結果は、期待を遥かに上回ったという。
「機関がダウンサイジングしたため、機関室内のスペース確保が可能となり、それに伴い、安全性、作業効率が向上。トラブルも減少しました。初めて触れる中速主機関に不安を感じていた機関長も、ヤンマーの担当者から親身に説明を受け、直接電話できる関係性になってからはすっかり気に入った様子。次の船もぜひ、このエンジンを採用しようと決めたのです。」

山根海運株式会社 代表取締役社長 新井 努氏(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)
山根海運株式会社 代表取締役社長 新井 努氏(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)

第八越山丸は、基準値より20%以上のCO2 排出削減率を達成したことが国土交通 省から評価。内航船省エネルギー格付制度において★5つを獲得している。
第八越山丸は、基準値より20%以上のCO2 排出削減率を達成したことが国土交通 省から評価。内航船省エネルギー格付制度において★5つを獲得している。

復原性を高めるトップサイドタンク

第十八山菱丸における成果を見る限り、その次に建造を計画する第八越山丸においても、中速主機関の採用を検討する価値は大いにある。しかし、先代(第七越山丸)の積載容量を維持しながら改正法を順守するには、復原性の向上という別の問題をクリアする必要があった。
当時を振り返って苦笑いを浮かべるのは、船舶部の長谷部文彦部長である。 「問い合わせた造船所の答えは、どこも『難しい』。そんななか、本瓦造船株式会社からは前向きな答えをいただきました。」
内航船を主力とする本瓦造船株式会社は、新発想のタンク構造(後に特許を申請・ 取得)によって、この難題を解消できるという。復原性に悪影響をもたらす、タンク内の液体表面に目をつけたのだ。
ケミカル船は、貨物である液体の表面積が広いほどそれ自体の揺れも大きく、復原性は低下する。逆に言えば、表面積が小さいほど揺れを抑え、復原性が高まるのだ。そこで本瓦造船が生み出したのが、タンク上部にトップサイドタンクを設ける方式である。タンクは三角オニギリのような形状になり、当然のごとく液体の表面積は狭く、揺れは小さくなる。この方式は、以前からばら積み運搬船において、貨物の偏りを防ぐために採用されてきた。ケミカル船へのトップサイドタンクの利用は単純な応用に思えるが、業界の既成概念から見ればコロンブスの卵的な発想といえよう。本瓦造船にとっても、第八越山丸が1番船であるこ とは言うまでもない。
トップサイドタンクには、思いがけない効果もあった。従来のケミカル船においては、航海中に揺れた液体がタンクの内壁を激しく叩き、亀裂を生じさせることもある。しかし、揺れを小さくできることで、そのダメージも減らすことが可能だ。しかも通常は甲板上に敷かれるタンクの補強材をトップサイドタンク内に収めたため、甲板はフラットになり乗組員の作業性と安全性が向上した。
「第八越山丸は、中速主機関に逆転減速機を介して大口径プロペラにしました。その結果、船の推進効率が向上し、従来の低速主機関と比べ燃費も改善できました。また、乗組員からは『静かで揺れも少なく、 ぐっすりと眠れるようになった』と聞いており、タンク容量も確保した良い船に仕上がりました。」
山根海運では、2021年1月竣工に向けて新造船を建造中。3隻連続でのヤンマー中速主機関採用であり、同船には、最新システムである二段過給システムを搭載予定。内航海運を支える同社の更なる進化への意欲が伺える。

山根海運株式会社 船舶部 部長 長谷部 文彦氏(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)
山根海運株式会社 船舶部 部長 長谷部 文彦氏(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)

甲板の大部分をフラットにできることも大きな特長。タンクの補強材をトップサイドタンクに収納できるためだ。
甲板の大部分をフラットにできることも大きな特長。タンクの補強材をトップサイドタンクに収納できるためだ。

内航ケミカル船「第八越山丸」に設けられたトップサイドタンク。 右上の傾斜が示す通り、概ね三角形の形状をしている
内航ケミカル船「第八越山丸」に設けられたトップサイドタンク。 右上の傾斜が示す通り、概ね三角形の形状をしている

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