お客様事例紹介

国際ケーブル・シップ株式会社様〈8EY26LWS、6EY18ALWS〉

船名: KDDIケーブルインフィニティ

・船主: 国際ケーブル・シップ株式会社
・建造造船所: コロンボ造船所(スリランカ)
・トン数: 9,766G/T
・船種: 海底ケーブル敷設・修理船
・搭載機関:
主発電機関: 8EY26LWS×4基
停泊用発電機関: 6EY18ALWS×1基
・発電機容量:
8EY26LWS: 2,300kWe
6EY18ALWS: 750kWe
・回転数:
8EY26LWS: 720min-1
6EY18ALWS: 900min-1
・竣工: 2019年6月

ネット社会の隠れた生命線を繋ぐ 高出力エンジン8EY26LWSを搭載 日本初の電力にも対応する海底ケーブル敷設・修理船「KDDIケーブルインフィニティ」

高速大容量の情報化社会を支えるKDDIのグループ企業

現代生活に欠かすことのできないインターネット通信。その接続にはワイヤレスが常識となっており、多くの場合、通信と言えば無線を連想する。しかし実際には、海外とのインターネット通信のほとんどが海底ケーブルを使用しており、その割合は99%にも上るというから驚きだ。「テレビの生中継で、海外からの音声が遅れる場面を見たことがあるでしょう。それは地表から発信された音声情報が、遥か上空の通信衛星まで行って戻ってくるからです。わざわざ遠回りしているんです。ところが海底ケーブルを使えば、ほぼ一直線での送信が可能。しかも送信できる情報量にも圧倒的な優位性があります。5G通信をはじめ高速大容量の情報化社会のインフラとして、海底ケーブルの需要は高まるばかりです。」ケーブル敷設・修理船の高精度模型を手に朗らかに話すのは国際ケーブル・ シップ株式会社、総務企画部の佐藤茂之副部長だ。
日本における国際通信ケーブルの建設と保守の国産化を担う企業として、1996年3月に産声を上げた同社。KDDIのグループ企業であり、2隻のケーブル敷設・ 修理船を保有している。海底ケーブルの敷設工事と保守を主事業としながら、地震・津波観測ケーブルの敷設や海浜部土木工事の設計・施工などにも取り組んでいる。「海底ケーブルの敷設や修理工事を陸上から大洋まで一貫して、当社のみで行えるのが最大の強みです。種別が異なるケーブルを接続する資格を有する接続技術者、海底ケーブルの状況調査から障害点探査、掘り出し・切断・埋設を行う水中ロボットの運用者などを抱え、24時間365日体制で不測の事態にも備えており、国内はもちろん、大洋をまたぐ国際間長距離まで幅広く対応しています。」

国際ケーブル・シップ株式会社 総務企画部 副部長 佐藤 茂之氏  建造時: 技術部 次⾧ チームリーダー(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)
国際ケーブル・シップ株式会社 総務企画部 副部長 佐藤 茂之氏 建造時: 技術部 次⾧ チームリーダー(文中・写真の所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。)

模型を見ると、船体中央の船橋から船底の スラスタまで一目瞭然
模型を見ると、船体中央の船橋から船底の スラスタまで一目瞭然

船橋4カ所で操船が可能 耐候性の向上で作業効率をアップ

同社にとって4隻目となるケーブル敷設・修理船が“KDDIケーブルインフィニティ”だ。2019年に竣工した、日本初の電力ケーブル工事にも対応する自航式船舶である。海底ケーブル積載用タンクを2基装備し、その搭載重量は4,000トン。深海用細径ケーブルなら5,000キロメートルの搭載が可能だ。この長さは、太平洋横断の約半分に相当する。操舵室 (船橋)は360度ガラス張りで視界を確保し、船体中央に配備することで船首や船尾の作業状況を把握しながら操船できる。
海底ケーブルの敷設やジョイント作業では、潮流による影響を考慮したシミュレーション技術を用いて船体の位置を調整する必要がある。そこで同船では、自動定点進路保持装置(DPS)を装備し、出力1,060kW のトンネルスラスタを2基、出力820kWの昇降式スラスタ1基を船首側に、出力2,500kWの推進器(アジマススラスタ)2基を船尾に搭載することで、従来のケーブル船と比べ、耐候性を格段に向上させた。これにより待機率を低減し、短期間での電力ケーブルの敷設工事を可能としている。また、航行時、工事時、接岸時など状況に応じた操船位置がとれるように、船橋の船首と船尾、両サイドの4カ所で操船が可能である。
機関部にはヤンマー製発電機関8EY26LWSを4基、停泊用発電機関として6EY18ALWS1基を搭載。長期間のメンテナンス支援体制や納入実績に裏付けられた製品の信頼性、母港とする北九州との地理的な優位性を考慮しての採用となった。いずれの機関も選択式触媒還元脱硝システム(SCRシステム)を搭載し、IMOの三次規制に対応していることから、世界中の海で航行が可能だ。

KDDIケーブルインフィニティ機関室。 ヤンマー8EY26LWSを4基、6EY18ALWSを1基搭載。 いずれの機関も選択式触媒還元装置(SCR)システムを搭載している
KDDIケーブルインフィニティ機関室。 ヤンマー8EY26LWSを4基、6EY18ALWSを1基搭載。 いずれの機関も選択式触媒還元装置(SCR)システムを搭載している

船尾シーブからのケーブル繰り出し。日本海溝の最深部(水深8,020m)にも埋設の実績がある
船尾シーブからのケーブル繰り出し。日本海溝の最深部(水深8,020m)にも埋設の実績がある

スリランカの造船所で建造 トラブルに負けず無事に就航

建造造船所は、尾道造船が資本参加するコロンボ造船所(スリランカ)。2008年以降、20隻のオフショア船建造の実績があり、品質の高さが評価されたという。建造工程を守るために進捗の見える化を行い、関係者間で認識を共有。工程遅れを防止するため、週一でリカバリー策を協議するなどの工夫で、建造計画は順調に推移していた。いよいよ最終試験に差しかかった時、予期せぬ事態に見舞われる。スリランカ連続爆破テロ事件だ。機器の調整やコミッショニング試験はストップし、当時、本船の建造プロジェクトチームリーダーとして現地でプロジェクトを推進していた佐藤副部長も帰国を余儀なくされた。
ようやく落ち着きを取り戻してきた頃、国際ケーブル・シップは日本大使館の意向を見定め、いち早く現地へ戻って建造推進の意思を関係者に明示。佐藤副部長も再び渡航し、帰国した外国人技術者を呼び戻すため、昼夜を問わず連絡を繰り返した。造船所への通勤車両には造船所手配の武装した海軍兵士が同乗、技術者は武装兵士が警戒するホテルに宿泊するなど、安全性について身をもってアピールすることで呼び戻しに成功。当初の完工予定からわずか一カ月遅れでの引き渡しとなった。
現在、海底ケーブルの敷設工事はフィリピン、マレーシアなど東南アジアを中心に活況を呈しており、“KDDIケーブルインフィニティ”は約一年先まで運航スケジュールが埋まっている。 「2024年には日本国内の一般海域での建設開始が予定される、洋上風力発電事業への本格参入も目指しています。さらにはKDDIと協業で国内島嶼間における海底ケーブル敷設ビジネスにも参入予定であり、医療インフラ不足に悩む地方での遠隔医療にも役立つはずです。」
2018年に発生した北海道胆振東部地震には、被災地支援のためにケーブル敷設・ 修理船を派遣。水や食料など支援物資を供給するほか、国内初の試みとしてKDDIと協同で船舶に通信基地局を設け、au携帯電話の疎通復旧に貢献した。その後も災害発生時には、積極的な支援を展開している。人々の暮らしを豊かにするだけでなく、生命を守る活動にも意欲を燃やす同社から今後も目が離せない

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