【カーボンニュートラル+廃棄コスト削減】バイオマス資源の活用事例をご紹介
更新日時:2025.11

バイオマス資源の活用は、脱炭素社会の実現に向けて注目されている分野のひとつです。カーボンニュートラルの取り組みになると同時に、廃棄物を有効活用でき、コスト削減が期待できる点が大きな魅力といえます。
本記事では、バイオマス資源の種類や活用方法を整理したうえで、具体的な導入事例を通じて可能性と課題をわかりやすく解説します。
自社でバイオマス資源の有効活用を検討したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
バイオマス資源とは
バイオマス資源を理解するうえで重要なポイントは以下のとおりです。
- バイオマス利用の経緯と背景
- バイオマス資源とはどういったものか
- なぜカーボンニュートラルになるのか
- 現時点でのメリットと課題
バイオマス利用の経緯と背景
地球温暖化対策が国際的に進められる中で、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が大きなテーマとなっています。
そのような中、注目を集めている分野のひとつが「バイオマス資源」です。
バイオマスという言葉自体は、かつては廃棄物処理やリサイクルの文脈で語られることが多く、主に廃材や食品残さの有効利用が目的でした。
しかし現在、カーボンニュートラルを実現へ向けた主要な再生可能エネルギーのひとつと位置づけられています。
また、日本は化石燃料の輸入依存度が83.5%(2022年度資源エネルギー庁資料より)と非常に高いため、国内資源を有効活用できるバイオマスは、エネルギー安全保障の観点からも重要と言えます。
バイオマス資源とはどういったものか
バイオマス資源とは、動植物由来の有機物資源を指します。
具体的には、食品廃棄物、家畜ふん尿、農業残渣、間伐材や木質チップなどです。
これらは今まで「廃棄物」として処理されてましたが、適切に加工・処理することでガスや液体燃料、あるいは直接燃焼用の固形燃料として再利用できます。
従来であれば処理コストが発生していたものをエネルギー源へと変換できる点が、バイオマス資源を燃料として活用することの大きな特徴です。
なぜカーボンニュートラルになるのか
バイオマス資源の活用が「カーボンニュートラル」とされる理由は、その成り立ちにあります。
植物は成長の過程で大気中の二酸化炭素を吸収しています。
そのため、バイオマスを燃焼させて二酸化炭素を排出したとしても、それはもともと大気から吸収した量と差し引きゼロになるという考え方です。
つまり、化石燃料のように地中に長期間固定されていた炭素を新たに大気中へ放出しないので、全体として温室効果ガス排出量を増やさないと見なされるのです。
現時点でのメリットと課題
バイオマス資源を燃料として活用するメリットは、廃棄物を利用して再生可能エネルギーをつくり出し、循環型社会の実現に貢献できることです。
しかし一方で、収集・加工・輸送のコストが高いことや、発電効率が20~40%と他の再生可能エネルギーに比べて低めといった課題も存在します。(水力発電は80%,風力発電は40%と言われています。)
参照HP:自然エネルギーの発電効率比較|風力発電と太陽光発電の効率・特徴を徹底解説
また、持続的な利用を行うためには、燃料の安定供給体制をどう確立するかが重要なテーマです。
こうした課題解決の取り組みが進めば、バイオマス燃料はより現実的なカーボンニュートラル手段となるでしょう。
バイオマス資源の種類
代表的なバイオマス資源の種類は以下のとおりです。
- 食品廃棄物
- 農業残渣
- 排水
- 木質
- 海藻などの藻類
食品廃棄物
日常生活や事業活動の中で発生する食品廃棄物は、バイオマス燃料として再資源化できる代表的な素材のひとつです。コンビニやスーパーの売れ残り、外食産業での食べ残し、家庭から出る生ごみなど、従来は処理コストがかかる廃棄物として扱われてきました。
しかし、これらを発酵させてメタンガスを取り出し、発電や熱供給に利用すれば、廃棄物処理のコストを減らしつつエネルギー資源を確保できます。特に都市部では廃棄物発生量が多いため、効率的な収集・処理の仕組みを整えることで、循環型社会へとつながります。
農業残渣
農業現場では、稲わらやもみ殻、トウモロコシの茎や葉といった「農業残渣」が大量に発生します。従来は野焼きや廃棄処理に頼るケースが多く、環境負荷が課題となってきました。
これらの残渣を燃料化すれば、農村部で自給可能な再生エネルギー源となるだけではなく、農業経営における副収入源としても期待できます。特に、稲わらやもみ殻を利用したペレット燃料は、地域熱供給やボイラー燃料としてすでに実用化が進んでいます。
排水
食品工場や下水処理場から発生する排水も、バイオマス資源として注目されています。
排水中に含まれる有機物を微生物が分解することで、メタンを主体とするバイオガスが生成されます。
下水処理場の場合、排水処理を行う過程で増殖する余剰汚泥の減容化のため消化槽でメタン発酵されています。
このガスは発電や熱利用に活用でき、排水処理の効率化と再生可能エネルギーの創出を同時に実現可能です。
特に、酒造や乳業といった食品加工業では有機物濃度の高い排水が出ます。バイオガス回収との相性が良く、導入効果が大きいとされています。
木質
森林整備や木材加工に伴い発生する間伐材や端材は、古くから燃料として利用されてきました。近年ではチップ化やペレット化の技術が進み、発電所や地域暖房設備で効率的に活用されています。
木質バイオマスは再生可能でありながら貯蔵や輸送がしやすく、他のバイオマス資源に比べて利用の幅が広いことが特徴です。また、森林資源の有効活用は放置林の解消や森林保全にもつながり、地域経済と環境保護を両立させる手段として期待されています。
海藻などの藻類
将来の有力資源として期待されているのが「海藻などの藻類」です。藻類は成長速度が非常に速く、陸上の作物に比べて広大な農地を必要としないため、持続可能な燃料資源として注目されています。
特にオイルを含む微細藻類は、バイオディーゼル燃料の原料として研究が進められており、石油に代わるエネルギー供給源となる可能性を秘めています。
また、トウモロコシなどから生成されるバイオエタノールとは違い、食料資源との競合を避けられる点も大きな利点です。こうした特徴から、政府や研究機関が主導する実証プロジェクトも増えており、将来の脱炭素社会を支える新しい選択肢として開発が続けられています。
バイオマス資源の活用方法
バイオマス資源の活用方法は以下があげられます。
- バイオガス発電
- バイオエタノール
- バイオマスプラスチック
- マテリアル利用
バイオガス発電
食品廃棄物や家畜のふん尿、下水汚泥などに含まれる有機物を微生物が分解すると、メタンを主成分とする「バイオガス」が発生します。
このガスを燃料として、廃棄物処理とエネルギー生産を同時行うのが「バイオガス発電」です。
日本では食品工場や自治体の下水処理施設などで導入が進んでおり、得られた電力は再生可能エネルギーとして固定価格買取制度の対象になります。
なお、私たちヤンマーが提供する「バイオガスコージェネレーションシステム」は、バイオガスから、電力と熱を作り出します。
施設の省エネやCO2削減にも寄与し、持続可能な地域社会づくりをサポートします。
バイオエタノール
サトウキビやトウモロコシ等のバイオマス資源を、発酵・蒸留させたアルコール燃料を「バイオエタノール」と呼びます。
バイオガス同様カーボンニュートラル燃料の一種ですが、液体であることからガソリン等の脱炭素化を進める代替燃料として注目されています。
一方、食用との競合が起こり、原料の確保や費用の高騰などが今後の課題になると予想されています。
バイオマスプラスチック
次に注目されているのが、石油由来の樹脂を代替する「バイオマスプラスチック」です。サトウキビやトウモロコシといった植物資源を原料とし、樹脂に加工して成形することで、従来のプラスチックと同様の用途に利用できます。
例えば、飲料ボトルや食品包装、レジ袋など、私たちが日常的に手にする製品に活用されています。バイオマスプラスチックは燃焼しても元々植物が吸収した二酸化炭素を大気に戻すだけになるため、カーボンニュートラルと見なされます。
一方で、原料作物の安定供給や製造コストの高さといった課題があるため、今後より普及するためには、企業による技術開発や国による制度上の支援が必要となるでしょう。
マテリアル利用
バイオマスは燃料として燃やすだけではなく、素材として活用する「マテリアル利用」も進められています。例えば、木質バイオマスを建築資材や家具に再利用すれば、長期間にわたり炭素を固定可能です。
また、紙や繊維のリサイクルもマテリアル利用の一環であり、製品寿命を延ばすことで資源循環に貢献します。さらに近年では、藻類や微生物を利用した新素材の研究も進み、バイオマス由来の化学品や繊維が実用化段階に入っています。
バイオガス発電の導入事例
私たちヤンマーは、バイオガス発電を全国で累計1,000台以上導入頂いた実績がございます。
今回は下記3つの事例をご紹介します。
- 株式会社ライフコーポレーション 天保山プロセスセンター様
- 株式会社本部農場様
- 株式会社 藤枝農産加工所様
【食料廃棄物】株式会社ライフコーポレーション 天保山プロセスセンター様
ライフコーポレーション様は、大阪市港区にある天保山プロセスセンターにおいて、食品廃棄物を活用したバイオガスコージェネレーションシステムをご導入頂きました。
日々大量に発生する食品廃棄物は、これまで処理コストが大きな課題でした。
しかしヤンマーのバイオガスコージェネレーションシステムを導入することで、廃棄物から発生したバイオガスを燃料に、施設内のエネルギーを自給するだけでなく一部売電で収益も得ています。
【家畜ふん尿】株式会社本部農場様
株式会社本部農場様では、家畜のふん尿処理対策として、バイオガスコージェネレーションシステムをご導入頂きました。
農場内の電力自給はもちろん、発酵残さを肥料として農地に還元する循環型農業を実現しています。
農場の経営効率の向上や環境負荷低減に貢献しています。
【食品排水】株式会社 藤枝農産加工所様
静岡県にある藤枝農産加工所様は、食品排水を原料にバイオガスコージェネレーションシステムをご導入頂きました。
得られたエネルギーは加工施設の電力や給湯に活用され、従来のエネルギーコストを大幅に削減しております。
さらに、廃棄物を処理する際に発生する環境負荷を抑え、循環型農業の実現に寄与しております。
まとめ
バイオマス資源の有効活用は、カーボンニュートラルとコスト削減を同時に実現できる可能性がある一方、技術的・運用的な課題も残されています。
私たちヤンマーでは、バイオガスコージェネレーションシステムや脱炭素支援サービスを通じて、お客様の再生可能エネルギー活用をご支援しています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。